歌ってみたを何本か投稿したあと、多くの人が同じところで止まります。「次に何を出せばいいか分からない」です。機材はある、録り方も分かってきた、時間も取れる。それなのに、投稿の間隔だけがじわじわ空いていく。やる気の問題のように見えて、実際はアイデアを思いつく手順を持っていないだけということがよくあります。
企画は、ひらめきを待つものではありません。引き出しを決めておいて、そこから順番に出すものです。この記事では、企画を「曲」「形式」「時期」という3つの軸から引き出す方法と、それでも出てこない時期の過ごし方を整理します。
読み終わったあとに、次の3本分くらいは手元に書き出せる状態を目指します。
結論早見表|3つの引き出しの使い分け
| 引き出し | 考え方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 曲を軸にする | 「何を歌うか」から決める | 歌いたい曲はあるが、出し方に迷っている |
| 形式を軸にする | 「どんな形で出すか」から決める | 曲は浮かぶが、毎回同じ見え方になっている |
| 時期を軸にする | 「いつ出すか」から決める | 何も浮かばない。投稿が止まっている |
順番としては、詰まっている人ほど「時期」から入るのがおすすめです。曲や形式は自由度が高すぎて、迷い始めると決まりません。時期は勝手に決まっていくので、選択肢が自動的に絞られます。
なぜ「次に何を出すか」で止まるのか
先に原因を押さえておくと、対処が選びやすくなります。企画が出てこないとき、たいていは次のどれかが起きています。
選択肢が多すぎる
歌える曲は何万曲もあります。形式も、フル尺・ショート・歌枠・コラボと無限に組み合わせられます。選択肢が多いほど、人は決められなくなります。企画が出ないのは発想力の問題ではなく、絞り込みの条件がないからです。
前の1本のハードルを超えようとしている
前回うまくいった本があると、次はそれ以上でなければいけない気がしてきます。すると企画の基準が勝手に上がり、思いついた案が全部「弱い」と感じられます。これは、企画が出ていないのではなく、出た案を自分で捨てている状態です。
反応を先に想像している
「この曲は伸びなさそう」「もうみんな歌っている」と、出す前に結果を判定してしまうパターンです。この判断は当たることもありますが、多くの場合は投稿本数を減らすだけに終わります。何を指標にするかで迷っているなら、歌い手活動の目標の立て方で再生数以外の見方を決めておくと、企画を評価する基準が変わります。
引き出し1|曲を軸にする
「歌いたい曲から決める」は基本ですが、それだと結局いつもと同じ選び方になります。曲軸を企画に変えるコツは、1曲を単体で見ず、関係でまとめることです。
つながりでまとめる
- 同じ作者でまとめる:好きなボカロP、好きな作曲者の曲を続けて出す。「◯◯さんの曲を3曲歌う」という形になった瞬間、1本ではなくシリーズになります。
- テーマでまとめる:夜の曲、走る曲、静かな曲。歌詞や雰囲気の共通点で束ねる方法です。
- 年代でまとめる:自分が中学生のときに流行った曲、10年前の曲。世代の共感が入り口になります。
- 自分の変化でまとめる:最初に投稿した曲をもう一度歌う。前と後ろを並べると、それ自体が企画になります。
「歌えない曲」を企画にする
キーが高くて諦めた曲、早口で歌えなかった曲は、それ自体が企画の種です。「今は歌えないけれど、3か月後に出す」と宣言して、練習の過程を短い投稿で出していく形にできます。挑戦中であることが分かると、完成形だけを出すより経過に興味を持ってもらいやすくなります。
曲そのものの選び方に迷ったら
需要と競合を見ながら曲を選ぶ手順は歌ってみたの選曲のコツで詳しく扱っています。ここで言いたいのは選曲の方法ではなく、選んだ曲をどう束ねるかです。同じ曲でも、単発で出すかシリーズの1本として出すかで、見え方はかなり変わります。
引き出し2|形式を軸にする
曲が浮かばないときは、形式から入ると早いことがあります。歌う内容が同じでも、出し方を変えるだけで別の企画になります。
ショート(縦動画)
1曲まるごとではなく、サビだけ、Aメロだけを出す形式です。制作にかかる時間が短いので、投稿の間隔が空いているときのつなぎとしても機能します。同じ曲のフル版を出す前の予告として使うこともできます。作り方や運用の考え方はショート動画で歌ってみたを出す方法にまとめています。
歌枠(配信)
録って出す形ではなく、その場で歌う形式です。1回の配信で何曲も歌えるので、「投稿するほどではないけれど歌いたい曲」の置き場所になります。企画としても、リクエスト回、しばり回(アニソンだけ、バラードだけ)など派生をつくりやすいのが特徴です。始め方は歌枠の始め方を参照してください。
コラボ
ほかの歌い手と一緒に歌う形式です。相手の聴き手に届く機会が生まれるのと、自分ひとりでは選ばない曲が候補に入るのが利点です。企画として考えるときは、「誰と」よりも先に「どういう組み合わせなら面白いか」(声質が違う2人、同じ曲を交互に歌う、など)を決めておくと、相手に声をかけやすくなります。
リレー・合作
複数人で1曲をつなぐ形式です。参加する側なら募集を探す、主催する側なら人を集めて進行する形になります。手順や進め方はリレー動画・合作企画の参加と主催で扱っているので、興味があればそちらへ。企画の引き出しとしては、自分の投稿ペースが落ちている時期でも、他人の予定に乗ることで動けるようになるのが大きい形式です。
形式のかけ算で本数を増やす
形式は組み合わせられます。たとえば同じ1曲から、次の4本が作れます。
- ショートでサビだけ先に出す
- フル尺を投稿する
- 歌枠でリクエストとして歌う
- 別の人とコラボ版を出す
企画が思いつかないとき、新しい曲を探すより今ある1曲を横に展開するほうが早いことは多いです。
引き出し3|時期を軸にする
何も浮かばないときに一番効くのがこれです。カレンダーを開けば、企画の入口は毎月あります。
季節
春・夏・秋・冬それぞれに、歌詞やイメージが合う曲があります。「桜の曲」「夏の終わりの曲」のように、季節そのものをテーマにすると、選曲の条件が一気に絞れます。季節ものは毎年繰り返せるので、翌年に同じ企画の第2弾を出すこともできます。
記念日・イベント
年末年始、卒業シーズン、ハロウィン、クリスマスなど、世の中の話題が動く時期にあわせる方法です。この時期は同じテーマの投稿が増えるので埋もれやすくもありますが、「検索する人が確実に増える」時期でもあるというのが利点です。
自分の周年
活動開始からの周年、投稿本数の節目(10本目、50本目)、チャンネルの節目などです。他人の都合に左右されず、自分だけの区切りをつくれるのが強みです。周年企画は準備期間を取りやすく、コラボやリレーとも組み合わせやすい形になります。
時期軸は「逆算」で使う
時期を軸にする最大の利点は、締め切りが先に決まることです。たとえば12月に出すと決めたら、録音は11月中旬、MIX依頼は11月上旬、選曲は10月中と自動的に逆算できます。企画が出ない人は、たいてい締め切りがない状態で考えています。日付を先に置くだけで、決まる速度が変わります。
出す日が決まったら、その前後で何を告知するかも組み立てられます。投稿日まわりの設計は投稿日の告知のしかたを参考にしてください。
3つの軸を掛け合わせて年間の枠をつくる
ここまでの3軸は、単独で使うより掛け合わせたほうが実用的です。おすすめは、1年ぶんの「枠」だけ先に決めて、中身は後から埋めるやり方です。
| 枠 | 決めること | 例 |
|---|---|---|
| 定番枠(毎月) | 形式だけ固定 | 毎月1本はフル尺を出す |
| つなぎ枠(隔週) | 短い形式で間を埋める | ショートを月2本 |
| 季節枠(年4回) | 時期だけ固定 | 3月・7月・10月・12月に季節の曲 |
| 挑戦枠(年2回) | 難しい曲・新しい形式 | 歌えなかった曲、初コラボ |
枠が決まっていると、「何を出すか」ではなく「この枠に何を入れるか」を考えればよくなります。ゼロから考えるより、はるかに決まりやすくなります。
ネタは思いついた瞬間に置き場所へ入れる
企画は、思いついた瞬間が一番具体的です。メモアプリでも紙でも構わないので、置き場所を1か所だけ決めて、そこに放り込んでください。ポイントは、良し悪しを判断せずに入れることです。評価するのは、実際に作るときで十分です。
それでも思いつかない時期の過ごし方
引き出しを開けても何も出ない時期は、誰にでもあります。そのときにやることは「もっと考える」ではありません。
入力が減っているだけのことが多い
企画が出ないときは、新しい曲を聴く量が減っていることがよくあります。作業と投稿に時間を取られて、聴く時間がなくなる。出すものがなくなるのは自然な流れです。1週間、まったく知らないジャンルのプレイリストを流しておくだけで、候補が戻ってくることがあります。
「出さない期間」を先に決める
投稿が止まっていることに焦ると、余計に決まらなくなります。それなら「今月は出さない。来月の第2土曜に出す」と先に決めてしまうほうが楽です。止まっている状態と、休むと決めた状態は、気持ちの負担がまったく違います。
完成しなかったものを数える
録ったけれど出していない音源、途中でやめた企画メモ。これらを一度並べてみてください。「思いつかない」のではなく「思いついたものが完成していない」だけ、というケースは相当あります。その場合、新しい企画を考えるより、止まっているものを1本だけ完成させるほうが前に進みます。
人の企画に乗る
自分で0から立てるのがしんどい時期は、他人が立てた企画に参加するのが手です。リレー企画、コラボの誘い、既存のタグ企画。誰かの締め切りに乗ると、決めるべきことが「参加するかどうか」だけに減ります。
よくある質問
同じ曲をもう一度歌うのはありですか
ありです。むしろ、歌い方や録音環境が変わっていれば、比較できるぶん見どころが増えます。初期の1本を出し直すのは、企画としても成立しやすい形です。
企画を告知したのに実行できませんでした
よくあることです。対策としては、告知のタイミングを遅らせること。制作の途中まで進んでから告知すると、実行できる確率が上がります。
企画を考えるのに時間をかけすぎてしまいます
枠を先に決めてしまうのが一番効きます。「毎月1本フル尺」と決めておけば、考える対象は曲だけになります。考える範囲を狭めるほど、決まるのは早くなります。
誰かとかぶった企画は避けるべきですか
避ける必要はありません。同じ曲、同じテーマでも、声と解釈が違えば別のものになります。かぶりを気にして出さないほうが、機会を失います。
まとめ
企画が思いつかないのは、発想の問題ではなく手順の問題であることがほとんどです。曲でまとめる、形式を変える、時期から逆算する——この3つの引き出しを持っておけば、ゼロから考える場面はかなり減ります。
詰まっているなら、まず時期から入ってください。カレンダーを開いて、次に出す日を1つ決める。それだけで、選ぶべき曲も形式も自然に絞られます。思いつかない時期は誰にでもあります。そのときは無理に企画を絞り出さず、聴く時間を増やすか、止まっている1本を完成させるほうへ回しましょう。



















