オーディオインターフェースや配信ミキサーを調べていると、「歌枠をやるならループバック機能付きを」という説明をよく見かけます。ところが実際に使ってみると、「オケが二重に聞こえると言われた」「自分の声が山びこのように返ってくる」「ピーという音が止まらなくなった」といったトラブルの入り口になることも少なくありません。
ループバックは便利な機能ですが、歌枠のすべての構成で必要になるわけではありません。むしろ、いらない構成でオンにしていることが、音が二重になる原因になっている場合もあります。
この記事では、ループバックの仕組みは短めにおさえたうえで、歌枠で必要になる場面といらない場面の見分け方、音の経路の書き出し方、そして「二重に聞こえる」「ハウリングする」ときの切り分け手順を中心に解説します。OBS Studioの項目名は、2026年10月時点の日本語版の表記に合わせています。
結論:ループバックが必要な場面・いらない場面
判断の分かれ目は、配信ソフトやアプリが音の入り口をいくつ選べるかです。入り口を複数選べるなら、伴奏と声を別々に取り込めるのでループバックはなくても配信できます。入り口が1つしかないなら、伴奏と声を機材側でまとめて送るループバックが役に立ちます。
| こんな配信 | ループバック | 理由 |
|---|---|---|
| PCのOBSで配信し、伴奏もPCで再生する | なくても配信できる | OBSは「マイク音声」と「デスクトップ音声」を別々に取り込める |
| スマホアプリで配信し、伴奏はPCで再生する | あると便利 | スマホ側は音の入り口が1つのことが多い |
| DAWで声にエフェクトをかけてから配信したい | あると便利 | DAWで加工した音を配信ソフトに戻す経路になる |
| 手元の機材のつまみで声と伴奏のバランスを取りたい | あると便利 | 機材で混ぜた音をそのまま配信に送れる |
| 歌ってみたの録音だけで、配信はしない | 使わない | 録音では声だけを録るのが基本 |
| 通話アプリで誰かとつないでいる最中 | 切るか、経路を分ける | 相手の声が相手に返ってしまうことがある |
機材を選ぶ段階であれば、「将来スマホ配信やDAW経由の配信をするかもしれない」なら付いている機種を選んでおくと安心、という考え方で十分です。機材選びそのものはオーディオインターフェースの選び方で、配信ミキサーの場合は歌枠・配信用オーディオミキサーの選び方で扱っています。この記事では「持っている機材のループバックを、いつオンにして、トラブルのときにどう見るか」に絞って進めます。
ループバックの仕組みは「PCの音を入力側に戻す」だけ
ループバックは、PCで再生している音(伴奏など)を、オーディオインターフェースの中で入力側に折り返す機能です。配信ソフトから見ると、PCの音が「マイクと同じ機材から入ってくる音」として届きます。
ここで押さえておきたいのは、機種によって折り返し方が2種類あることです。
- 声と伴奏を1本にまとめて送るタイプ:本体のスイッチなどでオンにすると、マイクの声とPCの音が混ざった状態で配信ソフトに届く
- PCの音だけを別のチャンネルで送るタイプ:マイクは入力1・2、PCの音はループバック用の別チャンネルとして届く。たとえばFocusriteの公式サポートでは、Scarlett Solo・2i2(第4世代)のループバックはチャンネル3-4に現れると案内されています
どちらのタイプかで、配信ソフト側の設定もトラブルの原因も変わります。自分の機材がどちらなのかは、取扱説明書やメーカーのサポートページで確認しておいてください。なおFocusriteのサポートでは、macOSで使う通話アプリの中には特定の入力チャンネルを選べず入力1だけを使うものがある、とも説明されています。別チャンネルタイプは、アプリによってはループバックのチャンネルを選べないことがある点も覚えておくと迷いにくくなります。
まず「音の経路」を書き出す
ループバックまわりのトラブルは、ほとんどが「同じ音が2つの経路を通っている」ことで起きます。設定をいじる前に、次の3つについて、音がどこを通っているかを紙やメモに書き出してみてください。
- 声:マイク → インターフェース → OBSのどのソース(マイク音声/音声入力キャプチャ)
- 伴奏:再生ソフト → インターフェース(ループバック) → OBSのどのソース、または OBSの「デスクトップ音声」やアプリケーション音声キャプチャ
- 自分のヘッドホン:インターフェースの直接モニター、OBSの「音声モニタリング」、DAWのモニター、のどれで聞いているか
書き出してみて、同じ音が2本の矢印を持っていたら、そこが二重の原因です。たとえばループバックで伴奏がマイク音声に混ざっているのに、OBSのデスクトップ音声でも同じ伴奏を取り込んでいれば、リスナーには伴奏が2回届きます。どちらか一方の経路を止めれば解決します。
「二重に聞こえる」は、誰の耳で起きているかで切り分ける
「二重に聞こえる」という同じ言葉でも、聞いている人によって原因の場所が変わります。最初に、どこで二重になっているのかをはっきりさせましょう。
| 二重に聞こえる人 | よくある原因 | 見直す場所 |
|---|---|---|
| 自分のヘッドホンだけ | 直接モニターとソフトのモニターが両方オン | OBSの音声モニタリング、DAWの入力モニター |
| リスナー | ループバックとOBSのソースで同じ音を2回送っている | OBSのソース一覧、ループバックのオン/オフ |
| 通話・コラボの相手 | 相手の声がループバックで相手に返っている | ループバックのオン/オフ、通話アプリの出力先 |
自分のヘッドホンで声が二重・遅れて聞こえる
インターフェースの直接モニター(遅れのない返し)と、OBSやDAWを通った返しが同時に鳴っていると、数ミリ秒から数十ミリ秒ずれた2つの声が重なり、エコーのように聞こえます。Elgatoの公式サポートでも、機材側のセルフモニタリングとソフトウェア側のモニタリングが同時に動いていることが、マイクの音が二重に聞こえる原因として説明されています。
対処は、返しをどちらか一方にまとめることです。歌枠では遅れのない直接モニターのほうが歌いやすいので、OBSの「オーディオの詳細プロパティ」でマイクの「音声モニタリング」を「モニターオフ」にするのが基本になります。ループバック入力のソースについても同様です。
リスナーに伴奏や声が二重に届く
リスナー側で二重になるのは、配信に同じ音が2回乗っているときです。次の組み合わせが当てはまっていないか確認します。
- ループバック(1本にまとめるタイプ)がオンで、さらにOBSのデスクトップ音声でも伴奏を取り込んでいる → 伴奏が二重
- OBSの設定にある「マイク音声」と、シーンに追加した「音声入力キャプチャ」の両方で同じインターフェースを選んでいる → 声が二重
- ループバック用チャンネルに声も含めるミックスにしていて、別にマイクの入力も取り込んでいる → 声が二重
OBSのミキサーでソースを1つずつミュートしてみると、どのソースが重複しているかがわかります。整理のしかたは「伴奏の入り口を1つに決める」ことです。ループバックで送るならデスクトップ音声はミュート、デスクトップ音声で送るならループバックはオフ、とセットで覚えておくと迷いません。
通話・コラボの相手に自分の声が返る
通話アプリで相手とつないだまま歌枠をすると、PCで再生される相手の声もループバックで入力側に戻り、マイクと一緒に相手へ送られてしまうことがあります。相手からは「自分の声が遅れて返ってくる」と聞こえます。通話を使う間はループバックをオフにするか、通話アプリの音の出力先をループバックに含まれない機器(別のヘッドホン端子など)に変える方法が考えられます。設定できる項目は機種と通話アプリによって異なるので、それぞれのヘルプで確認してください。
「ピー」「ボワーン」が止まらないとき(ハウリング・発振)
音がどんどん大きくなりながら鳴り続ける場合は、出力した音が入力に戻り、また出力される輪(ループ)ができています。まずヘッドホンを耳から外し、OBSのミキサーで該当するソースをミュートしてから原因を探してください。大きな音のまま原因を探すと、耳にも機材にも負担がかかります。
ループバックで輪ができやすいのは、次のようなケースです。
- ループバックの入力を受けているOBSのソースで「モニタリング有効」になっていて、モニターの出力先が同じインターフェースになっている
- DAWでループバックのチャンネルを録音トラックに設定し、そのトラックの音をインターフェースへ出力している
- ヘッドホンではなくスピーカーで伴奏を流し、マイクがそれを拾っている
Focusriteの公式サポートでも、ループバックを使うときはフィードバックループを起こさないよう、録音ソフト内のループバックチャンネルをミュートする(出力しない)ように案内されています。ループバックで受けた音は、配信や録音に送るだけで、自分の機材には返さないと覚えておくと、輪ができにくくなります。
切り分けの手順:1つずつ止めて、1つずつ戻す
原因がわからないときは、思いつく設定をまとめて変えるのではなく、次の順で1つずつ確かめます。
- OBSのミキサーで、マイク・デスクトップ音声・そのほかの音声ソースのメーターがそれぞれ動いているかを見る
- ループバックをオフにして、声だけが配信に乗る状態を作る(OBSの録画で確認)
- 伴奏を、ループバックかデスクトップ音声のどちらか一方だけで取り込むように決め、もう一方はミュートする
- 自分のヘッドホンの返しを、直接モニターかOBSのモニタリングのどちらか一方にする
- OBSの録画を聞き返し、声と伴奏が1回ずつ聞こえるかを確かめる
- 通話アプリを使う場合は、最後に通話をつないで相手に確認してもらう
また、ループバックで伴奏と声を1本にまとめている場合、OBSでノイズ抑制やノイズゲートをかけると伴奏まで処理されてしまいます。オケがゆれる・間奏で途切れるといった症状が出たときは、歌枠・配信のノイズ対策もあわせて確認してください。
ループバックで伴奏を流したときに、歌が伴奏より遅れて聞こえる場合の直し方は、歌枠の音ズレの直し方で詳しくまとめています。
まとめ:ループバックは「入り口が足りないとき」に使う
- PCのOBSで配信するなら、伴奏はデスクトップ音声で取り込めるので、ループバックはなくても配信できる
- スマホ配信やDAW経由の配信など、音の入り口が1つしか使えないときにループバックが役に立つ
- 二重に聞こえたら、まず「誰の耳で」二重なのかを確かめ、音の経路を書き出す
- 伴奏の入り口と、自分への返しは、それぞれ1つに決める
- ループバックで受けた音は自分の機材に返さない。ハウリングしたらまずミュート
入力レベルやBGMとのバランスなど、歌枠の音声設定の全体は歌枠の機材と音声設定にまとめています。ループバックの設定が落ち着いたら、そちらで配信全体の音を整えてみてください。



















