MIXのリファレンス曲の使い方|選び方と聴き比べで見るポイント

MIXのリファレンス曲の使い方|選び方と聴き比べで見るポイント

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歌ってみたのMIXをしていると、だんだん「これで合っているのか」がわからなくなってきます。何時間も同じ曲を聴いていると耳が慣れてしまい、声が大きすぎるのか小さすぎるのか、こもっているのか明るすぎるのか、判断の基準がぼやけてくるからです。そんなときに役立つのが、聴き比べの基準にする「リファレンス曲(参考音源)」です。

この記事では、リファレンス曲の選び方、DAWに読み込むときの準備、聴き比べで見るポイント、よくある失敗までを順番に解説します。MIXの手順そのものではなく、「自分のMIXを何と比べて、どこを直すか決めるか」に絞った内容です。

結論:リファレンス曲は「正解」ではなく「物差し」

先に全体の流れを表にまとめます。

工程やることポイント
選ぶジャンル・編成・声のタイプが近い曲を2〜3曲好きな曲より「目指す音に近い曲」を優先
準備専用トラックに読み込み、マスターのエフェクトを通さない音質のよいファイルを使う
音量を揃えるリファレンス側を下げて、自分のMIXと同じくらいの大きさに大きいほうが良く聞こえる錯覚を避ける
聴き比べるサビなど同じ役割の場所を短く切り替えて比べる見るポイントを1つずつに絞る
判断する違いが「直すべき差」か「好みの差」かを分けるそっくりに寄せる必要はない

リファレンス曲は、まねをするための見本ではありません。自分の耳がずれていないかを確かめる物差しとして使うと、迷う時間が減りやすくなります。

リファレンス曲の選び方

リファレンス曲は何でもよいわけではありません。比べる相手がずれていると、直さなくてよいところまで直してしまいます。次の順で絞り込むと選びやすくなります。

1. ジャンルと編成が近い曲を選ぶ

まず、自分が歌っている曲と同じジャンルで、楽器の構成が近い曲を探します。バンドサウンドの曲にピアノの弾き語りをリファレンスにすると、低音の量も響きの量もまったく違うため、比べる意味が薄くなります。ボカロ曲のように打ち込みの音が多い曲なら、同じように電子音が中心の曲を選ぶと比べやすくなります。

2. 声のタイプと歌い方が近い曲を選ぶ

歌ってみたのMIXで特に気になるのは、ボーカルの音量感と質感です。ここを比べたいなら、声の高さや歌い方が自分に近い曲を選びます。息の多いささやき系の声と、張りのある力強い声とでは、EQやコンプのかけ方が変わってくるためです。男性の低めの声なのに、高い女性ボーカルの曲を基準にすると、高域を足しすぎる原因になりがちです。

3. 本家の音源は「基準の1つ」として扱う

歌ってみたなら、まず思い浮かぶのは原曲(本家)の音源です。オケが同じなので比べやすい一方、歌っている人も録音環境も違います。本家を1曲目にしつつ、同じジャンルの別の曲をもう1〜2曲足しておくと、「本家だけがたまたまそういう音」という偏りに気づきやすくなります。

なお、オケのキーを変えている場合は、本家の音源とは音の高さが違うので、音色の比較には向いても、声の聞こえ方の比較ではずれが出ることがあります。キー変更のやり方と注意点は歌ってみたのオケのキー変更にまとめています。

4. 音質のよいファイルを使う

リファレンス曲は、配信ストアなどで購入した音源を使い、できればWAVなど圧縮の少ない形式を選びます。強く圧縮された音源は低音が痩せたり高音がざらついたりしやすく、それに合わせると自分のMIXまで同じ方向にずれてしまいます。動画サイトの音声を、規約で認められていない方法で保存して使うのは避けましょう。

5. 本数は2〜3曲に絞る

リファレンスは多ければよいわけではありません。5曲も6曲も並べると、曲ごとの違いに振り回されて判断がつかなくなります。本家1曲と、同じジャンルの曲1〜2曲くらいが扱いやすい本数です。

DAWに読み込む前の準備

選んだ曲をそのまま読み込んで再生するだけでは、正しく比べられないことがあります。次の3つを準備してから聴き比べに入ります。

専用トラックを作り、マスターのエフェクトを通さない

リファレンス曲は、ボーカルやオケとは別の専用トラックに置きます。注意したいのは、マスタートラックにコンプやリミッターを挿している場合です。リファレンス曲までそれを通ると、すでに仕上がっている音源にさらに処理がかかり、本来の音とは違って聞こえます。DAWによっては、マスターを通さずに出力できる設定や、比較用の機能が用意されています。難しければ、比べるときだけマスターのエフェクトをオフにする方法でもかまいません。

音量(ラウドネス)を揃える

聴き比べで特に気をつけたいのがここです。人の耳は、少しでも大きい音のほうを「迫力がある」「はっきりしている」と感じやすいとされています。市販の音源はマスタリングで音量が上げられているため、そのままだとMIX途中の自分の音源より大きく聞こえ、どこを比べても負けているように感じてしまいます。

そこで、リファレンス側のフェーダーを下げて、自分のMIXと同じくらいの大きさに揃えます。耳で揃えてもよいですし、ラウドネスメーター(LUFSで表示するメーター)で両方を測って合わせるとより正確です。LUFSの考え方は歌ってみたの音量が小さい理由|YouTubeのラウドネスと合わせ方で解説しています。

書き出しに含めない

リファレンス曲のトラックは、聴き比べのためだけに置いているものです。書き出すときにミュートし忘れると、他人の音源が混ざったファイルができてしまいます。書き出しの前に、リファレンスのトラックがミュートされているかを毎回確認しましょう。トラック名を「REF」などわかりやすくしておくと、見落としにくくなります。

聴き比べで見るポイント

準備ができたら、実際に聴き比べます。一度に全部を判断しようとせず、ポイントを1つずつ決めて聴くのがコツです。

見るポイント聴き方違ったときの見直し先
ボーカルとオケの音量バランス歌詞がどのくらい前に聞こえるかボーカルの音量・コンプ
声の明るさ息の成分やサ行が、どのくらい目立つかEQの高域・ディエッサー
こもり・もたつき声の太さが、オケの低音と重なっていないかEQの中低域
響きの量語尾の余韻が、どのくらい残るかリバーブ・ディレイの量
広がりコーラスやハモリが、左右にどのくらい広がっているかパン・ステレオの扱い
低音の量ベースやキックの量感が、極端に多い・少ないことはないかオケの音量・EQ

サビから比べる

比べる場所は、まずサビから始めるのがおすすめです。サビは楽器も多く、声も高く強く出ることが多いため、音量バランスや帯域の違いが表れやすい場所です。サビで大きな差がなくなったら、Aメロ、落ちサビのように、音数が少ない場所も確認します。

切り替えは短く、何度も

リファレンス曲を長く聴き続けると、その音に耳が慣れて、切り替えたときの違いがわかりにくくなります。同じ8小節程度を、自分のMIXとリファレンスで交互に、短く切り替えて聴くと差をつかみやすくなります。作業の途中でも、数分〜十数分おきに一度リファレンスに戻って耳をリセットする習慣をつけると、方向を見失いにくくなります。

再生環境を変えて聴く

ヘッドホンだけで比べていると、その機材の癖まで含めて判断してしまいます。スピーカー、イヤホン、スマホのスピーカーなど、いくつかの環境でリファレンスと自分のMIXを聴き比べ、どの環境でも同じ方向の差があるなら、それは直したほうがよい差だと考えられます。モニター環境の整え方はモニタースピーカーの選び方も参考にしてください。

よくある失敗と注意点

リファレンス曲は便利な反面、使い方を誤ると逆に迷いが増えることがあります。よくある失敗をまとめます。

  • 音量を揃えずに比べる:前の章のとおり、大きいほうが良く聞こえやすいため、音量差を音質差と取り違えます。比べる前に揃えるのが前提です。
  • そっくりに寄せようとする:録音環境もマイクも声も違うので、まったく同じ音にはなりません。差が「直すべき差」か「声や環境の個性による差」かを分けて考えます。
  • マスタリング済みの音と、MIX途中の音を同じ基準で見る:市販の音源は最後の仕上げまで終わった状態です。MIXの段階では、音圧や迫力が少し控えめでも問題ないことが多いです。
  • リファレンスを途中で何度も替える:曲を替えるたびに基準が動くので、作業が行ったり来たりします。最初に決めた2〜3曲で最後まで通すと判断がぶれにくくなります。
  • 疲れた耳で判断する:長時間の作業のあとは高音が聞こえにくく感じたり、違いがわからなくなったりします。休憩をはさんでから比べ直すと、印象が変わることがあります。

演出として声を加工するパート(たとえばラジオボイスのように、あえて帯域を狭くした声)は、リファレンスと違って当然です。その部分は比較の対象から外し、加工していないパートで比べるようにします。

よくある質問

Q. MIXを始める前からリファレンスを用意したほうがいいですか

はい、作業を始める前に決めておくのがおすすめです。MIXの手順の中でも、最初に歌とオケと一緒にリファレンスを読み込んでおく流れが紹介されています。全体の手順は歌ってみたMIXのやり方で確認できます。途中で迷ってから探すと、そのときの耳の状態に引っ張られた選び方になりやすいためです。

Q. スマホのアプリでMIXしている場合も使えますか

使えます。アプリ上にリファレンスを読み込めない場合は、別の再生アプリで同じくらいの音量にして交互に聴き比べるだけでも、ずれに気づくきっかけになります。

Q. MIX師さんに依頼するときも役立ちますか

役立ちます。「この曲のような声の近さで」「響きはこのくらい」と、言葉だけでは伝えにくいイメージを共有する材料になります。依頼先によって受け付け方が違うので、参考音源の渡し方は事前に確認しておきましょう。

聴き比べで自分の歌が引っ込んで聞こえたらボーカルが埋もれるときの直し方、手前に浮いて聞こえたらボーカルが浮く原因となじませ方も参考にしてください。

まとめ

  • リファレンス曲は「正解」ではなく、耳のずれを確かめる物差しとして使う
  • ジャンル・編成・声のタイプが近い曲を2〜3曲、音質のよいファイルで用意する
  • 専用トラックに置き、マスターのエフェクトを通さず、音量を揃えてから比べる
  • サビから、ポイントを1つずつ、短く切り替えて聴き比べる
  • 書き出しの前にリファレンスのトラックがミュートされているか確認する

比べる相手が決まると、「なんとなく違う」が「声が少し大きい」「響きが多い」のように言葉にできる差に変わります。まずは本家と、同じジャンルの曲をもう1曲用意するところから始めてみてください。



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