歌枠でサビを張ったら、アーカイブの声が「バリッ」と割れていた。雑談で大笑いした瞬間だけ音がつぶれていた。リスナーから「ときどき音が割れる」とコメントが来たけれど、自分のヘッドホンでは気づかなかった。配信の音割れは、録音と違ってあとから録り直せないぶん、事前の準備で防ぐしかありません。
音割れ対策というと「リミッターを入れる」がよく挙げられます。リミッターは役に立ちますが、それだけでは防げない割れもあります。マイクの入り口で割れてしまった音は、そのあとOBSで何をしても元には戻らないからです。大切なのは、どこで割れているかを見つけ、入り口から順にレベルを整え、最後の保険としてリミッターを置くことです。
この記事では、歌枠の音割れを「ゲインの合わせ方→リミッターの数値→聞き返しての確認」の3段階で防ぐ手順をまとめました。OBS Studioの項目名と初期値は、2026年10月時点の日本語版(32.2系)の表記とソースコードで確認したものです。ノイズ抑制やノイズゲートの設定は歌枠のノイズ対策で扱っているので、ここでは割れの防止に絞ります。
結論早見表:音割れは「割れた場所」で直し方が変わる
音は、マイク→オーディオインターフェース(または配信ミキサー)→PC→OBSのフィルタ→OBSのミキサー→配信、の順に流れます。割れた場所より後ろで音量を下げても、割れた音は割れたままです。
| 割れている場所 | 見分け方 | 直す場所 |
|---|---|---|
| 機材の入り口(プリアンプ) | インターフェースのピークランプやクリップ表示が点く | 機材のゲインつまみを下げる。マイクとの距離を取る |
| PCの録音レベル | 機材のランプは点かないのに、OBSのメーターが振り切る | WindowsやMacのサウンド設定の入力レベル |
| OBSの中(ゲインの足しすぎ) | ゲインフィルタやコンプの出力ゲイン、音量を上げてから割れ始めた | OBS内で足した分を戻し、最後にリミッター |
| 声と伴奏の合計 | 声だけ・伴奏だけでは割れず、重なると割れる | 伴奏の音量を下げる。伴奏のソースにもリミッター |
リミッターで防げるのは、主に下の2つです。上の2つは、リミッターの手前で起きている割れなので、機材とPCの設定で直します。
手順1:ゲインは入り口から一段ずつ合わせる
OBS公式のオーディオミキサーのガイドでも、音量の調整は「まず機材そのものから始める」とされています。マイクのゲインつまみ、PCの入力レベル、OBSの音量、の順に、手前から決めていきます。
機材のゲイン:張るフレーズで合わせる
ゲインは、その配信でとくに大きく歌う場面で合わせます。セットリストの中で張る曲のサビを、本番と同じ距離・同じ声量で歌い、インターフェースのピークランプが点かず、OBSのメーターが赤の上端に届かないところまでゲインを下げます。話し声で合わせると、歌った瞬間に割れやすくなります。ゲインの考え方とピークの目安は、録音でも共通なので録音レベル(ゲイン)設定もあわせて確認してください。
ゲインを下げても割れる場合は、口とマイクの距離が近すぎることがあります。こぶし1つ分ほど離して比べてみてください。インターフェースにPAD(パッド)スイッチがある機種なら、それを使う方法もあります。
PCの入力レベル:OS側で上げすぎない
OBS公式のガイドでは、Windowsの場合、コントロールパネルのサウンド設定で録音デバイスのプロパティを開き、レベルの表示をデシベルに切り替えて、0.0dB付近にしておくと割れにくいと案内されています。USBマイクを使っている場合は、メーカーの付属ソフトに入力レベルや自動で音量を上げる機能がないかも見ておきましょう。
OBSのメーターの見方
OBSの音声ミキサーのメーターは、緑・黄・赤の3色に分かれています。OBSの色設定の項目名によると、緑は-60〜-20dB、黄は-20〜-9dB、赤は-9〜0dBの範囲です。公式ガイドでは、赤は割れ(クリップ)に近い範囲で、話し声は黄の上側から赤の下端あたりに届くくらいが目安とされています。また、メーターの上に出る小さな点は直近20秒間のピークの位置を示すので、テストで歌ったあとにこの点の位置を見ると、割れそうだったかがわかります。
歌枠では、張ったサビのピークが赤の下のほうに届き、0dBの端には触れない状態を目安にすると扱いやすくなります。
OBSの中で足しすぎない
OBSの中で音量を足す方法はいくつかあります。「ゲイン」フィルタ(ソースコード上の範囲は-30〜+30dB)、コンプレッサーの「出力ゲイン」、そして「オーディオの詳細プロパティ」で音量を100%より上にする方法です。公式ガイドでは、ゲインは基本的にOBSに入る前の機材で調整するものとされています。声が小さいときは、まず機材のゲインや距離で解決し、OBSで足すのは不足分だけにしてください。足した場合は、その後ろにリミッターがあることを確かめます。
手順2:リミッターの数値を決める
リミッターは、設定した大きさ(しきい値)を超えないように音を抑えるフィルタです。OBS公式のナレッジベースでは、ごく速いアタックと非常に高い比率を持つコンプレッサーの一種と説明され、フィルタの並びの最後に置くよう案内されています。OBSのリミッターで調整できる項目は2つです。
| 項目(OBSの表記) | 初期値 | 範囲 | 役割 |
|---|---|---|---|
| しきい値 | -6dB | -60〜0dB | 出力がこの大きさを超えないように抑える |
| リリースタイム | 60ms | 1〜1000ms | 音がしきい値を下回ってから、抑えるのをやめるまでの時間 |
初期値と範囲は、OBS Studioのソースコードで確認したものです。アタック(抑え始めるまでの時間)は調整項目がなく、内部で短い値に固定されています。
決める手順
- マイクのフィルタ一覧の最後にリミッターを追加する(フィルタは上から順に処理されます)
- しきい値は初期値の-6dBのまま始める
- 張るサビを歌い、メーターのピークが-6dBのあたりで頭打ちになることを確かめる
- 普通の声量で歌っている間もずっと抑えがかかっているように聞こえる(声が平たく、張り付いた感じになる)なら、リミッターではなくゲインが高すぎるサイン。手順1に戻って入り口を下げる
- 抑えたあとに音量が急に戻る感じや、細かく揺れる感じがあれば、リリースタイムを少しずつ長くして聞き比べる
リミッターが働くのは「たまに来る大きな山」だけ、という状態が理想です。常に働いているなら、それは割れを防いでいるのではなく、声をつぶしています。
コンプレッサーを前に入れる場合
声の大小の差が大きく、リミッターがたびたび働いてしまう場合は、リミッターの前にコンプレッサーを入れて、先に差をならしておく方法があります。OBSのコンプレッサーの初期値は、比率10:1、しきい値-18dB、アタックタイム6ms、リリースタイム60ms、出力ゲイン0dBです(ソースコード上の値)。比率10:1は歌の抑揚まで平らにしやすい強めの設定なので、歌枠では比率を下げ、しきい値も張ったときだけ働く位置から試すと、表情が残りやすくなります。出力ゲインを上げた場合は、その分だけ後ろのリミッターが働きやすくなる点に注意してください。
伴奏と重なったときの割れを防ぐ
声だけ、伴奏だけでは割れないのに、2つが重なると割れることがあります。市販の音源やオフボーカル音源は大きめに仕上げられていることが多く、デスクトップ音声のフェーダーを上げたままにしていると、声と足した合計が上限を超えやすくなります。
- まず伴奏の音量を下げる。声を上げて伴奏に勝とうとすると、声が割れる方向に行きがちです
- 伴奏を取り込んでいるソースにもリミッターを入れておく
- 曲ごとに音源の大きさが違うので、配信前にセットリストの曲をひと通り鳴らし、メーターを確認しておく
なお、ループバックで伴奏と声を機材の中でまとめてOBSに入れている場合は、マイクのソースに伴奏も含まれています。そこにリミッターをかけると、伴奏が大きい場面で声ごと抑えられるので、伴奏の音量は機材側で下げておきます。
声と伴奏のバランスの決め方そのものは歌枠の機材と音声設定で扱っています。
手順3:聞き返して確かめる
設定が決まったら、OBSの録画で確かめます。フィルタは配信と録画の両方にかかるので、録画の音がリスナーに届く音の目安になります。割れの確認では、次の4つを録って聞き返してください。
- セットリストで張る曲のサビ:割れていないか、リミッターで声が平たくなっていないか
- 雑談中の笑い声や驚いた声:歌より大きくなることがあり、割れやすい場面です
- 伴奏が大きい場面で歌ったところ:合計で割れていないか
- 小さく歌うフレーズ:割れ対策で下げすぎて、小さい声が聞こえにくくなっていないか
聞き返すときは、ヘッドホンに加えて、スマホのスピーカーでも聞いてみると、割れや音量差に気づきやすくなります。録画では割れていないのに配信のアーカイブだけ割れている場合は、OBSの出力設定(音声ビットレートなど)や配信サービス側の処理が関係している可能性もあるので、設定を変えるたびに短いテスト配信で比べてみてください。
また、音割れに見えて、実は音のずれや途切れだったということもあります。声と伴奏がずれて聞こえるときは歌枠の音ズレの直し方を、OBSに入れたプラグインの重さで音が途切れるときはOBSにVSTプラグインを入れる方法の後半を参考にしてください。
リミッターの前段に入れるコンプを、歌枠で語りと歌の音量差をならす目的で設定したいときは、OBSのコンプレッサー設定で数値の目安を紹介しています。
まとめ:リミッターは最後の保険と考える
- 音割れは、割れた場所より後ろで音量を下げても直らない。まず場所を見つける
- ゲインは、機材→PC→OBSの順に、張るフレーズで合わせる
- OBSのリミッターは一覧の最後に。初期値のしきい値-6dB・リリースタイム60msから始める
- リミッターがずっと働いているなら、ゲインの上げすぎ。入り口に戻って下げる
- 伴奏と重なって割れるなら、伴奏を下げる。伴奏のソースにもリミッターを
- 張るサビ・笑い声・伴奏の大きい場面・小さいフレーズを録画して聞き返す
配信の音は、リスナーにとって歌の印象そのものです。割れない土台ができていれば、本番では思いきり張って歌うことに集中できます。



















