モニターヘッドホンを使い続けていると、イヤーパッドの表面がひび割れてポロポロとはがれてきたり、クッションがへたって耳が当たるようになったりします。「交換すれば使えるのかな」「本体ごと買い替えたほうがいいのかな」と迷う方も多いのではないでしょうか。
イヤーパッドは、ヘッドホンの中でも使うほど傷んでいく消耗品です。多くのモニターヘッドホンでは交換用のパッドが用意されていて、パッドを替えるだけで着け心地や遮音が戻ることがあります。一方で、互換品を選ぶときはサイズや厚みの違いで音が変わることもあるので、宅録やMIXに使うなら少し注意が必要です。
この記事では、交換時期のサイン、純正品と互換品の考え方とサイズの測り方、交換の一般的な流れ、交換で音や音漏れが変わる点、そしてパッドではなく本体の寿命を疑うときの見分け方をまとめます。
結論:サインが出たら、型番を確かめて交換を検討する
先に要点を表にまとめます。
| 状態 | 考えられること | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 表面がひび割れ・はがれ・ベタつく | パッド表面の素材の劣化 | 交換を検討する |
| クッションがへたって耳が当たる | 中のスポンジのへたり | 交換を検討する |
| 以前より低音が薄い・音漏れが増えた | パッドの密着が弱くなっている可能性 | パッドの状態を確かめる |
| 汚れやにおいが気になるだけ | 皮脂・汗の付着 | メーカーの案内に沿って手入れする |
| 片側だけ音が出ない・途切れる | ケーブルや本体の不調 | パッド交換では直らない。ケーブルや修理を検討 |
交換するときは、まずヘッドホンの型番を確かめ、メーカーが案内している交換用パッドがあるかを調べるところから始めましょう。交換方法は機種ごとに違うので、取扱説明書やメーカーの案内に従ってください。
イヤーパッドは使うほど傷む消耗品
ドイツのヘッドホンメーカーbeyerdynamicのサポートページでは、イヤーパッドは使っているうちに傷んでいくものだと説明されています。着けたり外したりする力に加えて、皮脂や汗、化粧品が表面の素材を傷めること、そしてヘッドホンの音も少しずつ変わっていくことが挙げられています。そのうえで、清潔で見た目も音もよい状態を保つために、ときどきパッドを交換するよう勧めています。
交換の時期については、今回確認したメーカーの案内では「何年ごと」「何時間ごと」といった決まった年数は示されていませんでした。使う時間の長さ、部屋の温度や湿度、汗をかきやすいかどうかで傷み方が大きく変わるためと考えられます。年数で決めるより、次に紹介するサインが出たかどうかで判断するのが現実的です。
傷みを遅らせる手入れ
beyerdynamicの案内では、イヤーパッドの手入れは柔らかい布を水で湿らせて拭き、洗剤は使わないこと、掃除機でほこりを吸わないことが挙げられています。ほかのメーカーでも手入れの方法は機種によって違うので、取扱説明書の案内を確認してください。使い終わったら汗を軽く拭き取り、直射日光の当たらない場所に置いておくだけでも、表面の傷みを遅らせやすくなります。
交換時期のサイン
交換を考えたいサインは、大きく「見た目」「着け心地」「音」の3つに分けられます。
見た目のサイン
- 合皮の表面がひび割れている、ポロポロとはがれてくる
- 表面がベタつく、変色している
- 縫い目がほつれて、中のスポンジが見えている
表面がはがれ始めると、細かいかけらが耳や髪に付いたり、ヘッドホンの内側に入り込んだりします。録音中に気になって集中できないこともあるので、早めに交換を検討しましょう。
着け心地のサイン
- クッションがへたって、耳がヘッドホンの内側に当たる
- 以前より締めつけが強く感じる、または浮いた感じがする
- 長時間着けていると、耳まわりが痛くなりやすくなった
音のサイン
イヤーパッドは、耳とヘッドホンのすき間をふさぐ役割も持っています。パッドがへたって密着が弱くなると、低音が薄く感じたり、外の音が聞こえやすくなったり、ヘッドホンから外への音漏れが増えたりすることがあります。
歌ってみたの録音では、ヘッドホンから漏れたオケやクリックの音をマイクが拾ってしまうことがあるので、音漏れの増加は見逃したくないサインです。録音した声のトラックだけを聴いて、無音のはずの部分にオケが小さく入っていないか確かめてみてください。ヘッドホンに返す音量の決め方は録音の返しの作り方で扱っています。
純正品と互換品の考え方
交換用のイヤーパッドには、ヘッドホンのメーカーが用意している純正品(補修部品)と、ほかのメーカーが作っている互換品があります。どちらを選ぶかは、ヘッドホンを何に使うかで考えると決めやすくなります。
純正品を選ぶ理由
純正品は、もともとの形・厚み・素材に合わせて作られているので、交換後の音や遮音が元の状態に近くなりやすいのが利点です。録音やMIXの判断を同じヘッドホンで続けている場合、聴こえ方が大きく変わらないことは大切です。交換用パッドの品番は、取扱説明書やメーカー公式サイトの補修部品の案内で確認できることが多いです。
互換品を選ぶときの注意
互換品は、純正品の取り扱いが終わっている機種や、着け心地を変えたいときの選択肢になります。ただし、厚みや素材、内側の穴の大きさが純正品と違うと、耳とドライバー(音を出す部分)の距離が変わり、低音の量や音のバランスが変わることがあります。録音の返し用としては問題なくても、MIXで使う場合は交換後にしばらく聴き慣れる時間を取りましょう。
サイズの測り方
互換品を選ぶときは、今のパッドのサイズを測って比べます。
- 型番を確かめる:ヘッドバンドの内側やハウジングに書かれていることが多いです。型番で対応表を出している互換品もあります
- 外側の大きさを測る:丸いパッドなら直径、楕円のパッドなら縦と横の長さを、定規で測ります
- 内側の穴の大きさを測る:耳が入る部分の大きさも、着け心地と音に関わります
- 厚みを確かめる:へたった今のパッドではなく、新品時の厚みを公式情報などで確認できると安心です
- 取り付け方式を確かめる:ハウジングの溝にかぶせる方式、爪で留める方式、リングごと付け替える方式など、機種によって違います
サイズが近くても取り付け方式が違うと付けられないので、外したあとのハウジングの形も見ておくと確かです。
交換の一般的な流れ
交換方法は機種ごとに違います。ここで紹介するのは一般的な流れなので、実際に作業するときは、取扱説明書やメーカーの案内に従ってください。案内が見つからない場合や、外し方がわからない場合は、無理をせず購入店やメーカーの窓口に相談するのが安心です。
- ヘッドホンをインターフェースやPCから外す:ケーブルを引っぱらないよう、作業する机の上を片付けておきます
- 古いパッドをゆっくり外す:縁を少しずつめくるようにして、全体を少しずつ外します。勢いよく引っぱると、ハウジングや内部の配線を傷めるおそれがあります。beyerdynamicの案内では、パッドを外すときにドライバー(工具)を使わないよう注意しています
- 内側のスポンジや布を確かめる:機種によっては、ドライバーの前に薄いスポンジや布が付いています。交換用パッドに新しいものが付属している場合は、案内に沿って取り替えます
- 新しいパッドを取り付ける:溝にかぶせる方式なら、縁を一部はめてから、ぐるりと少しずつはめていきます。左右とも同じ向きになっているかを確かめます
- 着け心地と音を確かめる:いつも聴いている曲を流して、左右の聞こえ方に差がないか、すき間がないかを確認します
ハウジングのねじを外したり、本体を分解したりする作業は、この記事ではおすすめしません。パッドの交換で済まない作業が必要なときは、メーカーの修理窓口に任せましょう。
交換後に音や音漏れが変わる点
新しいパッドに替えると、クッションの厚みが戻り、耳との密着が強くなるので、低音が増えたように感じたり、外の音が聞こえにくくなったりすることがあります。これはへたる前の状態に近づいたためと考えられますが、慣れていた音と変わるので、最初は違和感があるかもしれません。
MIXでヘッドホンを使っている場合は、交換直後にいつものリファレンス曲(お手本にしている曲)を聴き直し、聴こえ方の変化を耳に覚えさせてから作業に戻ると、判断がぶれにくくなります。また、新品のパッドは最初は固めに感じることがありますが、使ううちに頭の形になじんでいきます。
録音の面では、密着が戻ることで音漏れが減り、マイクにオケが入り込みにくくなることが期待できます。交換後に一度、声だけのトラックを確認しておくと安心です。
パッドではなく本体の寿命を疑うとき
次のような症状は、イヤーパッドを替えても直りません。ケーブルや本体の側を確かめましょう。
- 片側だけ音が出ない・小さい:ケーブルの断線や、プラグ・端子の接触不良が考えられます
- ケーブルを動かすと音が途切れる:ケーブルが着脱できる機種なら、ケーブルの交換で済むことがあります
- 片側だけ音がひずむ・ビリつく:ドライバー(音を出す部分)の不調のおそれがあります
- ヘッドバンドやアームが割れている:部品交換で対応できる機種もあるので、メーカーの案内を確認します
ケーブルが本体から直接出ている機種は、断線すると自分では交換できません。分解やはんだ付けはせず、保証期間や修理の受付についてメーカーや購入店に相談してください。ケーブルの傷みを防ぐまとめ方はマイクケーブルの巻き方と同じ考え方が使えます。
修理の費用が新しいヘッドホンの価格に近い場合は、買い替えも選択肢です。宅録用のヘッドホンの選び方はモニターヘッドホンの選び方、中古で探す場合の注意点は機材を中古で買う判断基準にまとめています。マイクの不調の見分け方はマイクの寿命の目安も参考にしてください。
まとめ
イヤーパッドは使うほど傷む消耗品で、決まった交換年数があるわけではありません。表面のひび割れ・はがれ、クッションのへたり、低音の薄さや音漏れの増加といったサインが出たら、型番を確かめて交換を検討しましょう。
録音やMIXに使うなら、音の変化が小さい純正品から検討し、互換品を選ぶときはサイズ・厚み・取り付け方式を確かめるのがおすすめです。交換はメーカーの案内に沿って無理なく行い、片側の音切れなど本体の不調が疑われるときは、修理窓口に相談してください。


















