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歌ってみたを始めようと思ったとき、多くの人がまず思いつくのが「ゲーミングヘッドセットのマイク、これで録れないかな」という発想です。すでに手元にあって、PCに挿せば使える。わざわざ機材を買わなくても済むなら、それに越したことはありません。
結論から言うと、録れます。実際にヘッドセットで録った歌ってみたは投稿されていますし、1本目を出すという目的なら十分に機能します。ただし、投稿用の音として聴いたときに越えにくい壁がいくつかあるのも事実です。何が苦手で、どこまでなら設定で詰められるのか。それを知らないまま「なんとなく音が良くない」で止まってしまうのが、いちばんもったいないパターンです。
この記事では、ヘッドセットのマイクが苦手にしていること、それでも録るときに効く設定、次に機材を買うなら何を基準に選ぶのかを順番に整理します。今あるもので1本出してから考えても、まったく遅くない話です。
まず結論|録れる。ただし「投稿用の音」には壁がある
ゲーミングヘッドセットのマイクは、ゲーム中のボイスチャットや通話のために設計されています。「相手に言葉が正確に伝わること」が第一の目的で、「歌声の質感を記録すること」は想定されていません。この目的の違いが、そのまま音の違いになって出てきます。
具体的に言うと、声は問題なく録れるけれど、声の「厚み」と「空気感」が薄くなりやすいという傾向が出やすいです。低音の芯が細くなり、高い方のきらびやかさも出にくい。結果として、伴奏に乗せたときにボーカルだけ少し電話越しのように聴こえる、という感想になりがちです。
一方で、ヘッドセットならではの利点もあります。マイクが口元に固定されているので、体が動いても声の大きさが変わりにくい。スタンドマイクで録り始めた初心者がよくつまずく「歌っているうちにマイクから離れて音量がばらつく」という問題を、最初から回避できます。PC用マイクの形状ごとの特徴は歌ってみたにオススメなPCマイク一覧でも整理しています。
つまり「ヘッドセットはダメ」ではなく、得意なことと苦手なことがはっきりしている機材という理解が正確です。苦手な部分を知っておけば、そこを避けた録り方ができます。
ヘッドセットマイクが苦手にしている4つのこと
1. 拾える音の幅(帯域)が狭めに作られている
ヘッドセットのマイク部は、製品仕様に「100Hz〜10kHz」といった範囲が書かれていることが多く、歌の録音用マイクでよく見る「20Hz〜20kHz」という表記とは前提が違います。人の話し声を通すには十分でも、歌の低い方の響きや、息づかい・サ行の抜け感といった高い方の情報は記録されにくくなります。
この差は、単体で聴いているときよりも、伴奏と重ねたときにはっきり出ます。楽器と帯域がぶつかったときに、ボーカルが前に出てこない感じになりやすいのはこのためです。
2. 自己ノイズ(サーッという音)が目立ちやすい
小型のマイクユニットと簡易なアンプ部の組み合わせでは、無音のときに「サー」という一定のノイズが乗りやすくなります。会話中は気になりませんが、歌はささやくような小さい声から張った声まで幅が広いので、静かな箇所でこのノイズが前に出てきます。
MIXで音量を持ち上げる工程を通すと、このノイズも一緒に持ち上がります。あとから無理に消そうとすると歌の余韻や語尾まで削れてしまうことがあるので、録りの段階で小さくしておきたいところです。
3. 口元に近すぎることで起きる問題
距離が一定という利点の裏返しで、マイクが口のすぐ前にあるために、息が直接当たって「ボフッ」という吹かれ(ポップノイズ)が入りやすくなります。呼吸音やリップノイズも大きく録れます。
さらに、アームが頬や髪に触れる、ケーブルが服にこすれるといった接触音も拾います。ゲーム中なら気にならないレベルでも、歌では残ります。
4. 無線接続だと、さらに条件が厳しくなる
Bluetooth接続のヘッドセットでマイクを使うと、通話用のモードに切り替わって音質がさらに落ちる仕様のものが少なくありません。同時に、再生側の音も同じモードに引っ張られるため、伴奏がこもって聴こえることがあります。
無線ヘッドセットを持っている場合は、録音のときだけ付属のUSBケーブルや3.5mmケーブルで有線につなぐほうが条件は良くなります。ここは設定より先に確認したいポイントです。
それでも録るときに効く5つの設定
手持ちのヘッドセットから引き出せるところまで引き出す方法を挙げます。どれもお金はかかりません。
設定1|ノイズ抑制・音声強調の機能をすべて切る
ゲーミングヘッドセットの付属ソフトや通話アプリには、ノイズキャンセル、AIノイズ除去、音声明瞭化といった機能が初期状態で有効になっていることがあります。これらは会話のために不要な音を削る処理なので、歌の伸びや語尾のニュアンスまで一緒に削られることがあります。
録音の前に、メーカー製ユーティリティ側とOS側の両方を確認して、加工系の処理はオフにしておきます。Windowsならサウンド設定のマイクのプロパティにある「拡張機能」の項目です。
設定2|自動音量調整(AGC)とマイクブーストを切る
音量を自動で揃える機能が働いていると、静かな箇所でノイズごと持ち上げられ、張ったところで押さえつけられます。歌の抑揚がそのまま潰れるので、手動でレベルを決めたほうが扱いやすい音になります。
マイクブーストも、上げればノイズが同じだけ上がります。まずは0のままにして、声が小さければ距離で調整します。録音レベルの合わせ方は歌ってみたの録音レベル(ゲイン)設定にまとめてあります。
設定3|マイクを口の正面から少しずらす
アームを口の真正面ではなく、口角の横、頬のあたりに2〜3cm離して構えると、息が直接当たらなくなって吹かれが減ります。多くのヘッドセットはアームの角度を変えられるので、録りながら位置を探してみてください。
同時に、髪やフードがアームに触れていないかも確認します。接触音は後処理で消しにくい種類のノイズです。
設定4|録音形式を48kHz以上にする
OSのマイク設定で、サンプリングレートが通話用の低い値(16kHzや32kHz)のままになっていることがあります。ここは48kHz以上に変更しておきます。マイク自体の性能が上がるわけではありませんが、変換による劣化の一段は避けられます。ビット深度も24bitを選べるなら選んでおきます。
設定5|録る場所を変える
ヘッドセットは口元至近で録るため部屋の響きは入りにくい部類ですが、それでもフローリングの何もない部屋より、カーテンや布団のある場所のほうが落ち着いた音になります。
モニター側(聴く方)としてヘッドセットは使えるのか
録音時に伴奏を聴くための「モニター用」として使う分には、ヘッドセットは当面そのまま使って問題ない場面が多いです。歌を録っている最中に必要なのは、タイミングと音程が取れることで、そのためなら密閉型のヘッドセットは十分役割を果たします。音漏れしにくい形状であることも録音では有利です。
ただし、MIXや最終的な音量バランスの判断をヘッドセットだけで行うのは難しくなります。ゲーミング向けの製品は足音や定位が分かりやすいよう特定の帯域を強調した味付けのものが多く、その音を基準に調整すると他の環境で聴いたときにバランスがずれます。
そのため優先順位としては、マイクを先に、モニター用ヘッドホンは後でという順番が現実的です。MIXまで自分でやるようになったタイミングで、フラットな傾向のものを1台用意すると判断がしやすくなります。候補はモニターヘッドホンの選び方とおすすめ5選にまとめています。
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ヘッドセット録音でよく出る「この音」チェックリスト
録ったデータを聴き返すとき、以下のどれが出ているかで原因の当たりをつけられます。MIXを人に依頼する場合も、事前に自分で拾っておくとやり取りが早くなります。
| 聴こえ方 | 考えられる原因 | まず試すこと |
|---|---|---|
| 常にサーッという音が乗る | マイクの自己ノイズ、入力の上げすぎ | マイクブーストを0に、声をもう少し近くで |
| 語尾がブツッと切れる | ノイズ抑制やノイズゲートが動作 | 加工系の処理をすべてオフ |
| パ行・バ行でボフッと入る | 息がマイクに直撃している | マイクを口角の横へずらす |
| 声がこもる、電話のよう | 帯域の狭さ、無線接続の通話モード | 有線接続に変更、録音形式を48kHzへ |
| ガサガサという擦れ音 | 髪・服・ケーブルの接触 | 接触箇所を外す、ケーブルを固定 |
| 片側からしか聴こえない | モノラル入力のまま片チャンネルに配置 | DAWでモノラル扱いにして中央へ |
このうち上4つは録り直しで改善する余地があります。逆に、すべて対処したうえでまだ物足りないと感じるなら、そこが機材そのものの限界に近い地点です。
次に買うなら|USBマイクかインターフェース+マイクか
「そろそろマイクを」と思ったとき、選択肢は大きく2つに分かれます。どちらが向いているかは、予算よりもこれから何をしたいかで決まります。
USBマイクが向いている人
PCにケーブル1本で挿すだけで使え、設定の手順が少ないのが利点です。次のような条件に当てはまるなら、まずこちらが素直な選択になります。
- 録音のほかに配信や通話でも使いたい
- 機材を増やしたくない、置き場所が限られている
- 予算を1万円前後に収めたい
- 接続まわりでつまずきたくない
製品ごとの違いはUSBマイクおすすめ6選で比較しています。入門帯なら5千円前後から選べます。
オーディオインターフェース+XLRマイクが向いている人
マイクとインターフェースを別々に用意する構成です。手順は増えますが、後から片方だけ買い替えられること、インターフェース側のヘッドホン端子で遅延の少ないモニタリングがしやすいことが利点です。
- この先も歌ってみたを続ける見通しがある
- マイクを後々グレードアップしたい
- 録音中の自分の声を遅れなく聴きながら歌いたい
- 予算を3万円前後まで見られる
選び方はオーディオインターフェースの選び方を参照してください。
マイクの種類は「部屋の静かさ」で決める
XLR構成に進む場合、コンデンサーマイクとダイナミックマイクのどちらにするかで迷います。判断の軸は好みよりも環境です。感度が高いコンデンサーは細部まで録れる反面、エアコンや外の音も一緒に入ります。コンデンサーマイクの選び方に部屋の向き不向きのチェックがあるので、買う前に確認しておくと失敗が減ります。生活音が入る部屋なら、近接で録るダイナミックのほうが扱いやすいこともあります。
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予算別の乗り換えパターンと、買う前にやる録り比べ
ヘッドセットからの移行を、段階ごとに整理すると次のようになります。一気に揃える必要はなく、上から順に足していけば形になります。
| 予算 | 構成 | 変わるところ |
|---|---|---|
| 〜1万円 | 入門USBマイク + ポップガード | 声の厚みと高域の情報量。モニターは今のヘッドセットを継続 |
| 1〜2万円 | USBマイク中位 + モニターヘッドホン | 録りの質に加えて、音の判断基準が整う |
| 3〜5万円 | インターフェース + XLRマイク + アーム + ヘッドホン | 拡張性と、録音中のモニタリング環境 |
そして、買う前でも買った後でも、やっておきたいのが同じ条件での録り比べです。手順はシンプルです。
- 歌い慣れた曲の1コーラスを決める
- ヘッドセットで録る。設定と立ち位置をメモしておく
- 新しいマイクで、同じ曲・同じ場所・同じ時間帯に録る
- 両方の音量を揃えてから聴き比べる
音量を揃えずに比べると単に大きいほうが良く聴こえてしまうので、ここは省かないでください。聴き比べると、自分がどの部分に不満を持っていたのかがはっきりします。
最後に改めて書いておくと、機材を替えても歌そのものは変わりません。ヘッドセットで1本出して、次はどこを直そうと考える。その回転を先に始めたほうが早く進みます。買い替えは、続けると決まってからで間に合います。



















