歌ってみた動画を出す直前になって、いちばん手が止まりやすいのがクレジット表記です。本家(原曲)はどう書くのか、MIX師さんの名前に「様」を付けるのか、動画の中にも出すべきなのか、自分でやった作業は書いていいのか。決まりきったルールがあるわけではないので、他の人の動画を見比べて余計に迷ってしまう、という方も多いところです。
クレジットは「格好よく見せるための飾り」ではなく、誰が何を担当したかを、あとから見た人が正確にたどれるようにするための記録です。ここを押さえておくと、書き方の細かい違いで悩む時間がぐっと減ります。関わってくれた人への礼儀という面もありますが、それ以上に、依頼先を探している別の人がその表記を見て次の仕事につながる、という実利の部分が大きい要素です。
この記事では、本家・絵師・MIX師・動画師・エンコード師といった役割ごとの書き方、概要欄と動画内の使い分け、そして「投稿したあとに書き忘れに気づいた」ときの直し方までをまとめます。概要欄そのものの構成やテンプレートについては歌ってみたの概要欄の書き方で扱っていますので、この記事はクレジット部分だけに絞って解説します。
結論早見表:役割別の書き方
迷ったときはこの形に当てはめれば、ほとんどのケースで足ります。
| 役割 | 書き方の型 | 一緒に添えるもの |
|---|---|---|
| 本家(原曲) | 本家様:楽曲名 / 作者名 | 原曲ページのURL |
| Vocal(自分) | Vocal:活動名 | 自分のチャンネルやSNS |
| MIX | MIX:お名前 | 依頼先のSNSやポートフォリオ |
| イラスト | Illust:お名前 | 依頼先のSNSやポートフォリオ |
| 動画 | Movie:お名前 | 依頼先のSNSやポートフォリオ |
| エンコード | Encode:お名前 | 依頼先のSNSやポートフォリオ |
| 素材を使った場合 | 使用素材:配布元の名称 | 配布ページのURL |
ポイントは3つだけです。役割名 → お名前 → その人にたどり着けるリンク。この順番でそろえておけば、見た目もそろいますし、見る側も探しやすくなります。
クレジットは「誰が何をしたか」に尽きる
役割名は日本語でも英語でもかまわない
「MIX」と書くか「Mix」と書くか、「Illust」か「イラスト」か。この違いで問題になることはまずありません。大事なのは1本の動画の中で表記をそろえることです。英語で始めたなら最後まで英語、日本語で始めたなら最後まで日本語にしておくと、それだけで整って見えます。
よく使われる役割名は次のあたりです。
- Vocal(歌唱) / Mix(整音・音の仕上げ) / Illust(イラスト) / Movie(動画編集) / Encode(書き出し・圧縮)
- Off Vocal(使用したオフボーカル音源の配布元) / Special Thanks(直接の担当ではないが助けてもらった人)
敬称は「付ける」で統一しておくと安全
敬称は付けても付けなくても間違いではありませんが、付ける側に統一しておくほうが無難です。本家だけ「様」、依頼した相手は呼び捨て、という状態はあとから見ると落ち着きが悪くなります。
おすすめは、本家は「本家様」、依頼した相手は「さん」または「様」、自分だけ敬称なし、という形です。これなら上下関係のような印象も出にくく、見た目もそろいます。ただし、相手から「呼び捨てでお願いします」「この表記でお願いします」と指定があった場合は、相手の指定が常に優先です。
お名前は「依頼時に名乗られた表記」をそのまま使う
これがいちばん間違えやすいところです。SNSの表示名はプロフィール欄で頻繁に変わりますが、クレジットに書くべきなのは依頼のやりとりの中で本人が指定した表記です。絵文字や記号が入っている場合も、指定されたなら削らずにそのまま書きます。
依頼の段階で「クレジットはどう書けばよいですか」と一言確認しておくと、この手のやり直しはほぼなくなります。依頼時に何を確認しておくべきかはMIX依頼の準備ガイドやイラストを絵師に依頼する時のマナーでも触れています。
役割別:こう書くと迷わない
本家(原曲)
いちばん上に置きます。楽曲名と作者名、そして原曲ページへのリンクをセットで書くのが基本形です。
「本家様」という言い方が定着していますが、ここで気をつけたいのはリンク先を必ず公式の配信元にすることです。転載された動画や、誰かがまとめたページを指してしまうと、本家にたどり着けないだけでなく、転載を後押しする形にもなってしまいます。楽曲を扱う際の権利面の考え方は歌ってみたと著作権にまとめています。
オフボーカル音源を配布サイトやコメント欄から入手した場合は、その配布元も別行で書いておきます。配布時に「使用時は記載してください」という条件が付いていることもあるため、ダウンロードしたページの記載は保存しておくと安心です。
MIX師
「MIX:お名前」に、依頼先のSNSアカウントを添えます。MIXは仕上がりを聴いた人が「この人に頼みたい」と動きやすい役割なので、リンクがあるかないかで相手側の受け取り方も変わってきます。
複数人で分担した場合(仮MIXと本MIXが別など)は、まとめずに分けて書きます。「MIX:Aさん / Mastering:Bさん」のように工程名を分ける形が読みやすい書き方です。
絵師・イラスト
描き下ろしてもらった場合は「Illust:お名前」。すでに公開されているイラストを許可を得て使わせてもらった場合は「Illust:お名前(使用許諾済)」のように、描き下ろしなのか使用許諾なのかが分かる形にしておくと親切です。
フリー素材や配布アイコンを使った場合は、絵師への依頼とは分けて「使用素材」の行にまとめます。配布条件で表記方法が指定されていることが多いので、配布ページの記載どおりに書くのが原則です。
動画師
「Movie:お名前」で書きます。動画編集とサムネイルを別の人に頼んだ場合は「Movie:Aさん / Thumbnail:Bさん」と分けます。自分で作った場合も省略せず、自分の活動名を書いて問題ありません。
エンコード師
投稿先の仕様に合わせた書き出しを別の人に頼んだ場合に書きます。「Encode:お名前」の形です。表に出にくい作業ですが、担当した人の実績として残る部分なので省かないほうがよいでしょう。エンコードそのものの流れはエンコード師の探し方で扱っています。
自分が担当した分
録音もMIXも動画も全部ひとりでやった場合、クレジットを省いてしまう方がいますが、書いておいたほうがよいです。「これは自分で全部やりました」という情報そのものが、見る人にとっての判断材料になります。
書き方は「Vocal / Mix / Movie:自分の活動名」のようにまとめてしまってかまいません。すべて自分の場合は「All:活動名」という形もよく使われます。
概要欄と動画内、どちらに何を書くか
両方に書くのが基本ですが、役割が違います。
| 動画内(映像として表示) | 概要欄(テキスト) | |
|---|---|---|
| 目的 | 見た瞬間に伝える | あとから調べられるようにする |
| 量 | 役割名とお名前だけ。数秒で読める量に | リンクを含めて全部 |
| リンク | クリックできないので短く。IDのみ等 | クリックできる形で記載 |
| 表示場所 | 冒頭か末尾に固定。曲中に長く出さない | 説明文の上部〜中盤 |
動画内のクレジットで失敗しやすいのは、情報を詰め込みすぎて読めないパターンです。文字が小さくなり、表示時間も足りず、結局誰も読めないまま流れていきます。動画内は「役割名とお名前」まで、リンクは概要欄に、と割り切ったほうが結果的に伝わります。
スマートフォンで見る人が多いことも考えると、動画内の文字は思っているより大きめが安全です。作ったあとに実機で一度確認しておくとよいでしょう。動画の作り方全般を確認してから、表示位置を決めるとよいでしょう。
書き忘れに気づいたときの直し方
投稿したあとに「MIX師さんの名前を書いていなかった」「リンクが間違っていた」と気づくことはあります。慌てなくて大丈夫ですが、順番だけは守りましょう。
- 先に概要欄を直す。概要欄は投稿後でも編集できます。まず正しい状態にします。
- 相手に連絡する。「クレジットが抜けていました。修正しました」と、事実と対応をそのまま伝えます。言い訳を長く書くより、直した事実を先に伝えるほうが伝わります。
- 固定コメントで補足する。すでに再生されている場合は、概要欄の修正だけでは気づかれにくいことがあります。訂正した内容をコメントとして残しておくと確実です。
- 動画内の表示は状況に応じて判断する。映像そのものの差し替えは、投稿先によって扱いが異なります。再生数やコメントが引き継がれるかどうかも含めて、各サービスのヘルプ・規約で確認してください。
ここで注意したいのが4番目です。一度公開した動画を非公開にして上げ直すと、それまでの反応が消えてしまうことがあります。抜けていたのがクレジット表記だけなら、概要欄の修正と固定コメントで対応するほうが現実的なケースが多いでしょう。ただし相手から「動画内にも入れてほしい」という要望があれば、そちらを優先します。
再発防止は「投稿前のチェックリスト」で
クレジットの抜けは、記憶に頼っているときに起こります。1本作るたびに関わった人をメモに残しておき、投稿直前にそのメモと概要欄を突き合わせる、という手順にしておくと抜けにくくなります。
素材やデータの保存先を決めているなら、そこに「クレジット用メモ」のテキストファイルを1つ置いておくだけでも十分機能します。
よくある質問
依頼先の方から「クレジット不要」と言われたら?
相手の意向を優先してください。ただし、まったく何も書かないのが不安であれば、「Special Thanks」のような形でよいか確認してみる方法もあります。いずれにしても、こちらの判断で勝手に名前を出すことは避けます。
依頼先の方が活動名を変えた場合は?
過去の動画をさかのぼって直す義務はありません。ただ、本人から「変更したので直してほしい」と連絡があった場合は、概要欄の編集で対応できる範囲なら応じるのが穏当です。
無料の配布素材にもクレジットは必要?
配布元が定める条件によります。「記載不要」と明記されているものもあれば、「記載必須」のものもあります。配布ページの記載を確認するのが唯一の正解で、他の人の動画の書き方をまねるのは避けたほうがよいでしょう。
クレジットの順番に決まりはある?
厳密な決まりはありませんが、本家を最初に置き、そのあとに制作に関わった人を並べる形が一般的です。制作側の並びは、Vocal → Mix → Illust → Movie → Encode のように工程順にすると迷いません。
まとめ
クレジット表記で押さえるべきことは、次の5つに整理できます。
- 役割名 → お名前 → リンク、の順でそろえる
- お名前は依頼時に本人が指定した表記をそのまま使う
- 敬称は付ける側に統一し、相手の指定があればそちらを優先する
- 動画内は役割名とお名前だけ、リンクは概要欄に置く
- 抜けに気づいたら、概要欄の修正 → 連絡 → 固定コメント、の順で対応する
クレジットは、その1本を作るのに何人が関わったかを残す記録です。丁寧に書いておくと、次に依頼するときの関係づくりにもつながります。1本を作る全体の流れは歌ってみた1本の作り方【全工程フロー】にまとめていますので、あわせて確認してみてください。



















