こんにちは、
ボイストレーナーのケイです。
今日も早速、
LINEでいただいた質問に答えていきます。
今回の質問はこちらです。
「もともとハスキーっぽい声で、
声質の問題か高い声が出しにくいです。
ハスキーな声なのと高い声が出しにくいのは
何か関係でもあるのでしょうか?」
高い声が出る仕組み
声が出る仕組みを
簡単におさらいしましょう。
声帯と呼ばれる2枚のひだが
ブルブルと振動することで声が出ます。
声帯がピンと張っているほど、
高い声が出ます。
ギターの弦をイメージしてください。
たるんだ弦とピンと張った弦で
どちらが高い音が出るでしょうか?
ピンと張っている弦の方が
高い音が出そうなのはわかると思います。
また、空気の通り道が狭いほど
声が高くなります。
チューバという太い管楽器と
トランペットという細い管楽器。
このふたつを比べると、
トランペットの方が高い音が出ます。
高い音は細くて鋭いイメージがあり、
低い音は太くて鈍いイメージがあるでしょう。
つまり、高い声を出すためには
- 声帯をピンと張ること
- 空気の通り道を狭くすること
の2つがポイントになります。
もともとハスキーっぽいの人の特徴
ハスキーボイスを使える人にも
2つのタイプの人がいます。
もともとハスキーっぽい声になる人と
ハスキーボイスが出せるようになった人です。
ここで大切なのは、
後者の人は声を使い分けられるという点です。
ハスキーっぽい声になってしまう人は
勝手にハスキーボイスになっているのです。
そういう人は、声帯を
しっかり閉じられていない傾向にあります。
空気が抜ける道があることで、
息の抜けたハスキーっぽい声になっているのです。
生まれつきハスキーボイスの人と高い声の関係性
つまり生まれつきハスキーボイスの人は
声帯を閉じられていない可能性が高いです。
高い声を出そうとしても、
空気が漏れる道ができてしまいます。
その結果として、
高い声が出しにくくなってしまうのです。
たとえ高い声が出せても、
芯のない響きになってしまいます。
原理を解説したところで
今回の質問の回答に戻ります。
ハスキーっぽい声質と高い声が出しにくいことは
関係がある可能性が高いです。
どうすればハスキーボイスでも高い声を出せるか?
先ほどから言っているように、
声帯閉鎖ができていないことが大きな原因です。
声帯をしっかり閉じることができれば、
高い声を出しやすくなります。
また、それだけでなく
ハスキーな声を直すこともできます。
ハスキーな声しか出せないのは問題ですが、
使い分けられると個性になります。
声帯閉鎖について詳しく知りたい方は
こちらの記事をご覧ください。
「声質」と「音域」は別のものさしとして考える
ハスキーな声の悩みを聞いていると、声の質の話と、出せる音の高さの話が混ざったまま語られていることがよくあります。この二つはもともと別のものさしなので、まずは切り分けておくと自分の状態を判断しやすくなります。
| ものさし | 何を指しているか | 自分で確かめる方法 |
|---|---|---|
| 声質 | 声の色や質感。かすれ具合、太さ、丸さといった「聞こえ方」の印象 | 同じ高さ・同じ音量で録音し、耳で印象を比べる |
| 音域 | 無理なく出せる一番低い音から一番高い音までの範囲 | 音の出る道具を基準にして、下と上の限界を音名で控える |
| 歌える音域 | 音域の中でも、曲の中で実際に使える範囲 | フレーズで歌ってみて、形が保てる範囲を控える |
ここで押さえておきたいのは、「ハスキーだから高い声が出ない」「ハスキーではないから高い声が出る」と一対一で決まるものではないという点です。かすれた印象の声で高いところまで歌う人もいますし、澄んだ声質でも高音域が広くない人もいます。声質は声質、音域は音域として、それぞれ別に測っておくほうが練習の的が絞れます。
「出しにくい」の中身を分けてみる
高い声が出しにくい、と感じているとき、その中身はだいたい次のどれかに分かれます。どれなのかで、次にやることが変わります。
- そもそも音として届かない(その高さが鳴らない)
- 音は届くが、息が抜けたような音になって芯が出ない
- 音は出るが、力が入って長く続かない
- 単独では出るが、曲の中の流れの中だと出せない
この四つは同じ「高い声が出しにくい」という言葉で語られますが、状況としては別物です。自分がどれなのかを言葉にできるだけでも、練習の選び方が変わります。
自分の音域を測っておく
音域は感覚で語られがちですが、実際に測ってみると思っていた範囲と違うことがよくあります。特別な道具は必要なく、スマートフォンのチューナーアプリやピアノアプリなど、音名がわかるものがあれば確認できます。
- 声を出しやすい高さから始めます。いきなり端から測らないのがポイントです。
- 「アー」と伸ばしながら、半音ずつ下げていきます。音として鳴らなくなった一つ手前を、低いほうの端として控えます。
- 同じように、今度は半音ずつ上げていきます。形が崩れた一つ手前を、高いほうの端として控えます。
- 次に、同じ範囲を「歌うつもり」で測り直します。伸ばすだけなら出る音でも、歌の中では使いにくいことがあるためです。
- 日付と一緒に音名をメモしておきます。
測るときに気をつけたいこと
音域は、その日の体調や時間帯、直前に声を使ったかどうかで動きます。一度測った結果を確定値として扱わないほうが実態に合います。時間帯を変えて何日か測り、幅として捉えておくと判断を誤りにくくなります。
また、限界を探る測定は無理に押し切らないことが大切です。出しにくいと感じたところで止め、その手前を記録する、という進め方で十分に目的は果たせます。声を出しにくい日は、測定そのものを別の日に回してください。
測った音域を選曲とキー設定に使う
音域を数字として持っておく最大の利点は、曲を「歌えるかどうか」で判断する前に、「合っているかどうか」で判断できるようになることです。歌えない原因が自分の技術ではなく、単に曲の音域が今の自分から離れているだけ、というケースは珍しくありません。
| 曲を聴いたときの状態 | 考えられること | 次にできること |
|---|---|---|
| サビの一番高い音だけが届かない | 曲全体は範囲内で、上端だけがはみ出している | キーを少し下げるか、その一音だけ処理を変える |
| 全体的に高すぎて苦しい | 曲の中心の高さが自分の中心とずれている | キーを下げる、または別の曲で同じ課題を練習する |
| 低いところが鳴らず、こもって聞こえる | 下端がはみ出している | キーを上げる方向も検討する |
| 音は全部届くのに、印象が薄い | 音域の問題ではなく、声質や表現の話に寄っている | 録音して、質感のほうを聴き直す |
キーの決め方そのものは自分に合うキーの見つけ方で手順としてまとめています。歌う曲を選ぶ段階から見直したい場合は歌ってみたの選曲の考え方も参考になります。
かすれて聞こえる原因は録音側にもある
見落とされやすいのですが、録音した自分の声がかすれて聞こえるとき、その一部は録り方に由来していることがあります。声そのものを変えようとする前に、次のあたりを確認しておくと切り分けができます。
- マイクとの距離。近すぎても遠すぎても、息の成分と声の成分のバランスは変わります。距離を変えて録り比べると差がわかりやすいです。
- マイクに対する角度。真正面から息が当たっているかどうかで、印象は変わります。
- 部屋の響き。反射の多い部屋では、輪郭がぼやけて聞こえることがあります。
- 録音のレベル。小さく録ったものを後から持ち上げると、ざらつきが目立ちやすくなります。
変える要素は一度に一つだけにして、同じフレーズを録り比べてください。二つ以上を同時に変えると、どれが効いたのかがわからなくなります。ここで挙げた用語がぴんと来ない場合は歌い手用語辞典で先に言葉の意味を確認しておくと読み進めやすくなります。
「ハスキー」と呼ばれる声を4つに分けて考える
ひとことでハスキーと言われる声にも、性質の違うものが混ざっています。どれに近いかで、練習で触る場所が変わります。
| 呼び方 | 聞こえ方 | 高音との関係 |
|---|---|---|
| ハスキーな声質 | 話しているときから、ざらつきや倍音の混ざりがある | 声質の話なので、出せる音の高さとは別のものさしになる |
| 息もれ | 声と一緒に「ふー」という息の音が乗る | 息が先に減るため、高い音のロングトーンが続きにくくなりやすい |
| ウィスパーボイス | 意図的に息を多めに混ぜた歌い方 | 自分で出し入れできるなら、表現の選択肢のひとつ |
| エッジボイス | 「あ”ー」と低くきしませる音 | ハスキーとは別物。声の出し始めを確認する練習に使われる |
自分の声を録音して聴き返したとき、話し声の時点でざらついているのか、歌うときだけ息の音が増えるのかで、上の表のどこに近いかが見えてきます。歌うときだけ息の音が増えるタイプの方は、息もれ・かすれ声を減らすコツのほうが手順に合います。
高い声を出そうとするときに、やらないほうがいいこと
大きな声で叫んで「出た」ことにする
勢いで押し切ると音は鳴りますが、そのやり方では同じ高さを次の日に再現しにくくなります。出たかどうかではなく、その高さで歌詞を言えたか、次のフレーズにつなげられたかを基準にすると、練習の記録が残ります。
原曲キーのまま何度も通しで歌う
届かないキーで繰り返すと、届かせるための力み方だけが身につきやすくなります。半音ずつ下げて歌詞がはっきり出せる高さを探し、そこから戻していくほうが確認しやすいところです。どこまで下げるかの決め方は自分に合うキーの見つけ方にまとめています。
違和感がある日に同じメニューを押し通す
声の出方はその日の状態で変わります。いつもより息が続かない、同じ高さで引っかかる、という日は、音を出さない確認(歌詞の読み合わせ、リズムの確認)に切り替えるほうが、翌日以降の練習が進めやすくなります。
「直す」より「使い分ける」で考える
ハスキーな声質は、直すべき欠点として扱われがちですが、必ずしもそうとは限りません。ざらつきのある声は、静かな曲のAメロや、語るように歌う場面ではそのまま持ち味になります。一方でサビの伸ばしでは芯のある音が欲しくなる——というように、曲の中で場所ごとに使い分けると考えると、練習の目的がはっきりします。
地声と裏声の行き来がぎくしゃくして「高音が出ない」と感じているだけのこともあります。その場合は声質ではなくつなぎ目の問題なので、裏声と地声をなめらかに切り替えるコツを先に見てみてください。
なお、急に声がかすれるようになった、声を出すと痛みがある、といった変化が続く場合は、練習で判断できる範囲を超えています。自己判断で練習を重ねず、耳鼻咽喉科など専門の医療機関に相談してください。
























