パソコンで流している伴奏やBGMを録音したい、配信に乗せたい。そう思って調べると、よく出てくるのが「ステレオミキサー」です。ところが、録音デバイスの一覧を開いても見当たらない、有効にしたのに自分の声が入らない、といったところでつまずく方が少なくありません。
この記事では、Windowsの録音デバイスとしてのステレオミキサーが何をしているのか、どこで有効にするのか、なぜ表示されないパソコンがあるのかを整理します。あわせて、ステレオミキサーがなくても使える方法と、オーディオインターフェースのループバックとの違いもまとめます。画面の名前と手順は、Microsoft公式の資料で確認できた範囲で、Windows 11の時点の表記で書いています。
ステレオミキサーは、パソコンに入っているサウンド機能(とそのドライバー)に左右される機能です。機種によって表示や動きが違うため、ここでは一般的な仕組みと確かめ方に絞って説明します。
結論早見表:パソコンの音を取り込む4つの方法
先に、パソコンで鳴っている音を録音・配信に取り込む方法を並べておきます。ステレオミキサーは、そのうちの1つにすぎません。
| 方法 | 何を取り込むか | 必要なもの | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ステレオミキサー | パソコンで再生中の音をまとめて | 対応したサウンド機能とドライバー | 表示されない機種がある。自分の声は入らない |
| OBSのデスクトップ音声(音声出力キャプチャ) | 選んだ再生デバイスで鳴っている音 | OBS | 通知音など、同じ機器で鳴る音もすべて入る |
| OBSのアプリケーション音声キャプチャ | 選んだアプリの音だけ | OBSと、対応するWindowsのバージョン | アプリごとに追加する必要がある |
| 機材のループバック | パソコンの音を、オーディオインターフェースやミキサーの中で入力側に戻したもの | ループバック機能のある機材 | 設定によって声と伴奏が二重になりやすい |
歌枠で伴奏を配信に乗せるだけなら、ステレオミキサーがなくても困らないことがほとんどです。「ステレオミキサーが見つからない」と悩む前に、自分がしたいことに合う方法はどれかを先に決めておくと遠回りせずに済みます。
ステレオミキサーの仕組み:再生中の音を「録音デバイス」として見せる
ステレオミキサーは、パソコンで再生している音(スピーカーやヘッドホンへ送っている音)を、マイクと同じ「録音デバイス」として取り出せるようにしたものです。録音ソフトから見ると、マイクの一覧の中に「ステレオミキサー」という入力が1つ増えたように見えます。
Microsoftの開発者向けの資料では、これをハードウェアのループバック デバイスと呼び、一部のハードウェアベンダーがオーディオアダプターに実装しているものだと説明しています。また、名前はベンダーによって異なり、「ステレオ ミックス」「ウェーブアウト ミックス」「混合出力」などの例が挙げられています。日本語のWindowsでは「ステレオ ミキサー」と表示されることが多いものの、別の名前になっている場合もあると覚えておくと、一覧の中で見つけやすくなります。
自分の声は入らない
ステレオミキサーが取り込むのは、パソコンが再生している音です。マイクの声は「入力」なので、ふつうは再生される音には含まれません。そのため、ステレオミキサーだけを録音しても、伴奏は録れて声は入らない、ということになります。
声と伴奏の両方を残したいときは、マイクとステレオミキサーを別々の入力として扱える録音ソフトや配信ソフトで、2つを同時に取り込みます。歌ってみたの録音なら、そもそも声だけを録って伴奏はあとで重ねるほうが、MIXで扱いやすくなります。
保護されたコンテンツは録れないことがある
Microsoftの資料では、信頼されたオーディオドライバーは、ループバック デバイスで保護されたコンテンツ(著作権保護の仕組みがかかったデジタルの音声)を取り込ませないと説明されています。再生アプリや配信サービスによっては、ステレオミキサーに音が来ないことがあるのはこのためです。
ステレオミキサーを有効にする場所(Windows 11時点)
ステレオミキサーは、初めは無効になっていて一覧に出てこないことがあります。Microsoftの資料で案内されている手順は次のとおりです。
- コントロールパネルの「サウンド」を開く(タスクバーの検索ボックスに「コントロール パネル」と入力 →「ハードウェアとサウンド」→「サウンド」。コマンドで「control mmsys.cpl」と入力しても開けます)
- 「録音」タブを開き、一覧の何もないところを右クリックして「無効なデバイスを表示する」にチェックが入っているか確かめる
- 一覧にステレオミキサー(またはそれにあたる名前の機器)が出てきたら、右クリックして「有効」を選ぶ
- 既定の録音デバイスにしたい場合は、右クリックして「既定のデバイスとして設定」を選ぶ
4の「既定のデバイス」にするかどうかは、慎重に決めてください。既定の録音デバイスをステレオミキサーにすると、マイクを「既定」で使っているアプリ(通話アプリなど)が、マイクの代わりにパソコンの音を拾ってしまうことがあります。既定はマイクのままにして、録音ソフトや配信ソフトの中でステレオミキサーを選ぶほうが、ほかのアプリへの影響が少なく済みます。既定のデバイスの考え方は、Windowsのサウンド設定の解説で詳しく扱っています。
また、ステレオミキサーはパソコン本体のサウンド機能の一部です。USB接続のオーディオインターフェースやUSBマイクで聴いている場合、再生している音がパソコン本体のサウンド機能を通らないため、ステレオミキサーを有効にしても音が来ないことがあります。
表示されない理由と、確かめておきたいこと
「無効なデバイスを表示する」にしても一覧に出てこない場合、そのパソコンにはステレオミキサーがそもそも用意されていない可能性があります。Microsoftの資料でも、すべてのオーディオアダプターにループバック デバイスがあるわけではない、と書かれています。ステレオミキサーがあるかどうかは、パソコンに入っているサウンド機能と、それを動かすドライバー次第です。
確かめておきたいのは次の2つです。
- ドライバーの状態:Microsoftのサポートでは、デバイス マネージャーの「サウンド、ビデオ、およびゲーム コントローラー」から機器を右クリックしてドライバーを更新する方法と、見つからない場合はデバイスの製造元のWebサイトでドライバーを探す方法が案内されています。パソコンのメーカーが配布しているドライバーで扱いが変わることもあるので、型番でサポートページを確認してみてください
- メーカーの案内:ステレオミキサーに対応しているかどうかは機種ごとに違います。パソコンのメーカーのサポートページに記載がないかを確かめます
それでも出てこない場合は、ステレオミキサーにこだわらず、次の章の方法に切り替えるのが現実的です。
ステレオミキサーがなくても使える方法
Microsoftの資料によると、Windowsには、オーディオ機器にループバック デバイスがあるかどうかや、それを有効にしているかどうかに関係なく、再生中の音を取り込める仕組み(WASAPIのループバック録音)が用意されています。ソフトがこの仕組みに対応していれば、ステレオミキサーがない機種でもパソコンの音を取り込めます。
OBSのデスクトップ音声・音声出力キャプチャ
OBSで歌枠をするなら、まず候補になるのがデスクトップ音声(音声出力キャプチャ)です。再生デバイスを選ぶと、その機器で鳴っている音が配信に乗ります。ステレオミキサーを有効にする必要はありません。ただし、同じ機器で鳴る通知音なども一緒に入るため、配信中は通知を切っておくと安心です。
アプリ単位で取り込む方法
伴奏のプレイヤーの音だけを乗せたい、通話アプリの音は配信に乗せたくない、という場合は、OBSのアプリケーション音声キャプチャのように、アプリを選んで取り込む方法もあります。対応するOSのバージョンなどの条件があるため、使う前にOBSの公式情報で確認してください。
機材のループバック
オーディオインターフェースや配信用ミキサーには、パソコンの音を機材の中で入力側に戻すループバック機能を持つものがあります。ステレオミキサーがパソコン本体のサウンド機能の中で音を戻すのに対して、こちらは機材の中で戻す仕組みです。配信ソフトから見ると、マイクと同じ機材から伴奏も届く形になります。仕組みと注意点はループバック機能の解説に、機材を選ぶ段階なら歌枠用ミキサーの選び方にまとめています。
歌ってみた・歌枠で使うときの注意
同じ音を2つの経路で取り込まない
ステレオミキサーとOBSのデスクトップ音声、あるいは機材のループバックを同時に使うと、同じ伴奏が2つの経路から配信に乗り、音が大きくなったり、わずかにずれて二重に聞こえたりします。音が二重に聞こえるときは、パソコンの音を取り込んでいる経路をすべて書き出し、1つだけ残すのが近道です。配信の音声設定の全体像は歌枠の機材・音声設定の記事も参考にしてください。
録音は声だけにしておく
歌ってみたの録音では、ステレオミキサーで伴奏ごと録るより、マイクの声だけを録ってあとで伴奏と合わせるほうが、音量のバランスやタイミングを直しやすくなります。ステレオミキサーは、配信や、パソコンで鳴っている音を確認用に残したいときの手段と考えておくと使い分けやすいです。
録れることと、使ってよいことは別
パソコンで鳴っている音は技術的には録れても、それを配信や投稿に使ってよいかは別の問題です。伴奏音源やBGMの使い方は、音源ごとの利用条件を確かめてください。考え方は歌ってみたと著作権の記事にまとめています。
MacにはWindowsのステレオミキサーにあたる機能が標準ではありません。Macでパソコンの音を配信に乗せる方法は、MacでPCの音を配信に乗せる方法で整理しています。
OBS以外のソフトにもパソコンの音を渡したいならステレオミキサー、OBSで伴奏のプレイヤーなど1つのアプリの音だけを乗せたいならアプリケーション音声キャプチャ、と分けて考えると選びやすくなります。後者の設定手順はOBSのアプリケーション音声キャプチャの使い方で紹介しています。
ステレオミキサーは「あれば使える」選択肢の1つ
- ステレオミキサーは、パソコンで再生中の音を録音デバイスとして見せる機能。自分の声は入らない
- 有効にするのはコントロールパネルの「サウンド」→「録音」タブ。既定のデバイスにするかは慎重に
- 表示されないのは、サウンド機能やドライバーが対応していないことが多い。ドライバーとメーカーの案内を確かめる
- ステレオミキサーがなくても、OBSのデスクトップ音声やアプリ単位の取り込み、機材のループバックで代わりになる
- 同じ音を2つの経路で取り込まないように、経路は1つに絞る
「見つからない」と感じたら、まず自分がしたいこと(配信に伴奏を乗せたいのか、パソコンの音を録りたいのか)を決め、それに合う方法を選んでみてください。



















