録音のジー・ブーンというノイズの原因|ハムノイズの切り分け方

録音のジー・ブーンというノイズの原因|ハムノイズの切り分け方

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歌ってみたを録ってみたら、声のうしろで「ジー」「ブーン」という低い音がずっと鳴っている。マイクを替えても消えないし、ノイズ除去をかけると声までこもってしまう。宅録を始めたばかりの方から、とてもよく聞く悩みです。

この種類のノイズは、部屋の物音やマイクの性能というより、電源や配線のつながり方から来ていることが多いとされています。原因の候補はいくつかありますが、順番に試せば、どこから出ている音なのかをかなり絞り込めます。

この記事では、ノイズの聞き分け方、自宅で安全にできる切り分けの手順、原因ごとの対策、そしてやってはいけない電源まわりの作業をまとめます。録ってしまったあとの処理についても最後に触れます。

結論早見表:音の聞こえ方で、疑う場所が変わる

まずは、鳴っている音がどれに近いかを確かめてください。音の種類によって、見るべき場所が違います。

聞こえ方よくある原因の候補まず試すこと
「ブーン」と低く一定に鳴るグランドループ(機器どうしのアースの回り込み)・電源まわりノートPCの充電器を抜く/機器を1台ずつ外す
「ジー」「ビー」と少し高めで、ざらついているUSBの給電・PCの部品・照明の調光器・電源アダプタUSBポートやケーブルを替える/照明を消す
マウスを動かすと「ジジッ」と変化するPC内部の電気的なノイズがUSB経由で入っている別のUSBポート/バッテリー駆動で試す
「サー」という細かい音ゲインの上げすぎ・機材の残留ノイズ録音レベルの設定を見直す
「プツプツ」「ガサッ」と途切れるケーブルの接触不良・断線挿し直す/別のケーブルに替える

「サー」というノイズは今回のテーマとは原因が違い、多くはゲイン設定や部屋の音の問題です。こちらは歌ってみた録音のノイズ除去で詳しく扱っています。この記事は「ブーン」「ジー」系に絞って進めます。

「ブーン」「ジー」の正体:ハムノイズとグランドループ

ハムノイズは電源の周波数とつながっている

家庭のコンセントの電気は、一定のリズムで向きが入れ替わる交流です。その周波数は、おおむね東日本が50Hz、西日本が60Hzとされています。この電源の揺れが音声の信号に混ざると、50Hzや60Hz、その倍の100Hz・120Hzあたりに、低い「ブーン」という音が乗ります。これがハムノイズと呼ばれるものです。

そこに高い成分まで混ざると、「ブーン」より「ジー」「ビー」に近い音に聞こえます。どちらも電気の通り道に原因がある、という点では同じ仲間です。

グランドループは「アースの通り道が2つ以上ある」状態

オーディオ機器は、電気の基準になる「グラウンド(アース)」を共有して動いています。ところが、PC・オーディオインターフェース・スピーカーなどが別々のコンセントから電源を取っていると、機器ごとに基準の電位がわずかにずれ、ケーブルのシールドを通ってぐるりと電流が回ることがあります。これがグランドループで、ハムノイズの代表的な原因とされています。

オーディオインターフェースのメーカーであるFocusriteのサポート記事でも、グラウンドの通り道がない、または複数あることが、モニターや録音に乗るハムの原因になりうると説明されています。

自宅でできる切り分け手順(安全なものだけ)

原因を当てずっぽうで探すより、1つずつ条件を変えて「どこで消えるか」を見るほうが早く済みます。始める前に、ヘッドホンとスピーカーの音量を下げておくこと。抜き差しのたびに大きな音が出ることがあるためです。

  1. どこで鳴っているかを確かめる:ヘッドホンだけで聞こえるのか、録音したデータにも入っているのかを分けます。録音には入らずスピーカーからだけ聞こえるなら、出力側(スピーカーの配線)の問題です。
  2. マイクのゲインを0にする:ゲインを絞っても同じ大きさで鳴るなら、マイクより後ろ(インターフェースやPC側)から来ている可能性が高くなります。
  3. ノートPCの充電器を抜く:バッテリー駆動にして消えるなら、充電器や建物側の電源が関係していると考えられます。Focusriteのサポート記事でも、まず試す方法として挙げられています。
  4. USBのつなぎ方を変える:USBハブを外してPC本体に直接挿す、別のポートに挿す、別のUSBケーブルに替える、の順に試します。
  5. つないでいる機器を1台ずつ外す:スピーカー、ミキサー、外付けディスプレイ、充電中のスマホなどを1台ずつ外し、ノイズが止まる機器を探します。
  6. ケーブルの取り回しを見直す:電源ケーブルや電源アダプタの上にマイクケーブルが重なっていないか、長いケーブルを巻いたまま使っていないかを確認します。
  7. 場所やPCを変えてみる:別の部屋や別のPCで同じ構成を試せるなら、建物の配線かPCのどちらに原因があるかを分けられます。

途中で音がまったく出なくなった場合は、ノイズ以前の接続の問題かもしれません。その場合はオーディオインターフェースの音が出ない・認識しない時の対処の順番で確認してください。

原因別の対策

ノートPCの充電器・USBバスパワーが原因のとき

USBケーブル1本で動くバスパワーのインターフェースは、電源をPCに頼っているぶん、PC側のノイズの影響を受けやすいとされています。次のような方法があります。

  • 録音中だけバッテリー駆動にする(録る前に充電しておく)
  • PCの充電器とオーディオ機器の電源を、同じ電源タップにまとめる
  • メーカー純正、または対応が明記された充電器を使う
  • USBハブを経由せず、PC本体のポートに直接つなぐ
  • 電源アダプタが付属・対応しているインターフェースなら、アダプタから給電する

どうしても消えない場合、USBの電気的なつながりを切り離す「USBアイソレーター」という機器もあります。ただし対応する通信速度や相性は製品ごとに違うため、使うならインターフェースのメーカーの案内を確認してからにしましょう。

スピーカーなど複数の機器をつないでいるとき

モニタースピーカーをつないだとたんにハムが出るなら、グランドループの典型的なパターンです。電源を同じタップから取る、インターフェースとスピーカーをバランス接続(TRSやXLRのケーブル)にする、が基本の対策です。バランス接続は、ケーブルに乗ったノイズを打ち消す仕組みのつなぎ方です。ただし、スピーカー側の入力もバランスに対応していないと効果は出ません。端子の見分け方はオーディオ端子の種類と挿す場所にまとめています。

ギターや電子楽器などアンバランス機器をつなぐとき

ギターやベース、一部の電子楽器はアンバランス接続(TSケーブル)で、ケーブルが長いほどノイズを拾いやすくなります。この場合は「DIボックス」という機器で、アンバランスの信号をバランスに変換してからインターフェースにつなぐ方法があります。DIボックスには「グラウンドリフト」というスイッチが付いた製品があり、これは機器の設計として用意された安全な切り替えです。後で述べる「電源プラグのアースを外す」こととはまったく別物です。

照明・スマホ・電源アダプタの近くにあるとき

調光できる照明、LEDのデスクライト、スマホ、ACアダプタ、モニターの電源などは、近くのケーブルにノイズを乗せることがあります。録音中だけ照明を別のものに替える、スマホを機内モードにして離す、マイクケーブルを電源ケーブルと並べて這わせない(交差するなら直角に)、といった配置の工夫で減ることがあります。ケーブル自体の不調が疑わしいときの確かめ方はマイクケーブル(XLR)の選び方の後半で紹介しています。

やってはいけない電源まわりの作業

ハムノイズの対策を調べていると、電源のアースを外す方法が紹介されていることがあります。しかし、これは感電や機器の故障につながるおそれがあるので、やめてください。

  • 3ピン(アース付き)の電源プラグのアースピンを折る・曲げる
  • 3ピンを2ピンに変える変換プラグで、意図的にアースを浮かせる
  • 機器のケースを開けて内部の配線を変える
  • コンセントやブレーカー、アース線を自分で工事する
  • 濡れた手や、電源を入れたままの状態で電源まわりを触る

アースは、機器が故障したときに電気を逃がして人を守るための仕組みです。ノイズが減ったように見えても、安全のための逃げ道をなくしてしまうことになります。

部屋のコンセントにアースが無い、ブレーカーやコンセントまわりの配線そのものが疑わしい、という場合は、自分で手を加えずに電気工事の専門業者に相談してください。賃貸なら、まず管理会社や大家さんへの相談からです。機器そのものの不具合が疑われるときは、メーカーのサポート窓口に、試した手順と結果を伝えると話が早く進みます。

録ってしまったノイズは、後から減らせる?

本番テイクにハムが入ってしまった場合でも、ある程度は後から減らせます。

  • ローカット(ハイパスフィルター):歌声に必要ない低い帯域を削る処理です。50Hzや60Hzの「ブーン」は、これだけで目立たなくなることがあります
  • ノッチ(ピンポイントのEQ):50Hz・100Hz・150Hz…(西日本なら60Hz・120Hz・180Hz…)のように、ハムの周波数だけを細く削ります
  • ハム除去用のプラグイン:ノイズ除去ソフトの中には、ハムの周波数をまとめて削る機能を持つものがあります

ただし、「ジー」のように高い成分まで広く混ざっている場合は、削るほど声も痩せていきます。後処理はあくまで応急手当てと考え、次の録音までに原因をつぶしておくほうが、MIXの手間も少なくて済みます。ノイズ除去の具体的な操作とかけすぎの見分け方は、冒頭で紹介したノイズ除去の記事を参考にしてください。

なお、録音の音量が小さすぎて、あとから大きく持ち上げているとノイズも一緒に大きくなります。ヘッドホンで返しの音が聞き取りにくいせいでゲインを上げすぎている場合は、ヘッドホンのインピーダンスと音量の関係も一度確認してみてください。

まとめ:音を聞き分けて、1つずつ条件を変える

  • 「ブーン」「ジー」は、電源や配線のつながり方から来ていることが多い
  • まずは充電器を抜く、USBのつなぎ方を変える、機器を1台ずつ外す、で「どこで消えるか」を探す
  • 対策の基本は、電源を同じタップにまとめる・バランス接続にする・ケーブルを電源から離す
  • 電源プラグのアースを外す、配線を自分でいじる、といった作業はしない。建物の配線は専門業者へ
  • 録ってしまったハムはローカットやノッチである程度減らせるが、次の録音までに原因をつぶすのが近道

ノイズの原因は、ひとつの組み合わせでしか起きないことも多いものです。焦って全部を一度に替えず、1つ変えては聞く、を繰り返してみてください。



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