新しいヘッドホンを買ってオーディオインターフェースやスマホにつないだら、つまみを上げても音が小さい。逆に、前のイヤホンは少し上げただけで耳が痛いくらい大きかった。こうした違いの理由としてよく出てくるのが「インピーダンス」という数字です。
商品ページには「32Ω」「80Ω」「250Ω」のように書かれていますが、数字が大きいほど良いのか、小さいほど良いのか、迷う方は多いと思います。実際には、インピーダンスは音質の良し悪しを表す数字ではなく、つなぐ機器との相性を見るための目安です。
この記事では、インピーダンスの意味、音が小さいときに確認する順番、つなぎ先ごとの考え方、選ぶときの見方を、歌ってみたの録音・MIXの場面に合わせて解説します。
結論早見表:インピーダンスの数字と、つなぎ先の目安
まずは大まかな目安です。同じインピーダンスでも、後で説明する「感度」によって鳴りやすさは変わるので、あくまで傾向として見てください。
| インピーダンスの目安 | 一般的な傾向 | つなぎ先の考え方 |
|---|---|---|
| 低め(おおむね50Ω以下) | 弱い出力でも音量を取りやすい。スマホ向けの製品に多い | スマホ・ノートPCに直挿しでも鳴らしやすい。大音量になりやすいので音量に注意 |
| 中くらい(数十〜100Ω前後) | スタジオ用のモニターヘッドホンに多い帯 | 多くのオーディオインターフェースで扱いやすいとされる |
| 高め(数百Ω) | 同じ電圧では音量が小さくなりやすい | 出力に余裕のある機器やヘッドホンアンプ向け。スマホ直挿しでは足りないことがある |
マイクメーカーのLEWITTの解説では、ヘッドホンのインピーダンスはおおむね8〜600Ωの範囲にあり、50Ωあたりまでを低インピーダンス、それより上を高インピーダンスと分けています。
インピーダンスとは:電気の「流れにくさ」を表す数字
Ω(オーム)が大きいほど、電流が流れにくい
インピーダンスは、交流の電気の流れにくさを表す値で、単位はΩ(オーム)です。ヘッドホンは、つないだ機器から送られてくる電気で振動板を動かして音を出しています。同じ強さで送り出したとき、インピーダンスが高いヘッドホンほど流れる電流が少なくなり、音量が取りにくくなる傾向があります。
ここで大事なのは、インピーダンスが高い=音が良い、ではないということです。高いインピーダンスのモデルがスタジオ機材に多いのは、業務用の機器と組み合わせることを前提に作られているためで、数字そのものが音質を決めているわけではありません。
実際の音量は「感度」もあわせて決まる
音量の取りやすさを見るときは、インピーダンスとあわせて「感度(出力音圧レベル)」も確認します。感度は、一定の入力を加えたときにどれくらいの音の大きさが出るかを示す値です。同じ32Ωでも、感度が高いモデルのほうが小さい出力で大きく鳴ります。
注意したいのは、感度の単位がメーカーによって違うことです。「dB/mW」(1mWあたり)と「dB/V」(1Vあたり)では基準が違うため、数字だけを並べて比べることはできません。比べるときは、単位がそろっているかを先に見てください。
音が小さいときに確認する順番
「インピーダンスが高いから音が小さい」と決める前に、設定や接続で解決することも少なくありません。次の順番で確認してみてください。確認の前には、ヘッドホンを外すか、音量つまみを絞ってから操作しましょう。急に大きな音が出ることがあるためです。
- ヘッドホン用のつまみを確認する:オーディオインターフェースには、スピーカー用とは別にヘッドホン専用の音量つまみがある機種が多くあります。
- モニターのバランスを確認する:ダイレクトモニターの「入力の音」と「PCの音」の比率を調整するつまみやスイッチがある機種では、片側に振り切っていると、オケか自分の声のどちらかが小さく聞こえます。
- PC側の出力を確認する:DAWのマスター音量、OSの出力先と音量、DAWで選んでいる出力ポートを確認します。
- 変換プラグを確認する:3.5mmから6.3mmへの変換プラグが奥まで挿さっていないと、音が小さい・片側しか鳴らない、といった症状が出ることがあります。
- 別のヘッドホンで比べる:手持ちのイヤホンなど、別の機種で同じ設定のまま聞き比べます。ほかの機種では十分な音量が出るなら、ヘッドホン側の仕様(インピーダンスや感度)と、つないだ機器の出力の組み合わせが原因の候補になります。
そもそもインターフェースから音が出ない、という場合はインピーダンス以前の接続や設定の問題かもしれません。端子の挿し間違いがないかはオーディオ端子の種類と挿す場所で確認できます。
つなぎ先ごとの考え方
オーディオインターフェースにつなぐ場合
宅録でよくある組み合わせです。モニターヘッドホンとして一般的な数十Ω程度のモデルなら、多くのインターフェースで問題なく使えることがほとんどです。数百Ωのモデルを使う場合は、インターフェースの取扱説明書や仕様表で、ヘッドホン出力の最大出力や、推奨されるヘッドホンのインピーダンスの範囲が書かれていないか確認しておくと安心です。
前述のLEWITTの解説では、目安としてヘッドホンのインピーダンスが、つなぐ機器の出力インピーダンスの10倍以上あるとよい、とされています。これを大きく下回ると、音色が変わったり、低音の出方が変わったりすることがあるそうです。機器の出力インピーダンスは仕様表に載っていることがあるので、気になる方は見てみてください。
スマホ・ノートPCに直接つなぐ場合
スマホやノートPCのイヤホン端子は、持ち運びを前提にした小さな出力です。高インピーダンスのヘッドホンでは、音量を最大にしても足りないことがあります。スマホで歌ってみたを録ったり、移動中にMIXを確認したりする予定があるなら、低めのインピーダンスのモデルのほうが扱いやすい傾向です。
なお、イヤホン端子のないスマホで変換アダプタを使う場合、アダプタ側の出力も音量に関わります。同じヘッドホンでも、アダプタを替えると聞こえ方が変わることがあります。
ヘッドホンアンプを使う場合
高インピーダンスのヘッドホンを使っていて、インターフェースの音量がいつも最大付近、という場合は、ヘッドホンアンプを間に入れる方法もあります。ただ、歌ってみたの録音で使うなら、まずは手持ちの機器で十分な音量が取れるヘッドホンを選ぶほうが、機材も配線も増えずに済みます。
選ぶときの見方:同じ機種でもΩ違いがある
ヘッドホンの中には、同じ型番で複数のインピーダンスが用意されているものがあります。たとえばbeyerdynamicのDT 770 PROは、メーカー公式サイトで32Ω・80Ω・250Ωの3種類が案内されています。見た目が同じでも、つなぐ機器との相性が変わるので、購入時は型番の後ろの数字まで確認しましょう。
選ぶときは、次のように考えると迷いにくくなります。
- 主に何につなぐかを先に決める(インターフェースだけか、スマホやノートPCにも挿すか)
- 仕様表でインピーダンスと感度を両方見る(感度は単位もそろえる)
- 録音で使うなら、音漏れしにくい密閉型かどうかもあわせて見る
- 端子の太さ(3.5mmか6.3mmか)と、変換プラグが付属するかを確認する
録音やMIX向けのヘッドホンの選び方そのものはモニターヘッドホンの選び方、イヤホン型を検討している方はモニターイヤホンの選び方で解説しています。インターフェースを選ぶ段階なら、ヘッドホン出力の仕様も比べる項目に入れておくとよいでしょう(オーディオインターフェースの選び方)。
よくある勘違いと、使うときの注意
「低インピーダンスのほうが音が大きい」は半分だけ正しい
同じ機器につないだ場合、低インピーダンスのほうが音量を取りやすい傾向はあります。ただ、感度の違いで逆転することもあるので、インピーダンスだけで決めつけないことが大切です。また、低インピーダンスのモデルは少しつまみを上げただけで大きな音になりやすいため、挿す前につまみを絞り、少しずつ上げる習慣をつけておきましょう。
録音中の「クリック音漏れ」はインピーダンスとは別の話
録ったボーカルにオケやクリックが小さく入っている場合、原因は多くがヘッドホンからの音漏れです。これはインピーダンスより、ヘッドホンの構造(密閉型か開放型か)や、返しの音量の大きさが関係します。音量が足りないからと返しを上げすぎると、漏れも増えます。
音量が足りないせいで、録音のゲインを上げすぎない
自分の声が聞こえにくいと、つい入力のゲインを上げたくなります。しかし、ゲインは録音される音の大きさを決めるつまみで、ヘッドホンの音量とは役割が違います。ゲインを上げすぎると、音割れや「サー」というノイズが目立つ原因になります。ヘッドホンの音量はヘッドホン用のつまみで、録音の音量はゲインで、と分けて調整してください。録音に「ジー」「ブーン」という音が乗る場合はハムノイズの切り分け方も参考になります。
長く使ったモニターヘッドホンのイヤーパッドがへたってきたときの交換時期と、純正品・互換品の考え方は、イヤーパッド交換の解説でまとめています。
まとめ:数字は「相性の目安」として読む
- インピーダンスは電気の流れにくさを表す数字で、音質の良し悪しを示すものではない
- 高いほど音量が取りにくい傾向があり、実際の鳴りやすさは感度もあわせて決まる
- 音が小さいときは、つまみ・モニターバランス・PCの出力・変換プラグを確認してから仕様を疑う
- インターフェース中心なら数十Ω程度のモデルが扱いやすく、スマホにも挿すなら低めが無難とされる
- 同じ型番でもΩ違いがあるので、購入時は型番の数字まで確認する
いま使っている機器とヘッドホンの仕様表を一度並べて見てみると、音量の悩みの理由が見えてくることがあります。



















