録音が終わったあと、マイクケーブルをどう片付けていますか。腕にぐるぐる巻きつけたり、手で丸めて結んだりしていると、次に使うときにねじれて絡まったり、ある日突然「ガリッ」とノイズが出たりすることがあります。
マイクケーブルは、機材の中でもとくに断線しやすい部分です。ただ、巻き方としまい方を少し変えるだけで、ケーブルにかかる負担は減らせます。プロの現場でよく使われる「8の字巻き」も、慣れれば1分もかからずにできるようになります。
この記事では、巻き方で断線しやすさが変わる理由、8の字巻きのやり方とコツ、まとめたあとの留め方、使っている最中の取り回し、断線しかけのサインまでを順番に説明します。
結論:ケーブルは「8の字巻き」でゆるく大きくまとめる
先に要点をまとめます。巻き方ごとの向き・不向きは次のとおりです。
| 巻き方 | 特徴 | おすすめ度 |
|---|---|---|
| 8の字巻き(順巻きと逆巻きを交互) | ねじれがたまりにくく、ほどくとまっすぐ伸びやすい | マイクケーブルに向く |
| 同じ向きにぐるぐる巻く | 簡単だが、巻くたびにねじれがたまる | 短いケーブルや一時的な片付けなら可 |
| 肘と手のひらに巻きつける | 輪の大きさがそろわず、きつく曲がりやすい | 避けたい |
| 小さく折りたたんで縛る | 折れ目に負担が集中する | 避けたい |
まとめたあとは、面ファスナーのバンドなどで軽く留め、重い物の下敷きにならない場所にしまいます。抜き差しのときは、ケーブルではなくコネクタを持つのが基本です。
巻き方でケーブルの傷み方が変わる理由
マイクケーブルの中には、細い線を束ねた芯線と、それを包むシールド(ノイズよけの網)が入っています。外から見ると丈夫そうでも、内部の細い線は、同じところで何度も曲げたり、ねじれた状態が続いたりすると少しずつ切れていきます。
同じ向きに巻くと、ねじれがたまる
ケーブルを同じ向きにぐるぐる巻くと、1周ごとにケーブルが少しずつねじられます。これを繰り返すと、ほどいたときにケーブルがよじれて輪ができたり、床で絡まったりします。ねじれた状態を何度も繰り返すことが、内部の線の負担になると言われています。
腕に巻きつけると、きつく曲がりやすい
肘と手のひらを使って巻く方法は手早いのですが、輪が細長くなり、両端で急に折り返すことになります。腕の太さに合わせて引っぱりながら巻くことになるので、ケーブルが伸ばされた状態でまとまりやすいのも気になる点です。
傷みやすいのはコネクタの根元
断線が起きやすいのは、ケーブルの真ん中よりもコネクタの根元です。巻いたあとにコネクタを輪の中に押し込んだり、根元で鋭く折り曲げたりすると、そこに負担が集中します。巻き方とあわせて、端の扱いにも気をつけましょう。
8の字巻きのやり方
8の字巻きは、「順巻き」と「逆巻き」を1周ずつ交互に繰り返す巻き方です。英語では「オーバー・アンダー」とも呼ばれます。向きを交互に変えることで、1周ごとのねじれが打ち消し合い、ねじれがたまりにくくなります。
手順
- オス側(ピンが出ている側)のコネクタを利き手と反対の手で持つ:端を指に軽くはさんでおくと、途中で落ちにくくなります
- 1周目は普通に輪を作る(順巻き):利き手でケーブルを持ち、ケーブルが自然に描く丸みに沿って輪を作り、反対の手に渡します
- 2周目はケーブルを裏返して輪を作る(逆巻き):利き手の親指側にケーブルをくるっと返すようにして、手首を内側にひねりながら輪を作ります。輪の内側にケーブルが入り込む形になれば成功です
- 順巻きと逆巻きを交互に繰り返す:輪の大きさをそろえることを意識します
- 最後まで巻いたら軽く留める:面ファスナーなどで、輪がばらけない程度に留めます
言葉で読むと難しく感じますが、逆巻きの手首の動きさえつかめば、あとは同じ動きの繰り返しです。初めのうちは、ゆっくり数周巻いてはほどき、まっすぐ伸びるかを確かめながら練習するとよいでしょう。
うまくいかないときのコツ
- ケーブルの癖に逆らわない:無理に輪の形を作ろうとせず、ケーブルが曲がりたい方向に合わせると、きれいな輪になりやすいです
- 輪は大きめに:小さな輪で巻くと、それだけ曲げがきつくなります。片付ける場所に入る範囲で、ゆったりした大きさにします
- 引っぱりながら巻かない:ケーブルを張った状態で巻くと、内部に力がかかったままになります
- 途中で順番を間違えたら巻き直す:順巻きが2回続くと、そこにねじれが残ります
ほどくときの注意
8の字巻きで正しく巻けていると、片方の端を持って輪をほどくだけで、ケーブルがねじれずにまっすぐ伸びます。ただし、輪の中に端を通して結んでいると、ほどいたときに結び目ができてしまいます。端は輪にくぐらせず、外から留めるだけにしておきましょう。
長さによる巻き方の違い
宅録でよく使う3mほどのケーブルなら、手で持ったまま数周巻くだけで片付きます。5m以上の長いケーブルは、途中で輪が重くなって手から落ちやすいので、机の上に輪を置きながら巻いていくと楽です。逆に1mほどの短いケーブルは、無理に輪にせず、ゆるく1〜2回折り返してまとめる程度でもかまいません。どの長さでも、きつく曲げないこと、ねじれた状態で留めないことが共通のポイントです。
巻き終わったら、一度ほどいて床に伸ばしてみると、巻き方が身についているかを確かめられます。ねじれて輪ができる部分があれば、そこで順巻きと逆巻きの順番が崩れていたと考えられます。
まとめたあとの留め方としまい方
巻き方と同じくらい大切なのが、まとめたあとの扱いです。
- 留めるのは面ファスナーのバンドなどで軽く:細い結束バンドでぎゅっと締めつけると、そこだけ外皮が押しつぶされます
- コネクタは輪の外に出しておく:輪の中に押し込むと根元が曲がりやすくなります
- 重い物の下に置かない:機材ケースの底で押しつぶされないよう、上のほうに入れるか別にまとめます
- 端子にほこりが入らないようにする:袋に入れたり、端子にキャップをしたりしておくと、接点の汚れを防ぎやすくなります
マイク本体と一緒にしまう場合の保管場所や湿気対策は、マイクの保管方法で詳しく扱っています。ケーブルも、高温多湿の場所や直射日光の当たる場所は避けておくと安心です。
使っている最中に断線させない取り回し
ケーブルが傷むのは、しまっているときだけではありません。録音中の取り回しでも、負担のかかり方が変わります。
抜き差しはコネクタを持つ
XLRケーブルのメス側(マイクにつなぐ側)には抜け止めのロックがあります。ロックのボタンを押しながら、コネクタ本体を持って抜いてください。ケーブル部分を引っぱって抜くと、根元の線に力がかかります。抜き差しの前にインターフェースの音量を下げておくことも大切です。機材のつなぎ方と抜き差しの注意点は機材の繋ぎ方とセッティングにまとめています。
床と机まわりの配線
- イスのキャスターや机の脚で踏まない位置に這わせる
- 足を引っかける場所にケーブルを垂らさない(マイクごと倒れる原因になります)
- コネクタの根元で直角に曲げず、少しゆとりを持たせる
マイクアームに沿わせるとき
マイクアームを使う場合は、アームを伸ばしきった状態でもケーブルが引っぱられないよう、関節の部分に余裕を残して留めます。縮めた状態で長さを合わせると、伸ばしたときに関節でケーブルが引っぱられます。アームでのケーブルの取り回しはマイクアームの選び方も参考にしてください。
断線しかけのサインと、そのあとの判断
断線は、ある日突然音が出なくなるだけでなく、次のような小さな症状から始まることがよくあります。
- ケーブルを動かしたり触ったりすると「ガリッ」「バリッ」と鳴る
- 音がときどき途切れる、片側だけ小さくなる
- コネクタの根元の外皮が折れ曲がったまま戻らない、ひびが入っている
こうした症状に気づいたら、別のケーブルに替えて同じ条件で録り、症状が消えるかを確かめます。替えて症状が消えるなら、原因はそのケーブルです。マイク本体の不調との見分け方はマイクの寿命の目安で順番にまとめています。
断線したケーブルを、自分ではんだ付けして直す方法もありますが、慣れていないと接触不良やショートの原因になるので、この記事ではおすすめしません。ケーブルは機材の中では比較的安く交換できる部品なので、新しいものに替えるほうが早く録音に戻れます。予備のケーブルを1本用意しておくと、録音中の切り分けにも役立ちます。選び方はマイクケーブル(XLR)の選び方を参考にしてください。
なお、8の字巻きはマイクケーブルだけでなく、長めのシールドケーブルや延長ケーブルにも使えます。ヘッドホンのケーブルも、本体に巻きつけてしまうと根元に負担がかかりやすいので、ゆるくまとめておくのがおすすめです。ヘッドホンの消耗部品についてはイヤーパッド交換の考え方で紹介しています。
まとめ
マイクケーブルは、巻き方としまい方で傷み方が変わります。順巻きと逆巻きを交互に繰り返す8の字巻きでゆるく大きくまとめ、留めるのは軽く、コネクタの根元を曲げないようにするのが基本です。
使っている最中も、抜き差しはコネクタを持ち、踏まない・引っぱらない配線を心がけましょう。ガリや途切れが出たら、まずは別のケーブルで切り分けてください。毎回の片付けを少し丁寧にするだけで、録音中のトラブルを減らしやすくなります。



















