録った歌声を聞き返したら思ったより小さい。歌枠で「声が聞こえにくい」と言われた。そんなとき、ついPCの入力音量やマイクブーストを上げたくなりますが、原因がそこにあるとは限りません。音が小さくなっている場所は、マイクの向きから録音ソフトの設定まで、いくつもあるからです。
この記事では、マイクの音が小さいときに音の入口から順番に確かめる方法をまとめます。機材のゲイン、USBマイク本体、パソコンの入力音量とマイクブースト、アプリ側の設定、ダイナミックマイク特有の事情、という順で見ていきます。Windowsの画面の名前は、Microsoft公式サポートで確認できたものをWindows 11の時点の表記で書いています。
Windowsのサウンド設定にある項目そのものの意味(既定の形式や排他モードなど)は、Windowsのサウンド設定の解説で別に整理しています。この記事は「症状から確かめる順番」に絞っています。
結論:入口から順に5か所を確かめる
音は「マイク → 機材 → パソコン → アプリ」の順に流れます。後ろの段で無理に持ち上げると、前の段で入ったノイズも一緒に大きくなるため、入口に近いほうから確かめるのが基本です。
| 順番 | 確かめる場所 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1 | マイクの向き・距離と、機材のゲイン | マイクの正面に声が入っているか。インターフェースのゲインは足りているか |
| 2 | USBマイク本体 | つまみがゲインなのかヘッドホン音量なのか。付属ソフトで入力を下げていないか |
| 3 | パソコンの入力音量 | Windowsの「入力音量」・マイクブースト、Macの「入力音量」 |
| 4 | アプリ側の設定 | OBSや通話アプリの音量、自動で音量を整える機能 |
| 5 | マイクの種類 | 出力の小さいダイナミックマイクで、機材のゲインが足りているか |
最初に「どこで小さいのか」を決めておく
確かめ始める前に、どこで聞いて小さいのかをはっきりさせておくと、早く絞り込めます。
- 録音したファイルが小さい:録音ソフトのメーターがどこまで振れているかを見る。1〜3が中心
- 配信で「聞こえにくい」と言われる:OBSのメーターと、伴奏とのバランスを見る。4も疑う
- 自分のヘッドホンで小さく聞こえるだけ:録音や配信の音量とは別の、モニター音量の問題のことがある
3つ目は見落としやすいところです。ヘッドホンで聞く音量と、録音される音量は別のつまみで決まっていることが多いので、録れたファイルのメーターで判断するようにしましょう。
確認1:マイクの向き・距離と、機材のゲイン
まず確かめたいのは、設定ではなくマイクそのものです。マイクには、どの方向の音を拾いやすいかという性質(指向性)があり、歌の録音でよく使われる単一指向性のマイクは、正面以外からの声を拾いにくく作られています。
- サイドから声を入れるタイプ(横向きに声を入れるコンデンサーマイクに多い)を、上から話しかけていないか
- マイクと口の距離が、録るたびに大きく変わっていないか
- ポップガードを離しすぎて、マイクとの距離が遠くなっていないか
向きと距離を直したうえで、オーディオインターフェースを使っている場合はゲインのつまみを確認します。ゲインは、歌の中で張って大きく出すフレーズを歌いながら、メーターが赤に届かない範囲で合わせるのが基本です。静かなAメロで合わせると、サビで割れやすくなります。合わせ方の手順と目安の数値は録音レベル(ゲイン)設定の記事にまとめています。
確認2:USBマイク本体のつまみと付属ソフト
USBマイクの場合、本体のつまみが何を調整しているのかを、取扱説明書で一度確かめてください。ゲインのつまみに見えて、実はヘッドホンの音量ということがあります。
たとえばRØDEのサポートでは、NT-USB Miniの本体にあるダイヤルはヘッドホンの出力音量を調整するもので、入力のレベルはパソコン(または録音する機器)側で設定すると案内されています。このタイプのマイクでは、本体のダイヤルを回しても録音される音量は変わりません。
ほかにも、次のような点を確かめます。
- 本体にミュートボタンがある場合、半端に押されていないか(ランプの色で分かる機種が多い)
- メーカーの付属ソフトで、入力レベルが下げられていないか
- 付属ソフトに、音量を自動で整える機能があり、それがオンになっていないか
付属ソフトを入れたことがあるなら、録音ソフトとは別に一度開いて、入力レベルや自動調整の設定を確認しておくと安心です。
確認3:パソコンの入力音量とマイクブースト
ここまで問題がなければ、パソコン側の入力音量を見ます。USBマイクは特に、パソコン側の入力音量が録音の音量をそのまま左右することが多いので、ここが原因になりやすい場所です。
Windows 11の「入力音量」
Microsoftのサポートで案内されている手順は次のとおりです。
- 「スタート」→「設定」→「システム」→「サウンド」を開く
- 「入力」で使っているマイクを選び、右側の矢印からプロパティを開く
- 「入力設定」の「テストを開始」を押して普通に話し、「テストの停止」→「再生」で聞き返す
- 必要に応じて「入力音量」のスライダーを調整する
このとき、「入力」で選ばれているのが目的のマイクかどうかも見ておきます。PCやWebカメラの内蔵マイクが選ばれていると、遠くでこもった小さな声になります。
マイクブーストは最後の手段として
マイクブーストは、Windowsのマイクのプロパティにある、入力をさらに持ち上げる項目です。Microsoftのサポートでは、Windows 10向けの手順として、マイクのプロパティの「レベル」タブで「マイク」と「マイク ブースト」のスライダーを調整する方法が案内されています。Windows 11でも、コントロールパネルの「ハードウェアとサウンド」→「サウンド」の「録音」タブから同じプロパティを開けますが、マイクやドライバーによってはマイクブーストの項目自体が表示されません。USBマイクやオーディオインターフェースでは見当たらないことも多いので、ないこと自体は故障ではありません。
注意したいのは、ブーストは声と一緒に部屋の雑音やマイクのノイズも持ち上げることです。歌の録音では、まず確認1・2で入口の音量を確保し、それでも足りない場合だけ少しずつ試すのが無難です。ヘッドセットで録る場合の注意はヘッドセットで歌ってみたを録る記事でも触れています。
Macの場合
Appleのサポートでは、「システム設定」→「サウンド」→「入力」で使うデバイスを選び、「入力音量」のスライダーで調整する手順が案内されています。入力音量を調整して、音源の音量が大きすぎたり小さすぎたりするのを補正できる、という位置づけです。Macにはマイクブーストにあたる項目はないため、足りない分は機材側のゲインで補います。
確認4:OBS・通話アプリなど、アプリ側の設定
録音ソフトや配信ソフト、通話アプリにも、それぞれ音量の目盛りがあります。パソコン側で十分な音量が来ていても、アプリの中で下げていれば小さくなります。
- OBS:音声ミキサーでマイクのメーターが動いているか、フェーダーが下がっていないか。メーターが動かないなら、ソースのデバイスが別のマイクになっていないか
- 通話アプリ:入力デバイスが目的のマイクか、入力音量が下がっていないか。音量を自動で調整する機能がある場合、声の大小に合わせて上下していないか
- 録音ソフト:入力のチャンネルが合っているか(インターフェースの入力1に挿しているのに入力2を録っている、など)
Windowsには、機器によってノイズ抑制などの自動処理(オーディオ機能拡張)がかかっている場合もあります。Microsoftのサポートでは、入力デバイスのプロパティから「その他のデバイスのプロパティ」を開き、「拡張機能」タブまたは「詳細設定」タブで機能拡張をオフにする手順が案内されています。声が途切れたり、急に小さくなったりするときは試してみてください。
歌枠で「声が小さい」と言われたときは、伴奏とのバランスの問題であることも多いです。配信の確認手順は歌枠の機材・音声設定の記事にまとめています。また、アプリ側で大きく持ち上げると今度は割れやすくなるため、上げすぎたときの対処は配信の音割れ対策も参考にしてください。
確認5:ダイナミックマイクで、機材のゲインが足りないとき
ここまで確かめても小さい場合、マイクの種類による事情かもしれません。ダイナミックマイクはコンデンサーマイクに比べて出力が小さめのものが多く、なかには機材のゲインをかなり上げないと十分な音量にならない機種があります。
たとえばShureは、ダイナミックマイクのSM7Bについて、60dB以上のゲインがあるマイクプリアンプを使うよう案内しています。オーディオインターフェースの最大ゲインは機種によって違うため、ゲインのつまみをほぼ上げきっても小さいときは、仕様表で最大ゲインを確かめてみてください。
足りないときの選択肢は、おおむね次の3つです。
- マイクに少し近づいて歌う(近づくと低音が強くなる性質があるので、聞き比べながら)
- マイクとインターフェースの間に入れて音量を足す、小型のマイクプリアンプを使う(多くはファンタム電源で動く)
- 最大ゲインの大きいインターフェースを検討する
いずれも、機材のゲインを使い切る前にパソコン側のブーストで補おうとしないことがポイントです。入口の音量が足りないまま後ろで持ち上げると、ノイズも一緒に大きくなります。
歌枠で「話すと小さい、歌うと大きい」と言われたとき
歌枠では、曲の合間に話す時間と、伴奏に合わせて歌う時間が交互に来ます。ゲインを歌に合わせると雑談の声が小さく聞こえ、話し声に合わせると今度は歌い出しで大きくなりすぎる。リスナーに「トークのときだけ聞こえにくい」と言われるのは、この差が原因のことがあります。
話し声と歌声では、出る音量の幅が大きく違います。歌に合わせたゲインを基準にして、話すときの声のほうを寄せていくと、割れを防ぎながら差を縮めやすくなります。
| やり方 | 内容 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 話すときはマイクに近づく | ゲインは歌に合わせたまま、トークの間だけ口をマイクに寄せる | 近づくと低音が強くなるので、録画で聞き比べる |
| OBSのフィルタで大きい音を抑える | マイクのソースに「コンプレッサー」や「リミッター」を追加する | 強くかけすぎると、歌の強弱まで平らに聞こえる |
| 伴奏の音量を曲ごとに見直す | 声ではなく伴奏側を下げて、歌の時間の大きさをそろえる | 音源によって、もともとの大きさが違う |
OBS公式ナレッジベースでは、コンプレッサーは設定したしきい値を超える音量を抑えるフィルタ、リミッターは音割れを防ぐためのフィルタとして案内されています。
本番の前に、「雑談30秒→1コーラス→雑談30秒」の流れで録画し、スマホとイヤホンで聞き返してみてください。話す部分と歌う部分の大きさの差が、リスナー側でどう聞こえるかを一度で確かめられます。
まとめ:後ろで持ち上げる前に、入口を確かめる
マイクの音が小さいときは、次の順番で確かめると原因を絞り込みやすくなります。
- マイクの向き・距離と、機材のゲイン
- USBマイク本体のつまみと付属ソフト
- パソコンの入力音量(Windowsはマイクブーストも)
- OBS・通話アプリ・録音ソフトの音量と自動調整
- ダイナミックマイクなら、機材の最大ゲイン
どこを変えたかを1つずつメモしながら進めると、直ったときに原因が分かり、次に同じことが起きても迷わずに済みます。設定を触る前に、まずは「どこで聞いて小さいのか」を決めるところから始めてみてください。



















