歌枠の途中で映像が止まる、「カクカクしてる」「止まった?」とコメントが来る。回線のせいかなと思ってスピードテストをしてみたら「100Mbps出ている」のに、なぜか配信は安定しない。こうした場面では、見ている数字が配信に関係する「上り」の速さではなかったり、配信の設定が回線の実力を超えていたりすることがよくあります。
この記事では、歌枠に必要な回線の速さを、YouTubeとOBSの公式の案内をもとに整理します。上りと下りの違い、配信の設定から必要な速さを計算する方法、測るときの注意、配信中に回線が足りているかを見る場所、足りないときに設定を下げる順番、配信の遅れ(ラグ)と回線の関係まで解説します。
数値はYouTubeヘルプの推奨値(2026年10月時点)の転記で、OBSの項目名はOBS Studio 33.0.0の日本語表示で確認したものです。回線の速さは契約や住まいの環境で大きく変わるので、あくまで目安として読んでください。
先に要点だけ:見る数字は「上り」の速さ
| 知りたいこと | 目安・考え方 |
|---|---|
| 見る数字 | スピードテストの「上り(アップロード)」。下りではない |
| 必要な速さの出し方 | 映像ビットレート+音声ビットレートが、安定した上りの速さの75%程度に収まるか |
| 720p・30fpsの例 | YouTubeの最小ビットレート3Mbps(H.264)なら、上りは安定して4Mbps強あると安心 |
| 1080p・30fpsの例 | 最小ビットレート5Mbps(H.264)なら、上りは安定して7Mbps弱あると安心 |
| 測り方 | 配信するパソコンで、配信する時間帯に、何回か測って低めの値を見る |
| 足りないとき | 映像ビットレート→解像度→フレームレートの順に下げる。音声は推奨値のまま |
表の「75%」は、OBS公式ナレッジベースの接続トラブルの案内で、ビットレートを決める出発点として挙げられている値です。上りの速さぎりぎりまで使わず、余裕を残しておくという考え方です。
必要な上りの速さを計算する
上りと下りの違い:配信は「送る」速さで決まる
インターネットの速さには、2つの向きがあります。
- 下り(ダウンロード):動画を見る、ページを開くなど、ネットから自分の機器にデータが届く速さ
- 上り(アップロード):配信する、動画を投稿するなど、自分の機器からネットへデータを送る速さ
歌枠は、自分のパソコンで作った映像と音を、休まずYouTubeなどのサーバーへ送り続ける作業です。そのため関係が深いのは上りの速さです。下りがいくら速くても、上りが足りなければ配信は不安定になります。回線によっては上りが下りより大幅に遅いこともあるので、スピードテストでは上りの数字を確かめてください。
もう一つ大切なのは、「速さの最大値」より「安定して出る速さ」です。配信は数十分から数時間、同じ量のデータを送り続けます。一瞬だけ速い値が出ても、途中で落ち込む時間があれば、その間に映像が止まりやすくなります。
送る量はビットレートの合計で決まる
配信で送るデータの量は、OBSで設定する映像ビットレートと音声ビットレートの合計でほぼ決まります。ビットレートは1秒あたりに送るデータの量で、OBSではkbps(1,000kbps=1Mbps)で入力します。
YouTubeヘルプに載っているH.264の場合のビットレートは、次のとおりです(2026年10月時点)。
| 解像度・フレームレート | 最小ビットレート | 推奨ビットレート |
|---|---|---|
| 1080p・60fps | 6Mbps | 17Mbps |
| 1080p・30fps | 5Mbps | 14Mbps |
| 720p・60fps | 3Mbps | 8Mbps |
| 720p・30fps | 3Mbps | 8Mbps |
| 480p・30fps | 0.4Mbps | 4Mbps |
同じヘルプでは、H.265やAV1を使う場合は、より低いビットレートの範囲が示されています。音声はステレオで128kbpsが推奨されています。
計算の例
720p・30fpsで、映像を3,000kbps、音声を128kbpsにした場合、合計は約3.1Mbpsです。これを上りの75%に収めるには、3.1÷0.75で約4.2Mbps以上の安定した上りがあると余裕を持てます。同じように1080p・30fpsで映像5,000kbpsなら、合計約5.1Mbpsなので、上りは約6.8Mbps以上が目安になります。
推奨ビットレートまで上げたい場合は、さらに大きな上りが必要です。上りの速さに余裕がないときは、無理に推奨値まで上げず、最小と推奨の間で回線に合う値を選びましょう。歌枠は立ち絵や静止画など動きの少ない画面が多く、ゲーム配信ほど高いビットレートが要らない場合もあります。解像度とビットレートの組み合わせはOBSの画質設定で詳しく解説しています。
上りの速さを測るときの注意
YouTubeヘルプでも、ライブ配信の前に速度テストをして、アップロードのビットレートを確かめることがすすめられています。ブラウザで「スピードテスト」と検索すれば、測れるサイトがいくつも見つかります。測るときは、次の点をそろえると、配信のときに近い数字が分かります。
- 配信に使うパソコンで測る:スマホで測った値は、パソコンの接続(有線かWi-Fiか)と条件が違います
- 歌枠をする時間帯に測る:夜は回線が混みやすく、昼より遅くなることがあります
- 何回か測って、低めの値を見る:よかったときの値ではなく、落ち込んだときの値で計画します
- 家族の使い方も考える:同じ回線で動画を見る、大きなファイルを送る、ゲームの更新をすると、配信に使える分が減ります
- VPNを切って測る:OBS公式ナレッジベースでは、VPNが接続を不安定にすることがあると案内されています
Wi-Fiより有線がすすめられる理由
OBS公式ナレッジベースでは、Wi-Fiは配信には不安定な場合があるとして、有線での接続がすすめられています。Wi-Fiは、壁や家電、ほかの部屋の電波の影響で速さが変わりやすいためです。ルーターから離れた部屋で歌枠をしているなら、LANケーブルでつなげるかどうかを先に検討してみてください。
OBSの帯域幅テストを使う場合
OBSの「ツール」→「自動構成ウィザード」には、「帯域幅のテストでビットレートを推定する」という項目があります。OBSの説明では、このテストは音声のない映像データを自分のチャンネルに配信するもので、テストが終わるまで配信を非公開にしておくことがすすめられています。YouTubeとOBSのつなぎ方や公開範囲の設定はOBSでYouTubeの歌枠を始める設定で解説しています。
配信中に回線が足りているかを見る場所
スピードテストの値が足りていても、配信中に回線が落ち込むことはあります。OBSでは、メニューの「表示」から「統計」を開くと、配信の状態を数字で確かめられます。
| 統計の項目 | 見るポイント |
|---|---|
| ドロップしたフレーム (ネットワーク) | 増えていくなら、回線が設定したビットレートに追いついていない |
| ビットレート | 実際に送れている量。設定値より大きく下がる時間がないか |
| エンコードラグによりスキップされたフレーム/レンダリングラグにより逃したフレーム | こちらが増えるなら、回線ではなくパソコンの処理が原因 |
OBS公式ナレッジベースによると、ドロップしたフレームとは、配信サーバーとの接続が安定していないか、設定したビットレートを保てないために、映像の一部を捨てた状態のことです。ドロップが多すぎると、配信サーバーから切断されることもあるとされています。OBSの画面下に「再接続しています…」と出る場合も、回線が途切れたサインです。
一方、「エンコードラグ」「レンダリングラグ」の数字が増えているなら、回線を速くしても解決しません。パソコンの負荷を下げる対処が必要です。この切り分けはOBSの画質設定の「カクカクするときの切り分け」で解説しています。
1人だけ「止まる」と言われたとき
YouTubeヘルプのトラブルシューティングでは、エラーを報告しているのが1人だけなら、その視聴者のパソコンや回線に原因がある可能性が考えられる、と説明されています。多くの人が別々の回線から同じ症状を報告しているなら、配信する側を疑います。コメントの数と内容から、どちら側の問題かを見分けましょう。
回線が足りないときに下げる順番
上りの速さが足りないときは、映像側から順に下げていきます。OBSの「設定」→「出力」と「設定」→「映像」で変えられます。
- 映像ビットレートを下げる(「設定」→「出力」):最小と推奨の範囲の中で、上りの75%に収まる値にする
- 出力解像度を下げる(「設定」→「映像」の「出力 (スケーリング) 解像度」):1920×1080から1280×720にすると、必要なビットレートを抑えやすくなります
- フレームレートを下げる(「設定」→「映像」の「FPS 共通値」):60から30にする
音声のビットレートは、映像に比べて小さな値です。音声を削っても全体の量はほとんど変わらず、歌枠で大事な声の質だけが落ちてしまうので、推奨値のまま残しておきましょう。音声の設定はOBSの音質設定で解説しています。
設定以外に試せること
OBS公式ナレッジベースでは、接続が不安定なときの確認として、次のような方法が挙げられています。
- モデムやルーターを再起動する
- セキュリティソフトが接続を妨げていないか、一時的に止めて確かめる(原因ならOBSを例外に登録して元に戻す)
- ネットワークを速くする・調整するとうたう付属ソフトが入っていれば、止めて試す
- ネットワークのドライバを新しくする
- それでも直らなければ、契約しているプロバイダに相談する
OBSの「設定」→「詳細設定」→「ネットワーク」には、「輻輳を管理するためにビットレートを動的に変更する」という項目もあります。回線が追いつかないときに、映像を捨てる代わりにビットレートを自動で下げる機能です。ただしOBS公式ナレッジベースでは、根本の原因を解決するものではなく、ほかの方法で解決できない場合に使うものとされています。ビットレートが下がれば画質も落ちる点も覚えておきましょう。
配信のラグ(遅延)と回線の関係
「コメントへの反応が遅い」と言われるときの遅れは、多くの場合、YouTube側の仕組みによるものです。YouTubeヘルプでは、映像を捉えてから視聴者に表示されるまでの遅れを「遅延」と呼び、配信ごとに3種類から選べると説明されています。
| 遅延の種類 | 遅れの目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 通常の遅延 | 秒数の記載なし(3つの中で遅れは大きめ) | 画質を保ちやすく、すべての解像度とライブ機能に対応 |
| 低遅延 | 通常は10秒未満 | やり取りと安定のバランスをとった設定 |
| 超低遅延 | 通常は5秒未満 | 視聴者側で読み込み待ち(バッファリング)が増えやすい |
遅延を小さくするほど、視聴者のプレーヤーがためておくデータが少なくなります。そのため回線が少し不安定になっただけで、視聴者側で止まりやすくなります。YouTubeヘルプでも、超低遅延では取り込みの問題が起きたときに視聴者が受ける影響が大きくなるため、選んだビットレートを回線で保てるか確かめるよう案内されています。
上りに余裕がない場合は、超低遅延より低遅延を選ぶほうが、リスナー側で止まりにくくなる可能性があります。コメントとのやり取りが多い歌枠なら低遅延、歌を聞いてもらうことが中心なら通常の遅延、と使い分けるのも一つの方法です。声と伴奏や映像のずれは回線とは別の問題なので、歌枠の音ズレの直し方を参考にしてください。
歌枠の途中で回線が途切れたときの立て直し方
サビに入ったところで、OBSの画面下に「再接続しています…」と出る。コメント欄には「止まった?」が並び、自分の歌声だけが部屋に残る。歌枠の中でも特に焦りやすい瞬間です。回線が落ちたときにどう動くかを先に決めておくと、慌てて設定をあちこち触って、かえって状況をわかりにくくすることを避けられます。
| タイミング | すること |
|---|---|
| 途切れた直後 | 歌は区切りのよいところで止め、再接続を待つ。この間は設定を触らない |
| 戻ってから | 「どこから聞こえていなかったか」をコメントで聞き、その曲はサビ前か頭から歌い直す |
| 何度も切れるとき | 統計の「ドロップしたフレーム (ネットワーク)」を見て、映像ビットレートを1段下げてから続ける |
| 戻らないとき | Xなどで状況を知らせ、続けるか日を改めるかを伝える |
配信と同時にOBSで録画もしておくと、録画はネットを通らないため、途切れていた間の映像と音も手元に残ります。どの曲のどこで切れたのか、そのとき統計の数字がどう動いていたのかを、配信のあとで落ち着いて確かめる材料になります。
「回線が落ちました、戻り次第再開します」「今日はここまでにします、続きは〇日に」といった短いポストを、配信の前に下書きしておくのもひとつの方法です。焦っている最中に文面を考えずに済み、待ってくれているリスナーにもすぐ状況を伝えられます。
まとめ:上りを測って、余裕を残した設定にする
- 配信に関係するのは上り(アップロード)の速さ。下りの数字では判断しない
- 映像と音声のビットレートの合計が、安定した上りの75%程度に収まるようにする
- 測るときは、配信するパソコンで、歌枠をする時間帯に何回か測り、低めの値で考える
- 配信中はOBSの「統計」で「ドロップしたフレーム (ネットワーク)」を見る
- 足りないときは映像ビットレート→解像度→フレームレートの順に下げ、音声は残す
- 回線に余裕がないときは、遅延の設定を小さくしすぎない
回線の速さは、自分ではすぐに変えにくい部分です。だからこそ、今の回線で安定して送れる設定を見つけておくと、毎回の歌枠を落ち着いて続けやすくなります。



















