自分の声量の測り方|dBとDAWのメーターで数値化して比べる

自分の声量の測り方|dBとDAWのメーターで数値化して比べる

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練習を続けていると「前より声が出るようになった気がする」と感じる日があります。ところが翌日には「気のせいだったかも」と思い直す。声量の変化は自分の耳では確かめにくく、その日の体調や部屋の響きで印象が簡単に変わってしまいます。

そこで役に立つのが、数字にして記録しておくという方法です。この記事では自分の声量を数値で測る手順だけを扱います。スマホの騒音計アプリで測る方法、録音ソフト(DAW)のメーターで測る方法、そして測るたびに揃えておくべき条件の3つが中心です。声量そのものを伸ばす練習法には踏み込みません。

先に結論を書いておきます。測った数字は、他人や世間の基準と比べるためのものではありません。条件を固定した自分の前回の数字と比べるために使います。ここを取り違えると、測っても意味のないデータが貯まるだけになります。

結論:声量の数字は「絶対値」ではなく「自分の前回比」で見る

同じ人が同じ声を出しても、測定して出てくる数字は簡単に変わります。口からスマホまでの距離が50cmか1mかで変わりますし、カーテンのある部屋とお風呂場でも変わります。スマホの内蔵マイクは測定用に調整されたものではないので、機種が違えば同じ場所で測っても値が一致しません。

つまり「◯◯という数字が出れば十分な声量」という言い方は、測定条件を揃えていない限り成り立ちません。ネット上で見かける数値の目安も、どんなマイクでどの距離から測ったのかが書かれていなければ、自分の測定値と並べる意味がありません。

その代わり、距離・部屋・機材・測る素材を毎回同じにしておけば、先月の自分と今月の自分は比べられます。練習の効果を確かめたいだけなら、これで十分です。数字の役割は「合格か不合格か」を決めることではなく、「上がったのか、下がったのか、変わっていないのか」を教えてくれることにあります。

測り方は2通り|空気中の大きさと、録音の中の大きさ

ひとくちに声量を測ると言っても、測っている対象が2種類あります。混ぜて考えると数字の意味が分からなくなるので、最初に整理しておきます。

方法測っているものわかること向いている人
スマホの騒音計アプリ空気を伝わってきた音の大きさ(dB SPL)その部屋でどれくらい鳴っているか生声で歌う人、カラオケやライブが主戦場の人
DAW・録音ソフトのメーターマイクを通って録音された信号の大きさ(dBFS)マイクにどれだけ乗ったか歌ってみたを録る人、宅録中心の人

単位が違うので、この2つの数字を直接比べることはできません。騒音計アプリが60と表示し、DAWのメーターがマイナス18と表示していても、その間に関係を見出す必要はありません。どちらか片方を選んで、それをずっと使い続けるほうが手間がかかりません。両方使う場合も、記録欄を分けておきます。

方法1:スマホの騒音計アプリで測る

機材を買い足さずに始められるのがこちらです。iPhoneでもAndroidでも、マイクで拾った音の大きさをdB表示するアプリが無料で手に入ります。

使えるアプリの例と、知っておきたいクセ

2026年9月時点では、App Storeの「騒音計dB」、iOS・Android両方で配信されている「デシベルX(Decibel X)」、同系統の「デシベルメーター」などが入手できます。いずれも最小値・平均値・最大値を同時に表示でき、測定結果をCSVで書き出せるものもあります。アプリの名称や配信状況は入れ替わりがあるので、実際に入れる前にストアで「騒音計」「デシベル」と検索して現行のものを確かめてください。

使う前に知っておきたいクセがひとつあります。スマホの内蔵マイクは大きな音が入ると頭打ちになることがあります。思い切り張り上げているのに数字が伸びない、という場合はこれが起きている可能性があります。そのときは距離を離して測り直し、その距離を今後の基準にしてください。

測る手順

  1. 静かな部屋で、何も声を出さずに10秒間測ります。これが部屋の暗騒音です。ここが高い部屋(エアコンの真下、道路に面した窓際など)では小さい声の測定があてになりません。
  2. スマホを机に置き、口からの距離を決めます。50cmが扱いやすい距離です。メジャーで実測して、机にテープで印をつけておきます。
  3. 「アー」を5秒、同じ高さ・同じ強さで3回。最大値ではなく平均値を3回分控えます。
  4. 次に、歌の中から決めた1フレーズを歌い、そのときの最大値を控えます。素材はずっと同じフレーズを使います。

数字の読み方

記録するのは3回の平均です。1回だけの最大値は、椅子がきしんだ音ひとつで壊れます。前回との差が2〜3程度なら測定のばらつきの範囲だと考えて、動いていないものとして扱ってください。5以上動いたときは、声が変わったのではなく条件のほうが変わっていないかをまず疑います。距離、部屋、スマホの置き方の順に確認すると原因が見つかりやすいです。

方法2:DAWのメーターで録って比べる

すでに録音環境がある人は、こちらのほうが精度が出ます。無料で使える録音ソフトでも、レベルメーターや音量解析の機能はたいてい付いています。

ピーク・RMS・ラウドネスの違い

指標表しているもの声量の比較に使えるか
ピーク(dBFS)一瞬の最大値音が割れていないかの管理用。破裂音ひとつで跳ねるので比較には向かない
RMS・平均レベル一定時間の平均的な大きさ聴いたときの「太さ」に近い。前回比の比較に向く
ラウドネス(LUFS)人の聴こえ方に寄せた平均フレーズ単位・曲単位でならすときに向く

声量の推移を追うなら、見るのはRMSかラウドネスです。ピークだけを見て「今日は大きかった」と判断すると、ほとんど子音の勢いを測っていることになります。

手順

  1. オーディオインターフェースのゲインつまみに印をつけ、以後は動かしません。ここが要になります。つまみを少し回すだけで数字は動くので、ここが固定できていないと過去のデータがすべて無意味になります。
  2. マイクと口の距離を決めて固定します。こぶし1つ分など、毎回再現できる決め方にします。
  3. 「アー」5秒と、決めた1フレーズを録音します。
  4. 録った区間を選択して、平均レベルまたはラウドネスを表示させ、数字を控えます。

途中でゲインを触ってしまったら、そこで記録を仕切り直します。同じノートに書き続けず、「ゲイン変更」と書いた行を入れて区切っておくと後で混乱しません。なお、録音時にマイク距離で強弱を作る考え方は歌ってみた録音での声量コントロールに、書き出した音源の音量を投稿先の基準に合わせる話は歌ってみたのラウドネス調整にまとめてあります。

測るたびに必ず揃えておく条件

ここが揃っていないと、あとは何をしても数字が暴れます。測定そのものより先に、この表を固めてください。

揃える条件揃えないとどうなるか揃え方
口とマイクの距離距離が離れるほど数字は下がる。影響が大きく出るメジャーで実測し、床や机にテープで印
部屋と立ち位置響く部屋・壁際ほど数字が上がる同じ部屋の同じ場所に立って測る
時間帯と体調起床直後と夜では声そのものが違う週1回、同じ曜日・同じ時間に測る
機材とゲイン設定を少し動かすだけで値が変わるつまみに印。スマホなら同じ機種を使い続ける
測る素材フレーズを変えると前回と比べられない「アー」5秒+決めた1フレーズの2種類に固定

測る頻度は週1回で十分です。毎日測ると、その日の調子の上下ばかりが目に入って、練習そのものが数字に振り回されます。

数字は変わらないのに「埋もれる」ときに見るもの

音量を測っていると必ずぶつかるのが、数字は出ているのにオケに混ぜると聴こえないという状態です。声量は音量だけで決まっているわけではないので、このときは別の角度から見る必要があります。

ひとつは音色の偏りです。録音をアナライザで表示すると、周波数ごとの量が分かります。中高域の成分が薄い声は、同じ音量でも伴奏の中で前に出てきません。もうひとつは音量の振れ幅です。波形を見て、フレーズの頭だけ大きく語尾が落ちているなら、平均値が下がって埋もれます。子音の立ち上がりが弱い場合も、言葉の輪郭がぼやけて聴き取りづらくなります。

逆に、数字がほとんど動いていないのに「抜けが良くなった」と言われることもあります。これは起きて当たり前のことなので、数字だけで練習の成否を決めないようにしてください。どこに原因があるかの切り分けは声量が足りない原因のタイプ別診断が、高い音域でだけ細くなる場合は高音で声量が落ちるときの対処が参考になります。

記録テンプレと、練習の効果判定への使い方

控える項目はこれだけで足ります。スマホのメモでもスプレッドシートでも構いません。

日付暗騒音距離「アー」平均(3回)フレーズ最大喉の疲れ(5段階)
9/233550cm72/71/73812

判断は最低でも4回分、つまり1か月ほど貯めてから行います。2回の比較では、変化なのかばらつきなのか区別がつきません。

そしてもうひとつ、同じ数字を出すのにどれくらい無理をしたかを一緒に記録しておくことをおすすめします。上の表の「喉の疲れ」がそれです。数字が去年と同じでも、以前より楽に出せているなら、それは前に進んでいます。数字が伸びていて疲れも増えているなら、押して出しているだけかもしれません。

測って現状が分かったら、次は伸ばす側の話になります。何から手をつけるかの順番は声量がある人とない人の違い、具体的な練習は声量を上げる方法にまとめてあります。測定は練習の代わりにはなりませんが、練習を続けるかやめるかの判断材料にはなります。感覚だけで手探りするより、ずっと迷いが少なくなります。

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