時間をかけて録って、MIXして、動画にした歌ってみたが、知らないアカウントにそのまま再投稿されていた。リスナーからの「これ転載じゃないですか?」という連絡で気づくことも多いと思います。悔しい気持ちになりますが、慌てて相手に詰め寄る前に、手元でできる準備があります。
この記事では、無断転載を見つけたときに残しておく記録、誰が申し立てできるのか(歌声・MIX・イラスト・動画で権利を持つ人が分かれること)、YouTubeとXなどの申し立て窓口、申し立てる前に確かめたいことと虚偽の申し立ての注意、共同制作者への連絡までを順に解説します。各サービスの手順は、公式ヘルプ(2026年10月時点)で確認できた範囲にとどめています。
反対に、自分の動画が転載と判定されたり、申し立てを受けたりした側の話は別の記事で扱っています。また、個別のケースが権利の侵害にあたるかどうかはこの記事では判断できません。迷う場合は弁護士などの専門家に相談してください。
転載を見つけたら、この順番で動く
| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 記録を残す | 転載先のURL・画面・投稿日時と、自分の元動画の公開日を保存 |
| 2 | 権利を持つ人を整理する | 歌声は自分、MIX・イラスト・動画はそれぞれの作者。楽曲は作詞作曲者側 |
| 3 | 共同制作者に知らせる | MIX師・絵師・動画師に、見つけたことと対応の予定を共有 |
| 4 | 申し立ての前に確かめる | 切り抜きを許可していないか、紹介・引用の範囲ではないか |
| 5 | 各サービスの窓口から申し立てる | YouTubeは「コンテンツ検出」の削除リクエストなど。氏名の扱いに注意 |
| 6 | 結果を記録し、必要なら相談する | 公的な相談窓口や専門家を使う |
とくに大事なのは2と5です。申し立てできるのは権利を持つ人(またはその正式な代理人)であること、そして申し立ての内容や氏名が相手に伝わる場合があることを先に知っておきましょう。
見つけたときに残しておく記録
申し立ての画面では、転載された動画のURLや、元の作品が何かを説明する欄があります。あとで慌てないよう、見つけた時点で次のものを残しておきます。
- 転載先の動画・投稿のURL(YouTubeなら動画ごとのURL)
- 転載先の画面のスクリーンショット(タイトル・投稿者名・投稿日・再生数が写るように)
- 自分の元動画のURLと公開日
- 録音データやMIX前の音源、プロジェクトファイルなど、自分が作ったことを説明できる元データ
- 気づいたきっかけ(リスナーからの連絡など)と日時
元データは、普段から曲ごと・日付ごとに整理しておくと、こうした場面で探し回らずに済みます。転載先のアカウントには、記録を取る前に反応しないほうが落ち着いて進められます。
誰が申し立てできるのか
歌ってみたの動画には、いくつもの権利が重なっています。転載された動画のどの部分が誰のものかを整理しておかないと、申し立ての欄を埋められません。
| 動画の部分 | 権利を持つ人の例 | 補足 |
|---|---|---|
| 歌声(歌唱) | 歌った自分 | 文化庁の著作権テキストでは、歌唱などの実演をした人に実演家の権利があり、アマチュアのカラオケでも著作隣接権が生じると説明されている |
| MIX・マスタリングした音源 | MIX師との取り決めによる | 依頼時の条件や、誰が音源を管理するかで変わる |
| イラスト・動画 | 絵師・動画師 | 依頼時の利用条件で、権利の扱いが決まっていることが多い |
| 楽曲(作詞・作曲) | 作詞作曲者や管理団体 | 歌い手の権利ではないので、申し立てる部分とは分けて考える |
| 伴奏(オフボーカル音源) | 音源の制作者 | 配布元の規約に従って使っている部分 |
文化庁の資料では、実演家の権利の一つに、実演をインターネット上で誰でも受信できる状態に置くことに関わる「送信可能化権」があると説明されています。歌声の部分は、歌い手自身に権利が生じている部分だと考えられます。ただし、どの権利にもとづいて、どの窓口から申し立てるのがふさわしいかは状況によって違います。フォームの説明を読んでも判断がつかないときは、専門家に確認してください。権利の全体像は歌ってみたと著作権まとめで整理しています。
共同制作者への連絡
MIX師・絵師・動画師が関わった作品なら、見つけた時点で連絡しておきましょう。イラストや映像の部分は、その作者が自分の作品として申し立てたいと考える場合もありますし、「対応は任せます」と言われる場合もあります。誰がどの部分を申し立てるのかを決めておくと、二重の申し立てや連絡の行き違いを避けられます。クレジットの書き方を整えておくと、誰が何を担当したかを示すときにも役立ちます(歌ってみたのクレジット表記の書き方)。
YouTubeで削除を申し立てる
YouTubeヘルプ「著作権侵害による削除の申し立てを送信する」(2026年10月時点)では、削除通知は著作権者が提出するか、弁護士などの正式な代表者が著作権者に代わって提出するものとされています。
YouTube Studioからの手順
- パソコンまたはモバイルブラウザでYouTube Studioにログインする
- 左側のメニューから「コンテンツ検出」を選ぶ
- 「新しい削除リクエスト」をクリックし、案内に沿って入力する
ヘルプでは、必要な情報として、連絡先、権利のあるコンテンツの説明、侵害が疑われるコンテンツへの直接のリンク、法的な声明への同意、戸籍上の氏名による署名などが挙げられています。また、削除を7日後に有効にするよう設定でき、その間に投稿者が自分で対応する機会を持てる、という選択肢も案内されています。
氏名が相手に伝わる場合があることに注意
歌い手名で活動している人がとくに知っておきたいのがこの点です。ヘルプによると、申し立てに書いた戸籍上の氏名やメールアドレスなどは、動画をアップロードしたユーザーと共有されることがあります。住所や電話番号は、訴訟で必要な場合を除いて機密として扱うとされています。本名を知られたくない場合は、正式な代理人に提出してもらう方法も案内されています。身元に関わる情報の扱い全般は歌い手の身バレ対策も参考にしてください。
転載を見つけやすくする機能と、撤回
YouTube Studioの「コンテンツ検出」には、自分の動画と一致する動画を一覧できる「一致する動画」の画面があり、一致したものについて「削除をリクエスト」や「チャンネルに問い合わせる」を選べると案内されています(使えるかどうかはチャンネルの条件によります)。なお、出した削除通知は、元の申立人または正式な代理人が撤回することもでき、撤回すると相手のチャンネルについた著作権侵害の警告が解除される、とされています。
Xやニコニコなど、ほかのサービスの窓口
Xヘルプセンターの著作権に関するポリシーでも、無断でアップロードされた動画や画像は、著作権侵害の申し立ての対象として挙げられています。報告の前に、その使い方がフェアユース(公正な利用)にあたる可能性がないかを考え、あたりそうな場合はまず相手と直接話し合うよう案内されています。
ニコニコでは、通報フォームで「保有する権利が侵害されている(権利者の方のみ)」を選んで申し立てる窓口が案内されています。権利侵害の申立は権利の確認をしたうえで法律に沿って対応し、それ以外の通報はニコニコ利用規約とニコニコ活動ガイドラインに沿って対応すると説明されています(2026年10月時点の公式ヘルプ)。TikTokなどほかのサービスにも、それぞれ権利侵害の申し立て窓口があります。入力する項目や必要な書類はサービスごとに違うので、申し立てる前に各サービスのヘルプを読んでから進めてください。
申し立ての前に確かめたいことと、虚偽の申し立ての注意
削除の申し立ては、相手の動画を消し、場合によってはチャンネルに警告がつく重い手続きです。出す前に、次の点を見直しておきましょう。
- 切り抜きや二次利用を、自分のガイドラインで認めていなかったか(歌枠の切り抜きを許可するときの決め方)
- コラボ相手や共同制作者が、自分のチャンネルに上げた正当な投稿ではないか
- 紹介や批評など、作品の一部を使って論じている投稿ではないか
- 申し立てる部分(歌声・イラストなど)について、自分が権利を持っているか
YouTubeのヘルプでは、虚偽の情報を提出したり、手続きを不正に利用したりすると、アカウントの停止や法的な問題につながる可能性があると警告されています。また、フェアユースなどの例外にあたらないかを申立人が確かめる必要があり、YouTubeから確認を求められることもあるとされています。「なんとなく気に入らない」投稿を消すための手段ではない、という点は押さえておきましょう。
はっきりした丸ごとの再投稿でない場合や、相手が知り合いの場合は、まず相手に直接連絡して取り下げをお願いする方法もあります。どちらが合うかは状況しだいです。
記録と整理をしてから、該当する窓口へ
無断転載を見つけたら、まず転載先と自分の元動画の記録を残し、歌声・MIX・イラスト・動画のどの部分を誰が申し立てるのかを共同制作者と整理します。YouTubeでは「コンテンツ検出」から削除リクエストを出せますが、氏名などが相手に共有される場合があるので、本名の扱いを先に考えておきましょう。Xやニコニコなどにも権利侵害の申し立て窓口があり、手順はサービスごとに違います。
自分だけで判断がつかないときは、文化庁が設けている海賊版による著作権侵害の相談窓口も選択肢です。個人クリエイターも対象とされていますが、個別の侵害の成否の判断や、削除依頼の代行は対象外と案内されています。法的な判断が必要な場合は弁護士などの専門家に相談してください。自分の動画が転載と判定された側の対処は、YouTubeで転載判定されたときの記事で扱っています。


















