歌い方の癖の見つけ方|録音で気づく直したい癖と残してよい癖

歌い方の癖の見つけ方|録音で気づく直したい癖と残してよい癖

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自分の歌を録音して聴き返したとき、「この語尾、毎回同じ形になっている」「入りがいつも下からずり上がっている」と気づくことがあります。人から「歌い方に癖があるね」と言われて、それが褒め言葉なのか注意なのか分からず、もやもやしている方もいるかもしれません。

歌い方の癖は、すべてが直すべきものではありません。聴く人が「その人らしさ」として覚えている癖もあれば、歌詞が聞き取りにくくなったり、曲の雰囲気とぶつかったりしている癖もあります。大事なのは、癖を自分で見つけて、残すか直すかを自分で選べる状態にすることです。

この記事では、よくある癖の種類、録音で癖を見つける聴き方、直すか残すかを決めるときの判断の目安、直すと決めたときの進め方を順に整理します。

癖と向き合う段階ごとの目安

段階やること目安
見つける録音を歌詞カードを見ながら聴き、同じ形が出る場所に印を付ける1回の聴き返しで見るのは1項目だけ
確かめる別の曲・別の日の録音でも同じ所に出るかを見る2曲以上で出れば「癖」と考えてよい
判断する歌詞が伝わるか・曲に合うか・出さない歌い方もできるかを見るどれかに引っかかる所から手を付ける
直す1つの癖だけを決めて、短いフレーズで練習する同時に2つ以上を直そうとしない
残す意図して出す場所と、出さない場所を決めておく「いつでも出る」から「選んで出す」へ

歌い方の癖とは:本人が気づかないまま毎回出る形

ここでいう癖は、本人が意識していないのに、毎回同じように出てしまう歌い方の形のことです。しゃくりやビブラートのような技法そのものではなく、「その技法がどこに、どれくらい出ているか」を本人が把握していない状態を指します。

たとえば、しゃくりは表情をつける技法として使われます。曲の中で狙った所に入れているなら、それは表現です。一方で、どのフレーズの入りにも同じ深さで入っていて、本人は入れているつもりがない場合、それは癖と呼べます。同じ音の動きでも、選んで出しているか、勝手に出ているかで意味が変わります。

癖が生まれる理由はさまざまです。よく聴いていた歌い方が自然に移っていることもあれば、高い音や速いフレーズを乗り切るために体が覚えた動きが残っていることもあります。理由がどれであっても、まずは「どこに何が出ているか」を知ることが出発点になります。

よくある歌い方の癖の種類

録音で見つかりやすい癖を、聞こえ方とあわせて挙げます。自分の録音を聴くときの「探す項目リスト」として使ってください。

しゃくり・入りのずり上げ

狙った音より少し下から入り、すべるように目的の音へ上がる形です。曲の大事な言葉で使うと表情が出ますが、ほぼすべてのフレーズの頭に入っていると、全体がねっとりした印象になったり、音程が甘く聞こえたりすることがあります。しゃくりの出し方と入れ方はしゃくりの出し方・使い方で詳しく扱っています。

語尾の形がいつも同じ

フレーズの終わりが毎回下に落ちる、毎回息で抜ける、毎回同じ長さで切れる、といった形です。語尾は曲の印象を大きく左右する場所なので、同じ処理が続くと単調に聞こえやすくなります。語尾の処理の種類は歌の語尾をきれいに歌うコツにまとめています。

伸ばす音にいつも揺れが付く

伸ばす音のほとんどにビブラートがかかる、あるいは伸ばし始めた直後から揺れ始める形です。ビブラートを付けること自体は表現ですが、静かに真っすぐ伸ばしたい場面でも揺れてしまうなら、選べていない状態といえます。

鼻にかかる・こもる

特定の母音や、低い音域・高い音域に入ったときだけ鼻にかかった響きになる形です。声の色として魅力になる場合もありますが、言葉の輪郭がぼやけて歌詞が聞き取りにくくなることもあります。

ため・つっこみが毎回出る

言葉の入りがいつも少し遅れる(ため)、いつも少し早く出る(つっこむ)形です。意図して使えばノリになりますが、癖として出ていると、伴奏とずれて聞こえる原因になります。

子音・母音の癖

「さ行」がこすれるように強く出る、「い」「え」で口が横に引けて音色が変わる、言葉の頭の子音が弱くて聞こえにくい、などの形です。音程やリズムに比べて自分では気づきにくい部類です。

音程の傾き

高い音でいつも少し上ずる、フレーズの終わりでいつも少し下がる、という傾きも癖の一種です。音程の癖は直し方の考え方が別にあるので、音程が上ずる癖の直し方などの個別の記事を参照してください。

録音で癖を見つける聴き方

癖は「毎回出る」ものなので、1回の録音をなんとなく聴くだけでは埋もれてしまいます。見つけるための聴き方を決めておくと、短い時間でも拾いやすくなります。録音と聴き返しの基本の流れは録音でセルフ添削するやり方にあるので、ここでは癖を探すことに絞って説明します。

歌詞カードに印を付けながら聴く

歌詞を紙に書き出すか印刷して、聴きながら気になった場所に記号を付けます。たとえば、しゃくりは「↗」、語尾が落ちる所は「↘」、鼻にかかった所は「ハ」のように、自分で決めた記号で十分です。1コーラス聴き終わったときに、同じ記号が何か所に付いたかを数えると、出る頻度が見えてきます。

1回の聴き返しで見る項目は1つだけ

音程も語尾も子音も同時に聴こうとすると、どれも中途半端になりがちです。「今回は語尾だけ」「次はフレーズの入りだけ」と、聴き返すたびに見る項目を1つに絞ります。同じ録音を3回聴いても、見る場所が違えば別の発見があります。

時間をおいてから聴く

録った直後は、歌っていたときの感覚が耳に残っていて、実際の音より「自分が出したつもりの音」で聴いてしまいがちです。少なくとも数時間、できれば翌日に聴き返すと、他人の歌を聴くような距離で判断しやすくなります。

別の曲・別の日でも同じ所に出るか確かめる

1曲だけで見つかった形は、その曲の譜割りやキーのせいで出ている可能性があります。テンポや雰囲気の違う曲を2曲以上録って、同じ形が出るかを比べます。曲が変わっても出るものは、その人の歌い方の癖と考えてよいでしょう。逆に、特定の音域や特定の母音でだけ出るなら、その条件を書き留めておくと、あとで練習する場所を絞り込めます。

直すか残すかを決める判断の目安

癖が見つかったら、次は直すか残すかを決めます。ここで「癖は全部悪いもの」と考える必要はありません。聴く人が覚えてくれる歌い方の特徴は、もとをたどれば癖から来ていることも多いからです。次の4つの目安で、1つずつ確かめてみてください。

1. 歌詞が伝わるか

癖のせいで言葉が聞き取れなくなっているなら、まず手を付ける候補です。歌詞カードを見ずに自分の録音を聴いて、何と言っているか分からない所がないかを確かめます。家族や友人に聴いてもらい、聞き取れなかった言葉を教えてもらうのも一つの方法です。

2. その曲の雰囲気に合っているか

同じ癖でも、合う曲と合わない曲があります。語尾を息で抜く癖は、静かなバラードではなじんでも、言葉を短く切っていく速い曲では浮いて聞こえることがあります。原曲を聴き直して、その曲が求めている歌い方と癖がぶつかっていないかを見ます。

3. 出さない歌い方もできるか

判断の中で特に大切なのがこの目安です。試しに、癖の出ている1フレーズを「その癖を出さずに」歌ってみてください。出さずに歌えるなら、その癖は選んで使える技法になっています。どうしても出てしまうなら、残すか直すかを決める前に、まず出さない形を練習しておくと選択肢が広がります。

4. 量がちょうどよいか

癖そのものは魅力でも、すべてのフレーズに出ていると聴く人が慣れてしまい、印象が薄れることがあります。歌詞カードの記号を数えて、大事な言葉だけに残し、それ以外は控えめにする、という「量の調整」で解決する場合も少なくありません。

どの目安にも引っかからない癖は、無理に消さずに残してかまいません。原曲に寄せるか自分らしく歌うかの考え方は歌い方の「個性」の作り方でも扱っています。

直すと決めたら:1つずつ、短いフレーズで

直すと決めた癖は、次の流れで練習すると混乱しにくくなります。

  1. 直す癖を1つだけ決める。見つかった癖が複数あっても、今週はこれ、と1つに絞ります。
  2. 癖が出ている1〜2小節を切り出す。曲を通して歌うと、ほかのことに気を取られて元に戻りやすいためです。
  3. 癖を出さない形を、ゆっくり歌って確かめる。たとえば、しゃくりの癖なら、狙った音にそのまま入る形を、テンポを落として繰り返します。
  4. 同じフレーズを録音して、印を付け直す。歌詞カードの記号が減っているかで変化を見ます。
  5. 慣れてきたら1コーラス通して録る。短いフレーズでできても、通しで歌うと戻ることがあります。通しでも出なくなってから次の癖に移ります。

注意したいのは、癖を消そうとしすぎて歌全体が硬くなることです。しゃくりを消そうとして、入りの音が詰まったように聞こえる場合は、消すのではなく「浅くする」「回数を減らす」方向に切り替えると自然さを保ちやすくなります。直す目的は、癖をゼロにすることではなく、出す・出さないを自分で選べるようになることだと考えておくと、やりすぎを防げます。

残すと決めた癖の扱い方

残すと決めた癖も、そのまま放っておくより、使う場所を決めておくほうが活きます。歌詞カードに「ここは入れる」「ここは入れない」と書き分けて、録音で狙いどおりになっているかを確かめます。サビの頭だけ、曲の最後のフレーズだけ、と場所を限ると、同じ癖でも聴く人の耳に残りやすくなります。

癖は見つけて、選べる状態にしておく

歌い方の癖は、本人が気づかないまま毎回出る形のことです。直すべきものと決めつける必要はなく、歌詞が伝わるか・曲に合うか・出さない歌い方もできるか・量がちょうどよいか、という目安で一つずつ判断していけば十分です。

  • 録音は歌詞カードに印を付けながら、1回に1項目だけ聴く
  • 2曲以上で同じ形が出たら、自分の癖として扱う
  • 直すときは1つずつ、短いフレーズから
  • 残す癖は、使う場所と使わない場所を決めておく

まずは手元にある最新の録音を1本選んで、語尾だけ、入りだけ、と項目を決めて聴き返すところから始めてみてください。



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