歌枠の音質を上げたいと思ってOBSの設定を開くと、「音声ビットレート」の欄があります。数字を大きくすれば音が良くなるのか、配信と録画で同じでよいのか、アーカイブの音はどこで決まるのか。調べるほど、迷うところが増えていきます。
この記事では、OBSの音声ビットレートの決め方を、配信・録画・アーカイブの3つの場面に分けて整理します。設定の項目名と初期値はOBS Studioの日本語訳ファイルとソースコード(GitHub、2026年10月時点)、配信の推奨値はYouTubeヘルプ(2026年10月時点)で確認したものです。数字は目安として読み、使っているバージョンの画面で確かめてください。
結論早見表:音声ビットレートは場面ごとに設定場所が違う
| 場面 | 決まる場所 | 目安・初期値 |
|---|---|---|
| 配信(YouTube) | 「設定」→「出力」の配信の「音声ビットレート」 | OBSの初期値は160kbps。YouTubeヘルプの推奨はステレオで128kbps |
| アーカイブ | 配信したときの設定 | 配信の音声ビットレートの影響を受ける |
| 録画(出力モード「基本」) | 「録画品質」の選択 | 「配信と同じ」以外の高品質の選択肢では、ステレオで192kbps(ソースコード上の値) |
| 録画・配信(出力モード「詳細」) | トラック1〜6ごとの音声ビットレート | 各トラックの初期値は160kbps |
歌枠の配信なら、OBSの初期値160kbpsか、YouTubeの推奨128kbpsのどちらかから始めれば十分と考えてよいでしょう。音の良し悪しを左右するのは、ビットレートよりも、入力レベルやフィルタのかけ方であることが多いです。
音声ビットレートとは:1秒あたりに使うデータの量
配信や録画の音は、そのままでは容量が大きいため、AACなどの形式で圧縮してから送られます。音声ビットレートは、この圧縮後の音に1秒あたりどれだけのデータを使うかを表す数字で、単位はkbps(キロビット毎秒)です。
数字が小さすぎると、高い音のシャリシャリした響きが崩れたり、こもったように聞こえたりすることがあります。一方で、数字を上げても、マイクに入った元の音より良くなることはありません。ビットレートは「元の音をどれだけ崩さずに運ぶか」の設定であって、音を良くする設定ではない、と覚えておくと判断しやすくなります。
配信の音声ビットレートの決め方
決める手順
- 「設定」→「配信」で、配信先のサービスを選ぶ。サービスごとの推奨値として「最大音声ビットレート」が表示される場合は、その数字を上限として控えておく
- 「設定」→「出力」で、配信の「音声ビットレート」を選ぶ。初期値は160kbps
- YouTubeなら、ヘルプの推奨値(ステレオで128kbps)か、初期値の160kbpsのどちらかにする
- テスト配信か録画で、歌の高い音や息の多い部分を聞き、崩れていないか確かめる
出力モード「基本」では、配信サービスの上限を超える値を選んでいると、「配信の音声ビットレートは、現在の配信サービスの上限である(値)に設定されます」という警告が表示されます。この表示が出たら、上限に合わせて選び直しておくと設定と実際の値がそろって分かりやすくなります。
YouTubeのヘルプでは、音声コーデックはAACまたはMP3とされています。OBSで音声エンコーダを選べる場面では、AACのままにしておくと迷いません。
上げても差が出にくい理由
YouTubeのヘルプには、受け取った配信が変換され、さまざまな形式が作られると説明されています。リスナーが聞く音は、こちらが送った音そのものではなく、配信サービスで変換されたものです。そのため、送る側のビットレートを推奨値より大きく上げても、リスナーに届く音がそのまま良くなるとは限りません。
回線が厳しいときは映像側を見直す
映像のビットレートは一般に数千kbps単位で設定するのに対して、音声は128〜160kbps程度です。配信が途切れるからといって音声を削っても、全体のデータ量はほとんど変わりません。回線に余裕がないときは、まず映像のビットレートや解像度を見直し、音声は推奨値のまま残しておくほうが、歌枠では満足度を保ちやすいはずです。
聞き比べるときのコツ
128kbpsと160kbpsのどちらにするか迷ったら、同じフレーズを両方の設定で短く録画し、聞き比べてみましょう。比べるときは、次の点をそろえると違いが分かりやすくなります。
- 同じヘッドホンで、同じ音量にして聞く
- 高い音、息を多く混ぜた声、サ行の多い部分を選ぶ
- どちらがどちらかを伏せて、もう一度聞き直す
差がはっきり分からないなら、どちらを選んでも配信の聞こえ方への影響は小さいと考えてよいでしょう。そのぶん、ほかの設定の見直しに時間を使えます。
録画とアーカイブの違い
歌枠の音を後で聞き返す方法は2つあります。配信サービスに残るアーカイブと、OBSで手元に保存する録画です。この2つは、音質の決まり方が違います。
- アーカイブ:配信サービスが受け取った配信の音から作られます。配信したときの音声ビットレートの影響を受けるので、後から上げることはできません
- 録画:OBSの出力設定で、配信とは別に決められます。配信と同じ設定にすることも、高めにすることもできます
出力モード「基本」の録画品質
| 録画品質 | 音声 |
|---|---|
| 配信と同じ | 配信の音声ビットレートと同じ |
| 高品質、ファイルサイズ中 | ステレオで192kbps |
| 超高品質、ファイルサイズ大 | ステレオで192kbps |
| 無損失品質、ファイルサイズ特大 | 圧縮しない音声(16bit)。映像も無損失になり、ファイルが非常に大きくなる |
音声の値はソースコードで確認したもので、画面には表示されません。歌枠の一部を切り抜いて使うつもりなら、「配信と同じ」より上の録画品質にしておくと、音声も192kbpsで残せます。無損失品質は保存容量を大きく使うため、短い時間で試してから使うかどうか決めると安心です。
出力モード「詳細」の場合
出力モードを「詳細」にすると、音声はトラック1〜6ごとにビットレートを決められます。初期値はどのトラックも160kbpsです。配信と録画で別のトラックを使う設定にすれば、録画に使うトラックだけビットレートを上げる、といった使い分けもできます。慣れないうちは「基本」で十分です。
サンプルレートとチャンネルはどうするか
音声ビットレートと並んでよく聞かれるのが、「設定」→「音声」の「サンプルレート」と「チャンネル」です。サンプルレートのOBSの初期値は48kHzです(ソースコード上の値)。YouTubeヘルプでは、ステレオ音声の推奨サンプルレートは44.1kHzと書かれていますが、配信サービス側で変換されるので、推奨値に合わせることより、オーディオインターフェースとOBSの設定をそろえることを優先したほうがトラブルを避けられます。数字がそろっていないことで起きる音ズレの直し方は、歌枠の音ズレの直し方にまとめています。
チャンネルは、歌枠ならステレオで問題ありません。なお、「自分の声が左だけから聞こえる」とリスナーに言われた場合は、チャンネルの設定ではなく、「オーディオの詳細プロパティ」でマイクのソースの「モノラル」にチェックを入れて、左右の両方から声が出る設定にするのが手軽です。
音質に不満があるとき、ビットレートより先に見る所
「音が悪い」と感じたとき、ビットレートが原因であることはそれほど多くありません。次の順に見直すと、原因が見つかりやすくなります。
- 入力レベル:小さすぎて後から持ち上げている、または大きすぎて割れている。歌枠の機材と音声設定の入力レベルの決め方を参照
- フィルタのかけすぎ:ノイズ抑制やコンプレッサーを強くかけると、声が平たくこもったように聞こえることがあります。コンプの決め方はOBSのコンプレッサー設定で解説しています
- 声と伴奏の音量:伴奏が大きく、声が埋もれている。全体の音量感はYouTubeの音量(ラウドネス)の記事も参考になります
- 自分が聞いている音:返しの音は、配信に乗っている音と同じとは限りません。OBSの音声モニタリングの設定も確かめましょう
判断に迷ったら、OBSで数分だけ録画して聞き返すのが手軽です。配信の音と近い状態を、自分の耳で落ち着いて確かめられます。
まとめ:ビットレートは推奨値の範囲で決め、音作りは別で行う
- 音声ビットレートは「元の音を崩さずに運ぶ」ための設定で、上げても元の音以上にはならない
- YouTubeでの配信は、推奨の128kbpsかOBSの初期値160kbpsが出発点
- アーカイブの音は配信時の設定で決まる。手元の録画は別に高めにできる
- サンプルレートは推奨値より、機材とOBSをそろえることを優先する
- 音に不満があるときは、入力レベル・フィルタ・音量のバランスを先に見直す



















