歌枠のセットリストは、「歌いたい曲」ではなく「今の喉で最後まで回せる曲」から組むのが基本です。1曲目に全力の高音曲を置いた枠は、中盤で声が重くなり、いちばん聴いてほしい終盤に体力が残りません。逆に、キーとテンポを意識して並べ替えるだけで、同じ曲数でも最後まで安定して歌い切れることがあります。
セトリを事前に用意しておく効果は、配信中に「次なに歌おう」と迷う時間が消えることです。この数十秒の沈黙が毎回入るかどうかで、枠の印象はかなり変わります。曲名を思い出す作業をやめられる分、コメントを拾う余裕も生まれます。
この記事では、曲数の目安・曲順の型・キーとテンポの並べ方・リクエスト枠の空け方まで、1枠ぶんのセトリを組む手順を順番に説明します。歌枠そのものの始め方や機材の設定は歌枠(歌配信)の始め方と歌枠の機材と音声設定にまとめてあります。
セトリは「回せる曲」から組む
最初にやるのは、曲を選ぶことではなく候補を絞ることです。歌枠で使える曲は、次の3つをすべて満たしたものだけだと考えると迷いが減ります。
- 歌詞を見なくても、または画面のカンペで最後まで歌い切れる
- 原キーか、下げた状態で無理なく出せる(当日の調子が悪くても届く範囲)
- 使える伴奏音源がある(配信での利用が認められている音源、自作・依頼した伴奏、アカペラのいずれか)
「練習中でまだ8割」の曲をセトリの真ん中に入れると、そこで流れが止まります。挑戦枠は入れてよいのですが、1枠に1曲までと決めておくと事故になりません。どの曲が自分に合うかの判断軸は歌ってみたの選曲のコツで整理しているので、候補そのものが少ないと感じる場合はそちらから広げてください。キーを下げるかどうかは、当日いちばん調子の悪い状態を基準に決めておくと安全です。
枠の長さ別・曲数の目安と休憩の入れ方
1曲はMCを含めて5〜6分と見積もると計算が合いやすくなります。この前提で、枠の長さごとの目安は次のとおりです。
| 枠の長さ | 曲数の目安 | 雑談ブロック | 備考 |
|---|---|---|---|
| 30分 | 4〜5曲 | 中盤に1回 | 初めての歌枠はこの長さから |
| 60分 | 8〜10曲 | 3曲ごとに1回 | 標準的な枠。予備を2曲用意 |
| 90分 | 12〜14曲 | 3曲ごと+中間に長めの休憩 | 後半の曲は軽めに寄せる |
| 2時間以上 | 15曲〜 | 30分に1回は必ず | 喉の消耗が読みにくいので予定曲を減らす |
ここで大事なのは、予定した曲数を全部歌い切らなくてよい設計にしておくことです。セトリは消化ノルマではなく候補リストなので、多めに並べて、時間や喉の状態を見ながら削るほうが運用しやすくなります。
雑談ブロックは休憩であると同時に、コメントを拾う時間でもあります。歌いながら全部読もうとすると呼吸が乱れるので、まとめて拾う場所をセトリの段階で決めておきましょう。コメント対応そのもののやり方は歌枠のコメント対応と場の作り方に詳しくあります。
曲順の型:掴み・中盤・山場・締め
曲順には決まった正解はありませんが、次の型を土台にすると組み立てが早くなります。60分・9曲の枠を例にします。
1〜2曲目:掴み(自分がいちばん安定している曲)
枠の最初は、視聴者数がまだ少なく、自分の喉も温まりきっていない時間帯です。ここには調子が悪い日でも形になる持ち歌を置きます。毎回同じ曲から始めると「この曲が流れたら歌枠が始まった」という合図として覚えてもらいやすく、遅れて来た人にも状況が伝わります。
3〜5曲目:中盤(知られている曲を多めに)
配信開始から15〜30分は、通知やおすすめ経由で人が増えやすい時間です。ここに多くの人が知っている定番曲を置くと、初めて来た人も反応しやすくなります。定番7割・自分が歌いたい曲3割くらいの比率にしておくと、常連にも初見にも落ち着きのよい構成になります。
6〜7曲目:山場(いちばん聴かせたい曲・挑戦枠)
喉が温まり、人も集まっている時間帯です。高音曲や難しい曲を入れるならここ。挑戦枠の1曲もこの位置が無難です。
8〜9曲目:締め(声を張らない曲で降りる)
終盤に全力の曲を置くと、出し切れずに終わる形になりがちです。締めはバラードや低めのキーの曲、あるいは毎回同じ「締めの曲」にしておくと、終わりの合図として機能します。
キーとテンポを並べ替えて負担を分散する
曲名を並べ終えたら、もう一度上から見て最高音とテンポを書き添えてみてください。高音曲が2曲続いていたり、速い曲ばかりが前半に集まっていたりすると、そこで消耗が集中します。
| 並びの状態 | 起きやすいこと | 組み替え方 |
|---|---|---|
| 最高音が高い曲が連続 | 2曲目の後半から声が重くなる | 間に中〜低音域の曲を1曲はさむ |
| 速い曲が前半に集中 | 息が整わないまま次に入る | テンポの遅い曲と交互に置く |
| ロングトーンの多い曲が連続 | 後半のロングトーンが揺れやすい | 片方を別の枠に回す |
| 同じ雰囲気の曲が続く | 枠全体が平坦に聞こえる | テンポか曲調のどちらかを変える |
各曲の音域を調べておくと、この並べ替えが一気に楽になります。調べ方は曲の音域の調べ方にまとめてあります。配信前に発声の準備を済ませておくと、1曲目に置ける曲の選択肢が広がります。歌っている途中で喉に違和感が出たときは無理に続けず、残りの曲を削って枠を短く切り上げる判断も先に用意しておいてください。
リクエスト枠の空け方と、持ち曲リストの育て方
リクエストを受けるなら、セトリの中にあらかじめ「空き枠」を作っておくのが扱いやすい方法です。全曲をリクエストで埋めると、歌えない曲が来たときに毎回その場で判断することになります。
- 枠を区切る:後半の2〜3曲だけをリクエスト枠にする
- リストから選んでもらう:歌える曲の一覧を画面や概要欄に出し、その中から指名してもらう
- 次回に回す:知らない曲は「練習して次回」とメモに残す
3つ目を機能させるために、持ち曲リスト(歌える曲の台帳)を1枚だけ作っておきましょう。曲名・アーティスト・キーの上げ下げ・最高音・使っている伴奏音源・最後に歌った日、この6項目をスプレッドシートに並べておくだけで十分です。次の枠のセトリは、ここから抜き出して並べるだけで組めるようになります。「最後に歌った日」の欄があると、同じ曲ばかりになっているかどうかも一目で分かります。
リクエストの具体的な断り方や、荒らしへの対応といった場づくりの話は歌枠のコメント対応と場の作り方を参照してください。セトリを配信画面に表示したい場合は、OBS用のセットリスト表示ツールや管理ツールが複数公開されているので、自分の配信ソフトに合うものを探すとよいでしょう。
歌う曲の権利は「配信サイトの規約」で確認する
セトリを組むときに必ずセットで確認したいのが、その曲をそのプラットフォームで歌ってよいかどうかです。
JASRACは、利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧を公式サイトで公開しています(2026年8月21日更新の一覧に、YouTube、ニコニコ動画、Twitch、ツイキャス、SHOWROOM、IRIAMなどが掲載されています)。この一覧に載っているサービスでは、一般の利用者が個別にJASRACへ手続きをしなくても、JASRAC管理楽曲を使ったコンテンツを投稿・配信できるとされています。
ただし、ここで許諾されているのは楽曲そのものを歌うことであって、音源を流すことではありません。市販CDやサブスクの音源、カラオケ店の音源には原盤権が別にあり、これは包括契約の対象外です。伴奏は、配信での利用が認められている音源・自作や依頼した伴奏・アカペラのいずれかにする必要があります。
また、JASRAC以外の管理団体(NexToneなど)が管理する曲や、権利者が個別に条件を定めている曲もあります。最終的な判断は、自分が利用する配信サイトの規約と、その曲の権利表記を確認してください。著作権まわりの全体像は歌ってみたと著作権まとめに整理してあります。
まとめ:終わったら記録を残して、次の枠に回す
歌枠を終えたら、セトリのファイルに一言だけメモを残してください。「4曲目で息が上がった」「この曲でコメントが伸びた」「この曲は半音下げたほうがよさそう」。これを数回分ためると、自分の枠に合う曲順の型が具体的に見えてきます。
要点をまとめます。
- 候補は「最後まで歌い切れる・キーが届く・伴奏がある」の3条件で絞る
- 1曲5〜6分で計算し、30分なら4〜5曲、60分なら8〜10曲を目安にする
- 曲順は掴み→定番多めの中盤→山場→締めの型を土台にする
- キーとテンポを書き出して、高音や速い曲の連続をばらす
- リクエストは空き枠を先に決め、歌えない曲は持ち曲リストに回す
- 歌う曲の可否は、利用する配信サイトの規約で確認する
最初から完璧なセトリを組む必要はありません。5曲の30分枠を何度か回しながら、持ち曲リストを太らせていくのが、いちばん続けやすい進め方です。



















