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歌ってみたを始めようとして機材を調べると、「最低限これだけあればいい」という記事と「これくらいは揃えたい」という記事が両方出てきて、結局いくら用意すればいいのか分からなくなります。金額の幅が1万円から10万円まであるからです。
この記事では、予算額を先に決めて、その金額で何ができるようになるのかという順番で整理します。1万円・3万円・5万円・10万円の4段階です。どの段階でも「投稿できる歌ってみたは作れる」という点は同じで、変わるのは音質そのものよりできることの範囲です。ここを誤解して背伸びすると、使わない機能に何万円も払うことになります。
なお、ここで紹介する構成は「セット商品を選ぶ」話ではありません。セット販売の中から選びたい場合はスターターセットの選び方のほうが向いています。この記事は、予算の金額から逆算して自分で構成を組む人向けです。
結論:予算で変わるのは「音質」より「できること」
先に全体像を示します。金額ごとの到達点は次のとおりです。
| 予算 | 構成の軸 | できるようになること |
| 1万円 | USBマイク | 録音して投稿できる。まず1本出すところまで |
| 3万円 | USBマイク上位+モニターヘッドホン | 自分でMIXの判断ができるようになる |
| 5万円 | XLRマイク+オーディオインターフェース | マイクを後から買い替えられる。歌枠も可能 |
| 10万円 | 上記+マイクと変換部の底上げ+環境対策 | 録り音の粗を減らし、MIXで無理をしなくて済む |
重要なのは、1万円の構成でも作品は完成するということです。予算を上げる目的は「完成させること」ではなく、「判断できるようになること」と「やり直しが効くこと」にあります。
予算配分の優先順位:どこから金をかけるか
限られた予算をどこに割くか。歌ってみたの場合、影響の大きい順はおおむね次のようになります。
- 1位:録る環境(反響・生活ノイズ)。ここは0円でも改善できる部分が大きい
- 2位:マイク。入り口の音が全部を決める
- 3位:モニター環境(ヘッドホン)。自分の音を正しく聞けないと判断できない
- 4位:オーディオインターフェース。差は出るが、上位3つほど体感差は大きくない
- 5位:周辺(ポップガード・スタンド・ケーブル)。安くても効果は出る
意外に思われるかもしれませんが、1位はお金がかからない項目です。押し入れの中で録る、カーテンを閉める、エアコンを切る。これだけで、1万円分のグレードアップに相当する差が出ることがあります。どの予算帯の人も、機材を買う前にここを先に試してください。録り環境の作り方に具体的な手順をまとめています。
逆に、4位のオーディオインターフェースは「高いものを買えば歌が良くなる」と誤解されやすい項目です。実際には、必要な入出力と機能が足りているかのほうが重要で、価格差がそのまま音の差になるわけではありません。
予算1万円:まず1本投稿するための構成
狙い:録音から投稿までを一度やり切る。機材は最小限。
この段階では、マイクとPCをつなぐのにオーディオインターフェースを使わず、USBで直接つなぐマイクを選びます。1台で完結するので配線で迷いません。
USBマイク:FIFINE K669B
USB接続のコンデンサーマイクで、5,000円前後から手に入ります。オーディオインターフェースもケーブルも不要で、PCにつないですぐ録音できます。音質は上位機に及びませんが、「録って投稿する」という目的は問題なく果たせます。実売4,900円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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ポップガード
「ぱ行」「ば行」で息がマイクに当たって出るボコッという音を抑えるための網です。2,000円以下で買えて、効果が分かりやすい部類の小物です。この予算帯では費用対効果が高い投資になります。実売1,800円前後(2026年9月時点・変動あり)。
合計と、残りの使いみち
ここまでで約7,000円。ヘッドホンは手持ちの有線イヤホンで代用します(ワイヤレスは遅延が出るため録音には向きません)。残りの3,000円は、マイクを口の高さに固定できるスタンドやアームに回すと、姿勢が安定して録音のブレが減ります。
この予算でできないこと
- マイクだけを後で買い替える、という拡張ができません(USBマイクは一体型のため)
- 音を正確に聞き分けられないので、MIXの良し悪しの判断が難しいままです
なお、PCを持っていない場合はこの予算帯の選択肢が変わります。スマホだけで完結させる方法もあるので、先にそちらを検討してください。
予算3万円:自分で判断できるようになる構成
狙い:録り音を上げつつ、モニターヘッドホンで「聞ける耳」を作る。
この予算帯では、まだオーディオインターフェースは導入しません。そのぶんをマイクとヘッドホンに回したほうが、体感の差が大きくなるからです。
USBマイク:audio-technica AT2020USB-X
定番マイクAT2020のUSB版です。ヘッドホン端子が付いていて、自分の声を遅れなく聞きながら録音できます。この「遅れずに聞ける」という点は、音程やタイミングを合わせるうえで効いてきます。実売1万8,000円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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モニターヘッドホン:audio-technica ATH-M20x
音楽鑑賞用のヘッドホンは低音を持ち上げる作りのものが多く、MIXの判断には向きません。モニター用は誇張を減らして素の状態に近づける方向で作られています。8,000円前後で入手でき、この価格帯の入門として広く使われています。実売8,200円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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合計
マイク約18,400円+ヘッドホン約8,200円+ポップガード約1,800円で、合計およそ2万8,400円。3万円に収まります。選び方の基準を詳しく知りたい場合はモニターヘッドホンの選び方を参照してください。
この予算でできないこと
マイクが一体型なので、「マイクだけグレードアップ」ができません。次の段階に進むとき、マイクを丸ごと買い替えることになります。最初から5万円を出せる見込みがあるなら、この段階を飛ばしたほうが無駄が少なくなります。
予算5万円:買い替えていける土台を作る
狙い:XLR接続に移行して、あとから部品単位で更新できるようにする。
ここが分岐点です。マイクとPCの間にオーディオインターフェースを挟む構成に変えます。初期費用は上がりますが、マイク・インターフェース・ヘッドホンをそれぞれ別のタイミングで買い替えられるようになります。長く続ける前提なら、ここまで来ておくと後が楽です。
マイク:audio-technica AT2020(XLR)
先ほどのUSB版と同じ系統のXLRマイクです。USB版より安く、1万3,000円前後で手に入ります。XLR接続なので、将来インターフェースを買い替えてもマイクは使い続けられます。実売1万3,200円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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オーディオインターフェース:YAMAHA AG03MK2
コンデンサーマイクに必要なファンタム電源を備え、さらにコンプ・EQを内蔵しているため、配信で声の音量を整える用途にも使えます。歌ってみたと歌枠の両方をやる予定があるなら、この一台でまかなえる範囲が広くなります。実売2万3,500円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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合計と注意点
マイク約13,200円+インターフェース約23,500円+ヘッドホン(ATH-M20x)約8,200円+ポップガード約1,800円で、およそ4万6,700円。5万円に収まります。
注意点として、XLRケーブルが別売りの場合があります。付属の有無を必ず確認してください。無い場合は2,000〜3,000円を見ておきます。配信をしない・録音だけという人は、AG03MK2 以外の選択肢も検討の余地があります。オーディオインターフェースの選び方で比較しています。
予算10万円:録り音の粗を減らす構成
狙い:マイクと変換部を底上げし、MIXで無理な補正をしなくて済む状態にする。
この段階で伸びるのは「うまく聞こえる」ではなく「直さなくて済む」部分です。録り音にノイズや歪みが少なければ、MIXでの処理が軽くなり、結果として自然な仕上がりになります。
マイク:RODE NT1(第5世代)
ノイズの少なさで評価されているコンデンサーマイクです。小さい声や息の成分を録る場面で、機材由来のサーというノイズが混ざりにくくなります。実売4万2,000円前後(2026年9月時点・変動あり)。
予算を抑えたい場合は、audio-technica AT2035 という選択もあります。AT2020 の上位にあたり、2万円前後。浮いたぶんを環境対策やヘッドホンに回せます。実売1万9,800円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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オーディオインターフェース:MOTU M2
2入力2出力のインターフェースで、入力レベルが数値で見える表示を備えています。「どのくらいの音量で録れているか」を目で確認できるため、録音レベルの設定で迷いにくくなります。実売3万6,000円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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モニターヘッドホン:audio-technica ATH-M40x
ATH-M20x の上位にあたるモデルです。細かい音の違いが判断しやすくなるので、ノイズの有無やMIXの過不足を確認する作業がやりやすくなります。実売1万5,400円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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合計と、残す予算の使い道
NT1+MOTU M2+ATH-M40x で約9万3,500円。ポップガードを足すと約9万5,300円です。AT2035 を選べば7万円台に収まるので、差額の2万円強は吸音材・マイクスタンド・XLRケーブルに回すことをおすすめします。
特に吸音材は、この価格帯のマイクほど恩恵が分かりやすくなります。感度の高いマイクは部屋の反射音もよく拾うため、環境対策をしないと「高いマイクを買ったのに残響が増えた」という結果になりかねません。宅録用の吸音材で、貼る場所と枚数の考え方を解説しています。
よくある質問
Q. 予算を上げれば歌がうまく聞こえますか
機材は録れる音の質を変えますが、発声や表現そのものは変わりません。「録り音が良くなる」と「歌がうまくなる」は別の話です。高い機材ほど細部まで拾うため、歌のクセもそのまま記録されます。
Q. いきなり10万円を出すのはありですか
続ける確信があるなら無駄にはなりません。ただし、機材が増えると設定項目も増えるので、最初の1本を投稿するまでの時間が延びやすくなります。途中で止まってしまうリスクを考えると、3万円か5万円から始めて必要になった部分だけ足すほうが、結果的に安く済むケースは多いです。
Q. ダイナミックマイクとコンデンサーマイク、どちらですか
この記事の構成はすべてコンデンサーマイクを前提にしています。細かい音まで拾える反面、部屋の環境音も拾います。生活音が避けられない環境なら、周囲の音を拾いにくいダイナミックマイクのほうが結果が良くなることもあります。特性の違いはコンデンサーマイクの紹介記事で確認してください。
Q. 中古で安く揃えるのはどうですか
マイクは経年で特性が変わる可能性があり、状態の見極めが難しい部類です。ヘッドホンはイヤーパッドの劣化、ケーブルは断線のリスクがあります。予算を下げたいなら、中古に手を出すより予算帯を1段落とすほうが判断しやすいです。
マイクを買ったあと、録音のたびに息の破裂音が入って気になる場合は、ポップガードを足すだけで解消することがあります。選び方はポップガードの選び方を参考にしてください。
ここで挙げた予算はマイクとインターフェースの分で、パソコンは別に必要になります。手元の一台で足りるのか買い替えから考えるのかは、歌い手を目指す人向けのパソコンの選び方とおすすめ機種で確認できます。
まとめ
- 1万円:USBマイク+ポップガード。まず1本投稿するための構成
- 3万円:USBマイク上位+モニターヘッドホン。判断できる耳を作る段階
- 5万円:XLRマイク+オーディオインターフェース。部品単位で更新できる土台
- 10万円:マイクと変換部を底上げし、MIXで無理をしない状態へ
- どの予算帯でも、機材より先に録る場所を整えるほうが差が出やすい
予算別に並べると差が大きく見えますが、投稿できる作品が作れるかどうかで言えば、1万円の構成でも十分に成立します。金額を上げる判断は、「今の構成で何に困っているか」がはっきりしてからで遅くありません。困りごとが言葉にできない段階で高い機材を買うと、機能を使わないまま終わりがちです。



















