毎日のように歌っていると、マイクの先端の網(グリル)がくもって見えたり、ポップガードに白い跡が残っていたりします。掃除したほうがよさそうだけれど、水で洗ってよいのか、除菌スプレーをかけてよいのか、間違えて壊したらどうしよう、と手が止まってしまう人も多いはずです。
この記事では、マイクまわりの掃除のしかたを、部位ごとに整理します。手順は、マイクやヘッドホンのメーカーが公式に案内しているお手入れ方法で確認できた内容だけを書いています。メーカーや機種によって案内が違う点は、その都度「取扱説明書に従う」としています。
しまい方や湿気対策はマイクの保管方法、買い替えの目安はマイクの寿命の目安で扱っています。この記事は「汚れたときにどう掃除するか」に絞っています。
結論:部位ごとに、拭く・洗う・触らないを分ける
マイクまわりの掃除は、部位によってやってよいことが変わります。まずは全体像です。
| 部位 | 基本の手入れ | 避けたいこと |
|---|---|---|
| マイク本体の外側 | 乾いた柔らかい布で拭く | 液体をかける、溶剤で拭く |
| 外せるグリル | 本体から外して洗い、完全に乾かす | 濡れたまま取り付ける |
| 外せないグリル | 乾いた柔らかい布で表面を拭く | 水や洗浄液を染み込ませる |
| マイクユニット(中の部品) | 掃除しない・触らない | 手や道具で触れる |
| スポンジ・ポップガード | 洗える製品は洗って、完全に乾かす | 石けんを残す、生乾きで使う |
| ケーブル・プラグ | 汗や汚れは使用後すぐに乾いた布で拭く | 汚れたまま放置する |
| ヘッドホン | 乾いた柔らかい布で拭き、常温で乾かす | アルコール・シンナー・ベンジン |
始める前に、取扱説明書を開く
お手入れの案内は、メーカーによって違います。たとえばShureは公式サイトで、グリルを水やイソプロピルアルコールで洗う方法を案内しています。一方、オーディオテクニカのマイクの取扱説明書には、お手入れの際にアルコールやシンナーなどの溶剤類は使わないよう書かれています。
同じ「マイクの掃除」でも、使ってよいものが逆になることがあるわけです。自分のマイクの型番で、取扱説明書かメーカーのサポートページを確かめてから始めてください。説明書をなくした場合も、多くのメーカーは公式サイトで公開しています。
マイク本体とグリルの掃除
本体の外側は乾いた布で
オーディオテクニカの取扱説明書では、本体の汚れは乾いた布で拭くよう案内されています。歌ったあとは、口が近づいていた先端まわりとスタンドに触れる部分を軽く拭いておくだけでも、汚れがこびりつきにくくなります。
Shureの案内では、本体を拭く場合も柔らかい布に最小限の洗浄剤を含ませ、製品を濡らしすぎないこと、マイクの先端部分に洗浄剤を直接つけないことが挙げられています。スプレーを本体に直接吹きかけるのは避け、布に含ませてから拭く形にします。
グリルが外せるマイク
手で持つタイプのダイナミックマイクには、先端のグリルを回して外せるものがあります。Shureが公式に案内しているグリルの掃除の流れは次のとおりです。
- グリルをマイクから慎重に外す
- 内側のスポンジ(フォーム)が外せる場合は外す。接着されていて外れない場合は、付けたまま洗う
- 毛先の柔らかい歯ブラシを使い、水またはイソプロピルアルコールで洗う
- 中性洗剤を薄めて使うのは、内側のスポンジを外せた場合だけにする(外せないと洗剤が残りやすいため)
- 余分な水分を取り、完全に乾かしてからマイクに取り付ける
Shureは、マイクユニット(グリルの内側にある音を拾う部分)そのものは掃除しないとしています。グリルを外したときに見える部分には、手や道具で触れないようにしてください。
また、掃除のあとに音が以前より小さく感じる場合は、内部に水分が入って乾ききっていない可能性があるとされています。その場合はマイクを外して、十分に乾かしてから使うよう案内されています。
グリルが外せないマイク
コンデンサーマイクやUSBマイクには、グリルが本体と一体になっていて外せないものが多くあります。この場合は、乾いた柔らかい布で表面を拭く程度にとどめます。液体を使ってよいかどうかは、機種の取扱説明書の案内に従ってください。
コンデンサーマイクで気をつけること
コンデンサーマイクは感度が高く、湿気に弱いとされています。グリルが外せない機種が多いので、上の「外せないグリル」の手入れにとどめ、網目の中に物を入れたり、濡れた布でこすったりしないようにしてください。先ほどのとおり、Shureもマイクユニットそのものは掃除しないとしています。
RØDEは、コンデンサーマイクをしまう前の手入れとして、イソプロピルアルコールを先にマイクロファイバーの布に含ませ、外側だけを軽く拭く(マイクに直接スプレーしない)方法を案内しています。湿度の高い地域では、ケースにシリカゲル(乾燥剤)を入れることも勧めています。ただし、前に書いたとおりアルコールを使わないよう案内しているメーカーもあるので、使ってよい液体は機種の案内に従ってください。
そもそも汚れを付けにくくするには、歌うときにポップガードを使うのが現実的です。ポップガードには唾や湿気がマイクに直接かかるのを防ぐ役割もあります。選び方はポップガードの選び方で解説しています。
スポンジ・ポップガードの手入れ
かぶせるスポンジ(ウインドスクリーン)
マイクにかぶせるスポンジについて、Shureはぬるま湯で洗い、石けんや液体洗剤は使わないよう案内しています。スポンジ状なので、洗剤を使うとすすぎきれなくなるおそれがあるためです。洗ったら水気を取り、完全に乾かしてから戻します。
スポンジは使っているうちに硬くなったり、ぼろぼろになったりします。色落ちや傷みが目立ってきたら、交換を考える時期です。
ポップガード
ポップガードは唾を受け止める道具なので、思っている以上に汚れます。水洗いできるかどうかは素材と製品によって違います。
- 金属製:水洗いできると案内している製品があります。洗った場合は水気を拭き取り、よく乾かしてから取り付けます
- 布(ナイロン)製:洗えない製品もあります。洗えないものは、汚れや臭いが出てきたら交換を考えます
どちらの場合も、洗ってよいか、どこまで外せるかは製品の取扱説明の案内に従ってください。クランプやアームの部分は、ぬらさずに乾いた布で拭くだけにしておくと安心です。
ケーブルと端子の手入れ
見落としやすいのが、ケーブルとプラグです。オーディオテクニカの取扱説明書では、次のように案内されています。
- ケーブルが汗などで汚れた場合は、使用後すぐに乾いた布で拭く。汚れたまま使うと、ケーブルが劣化して固くなり、故障の原因になる
- プラグが汚れた場合は乾いた布で拭く。汚れたまま使うと、音とびや雑音が入ることがある
- 長く使わないときは、高温多湿を避け、風通しのよい場所に保管する
録音中に「ガサッ」という雑音が入るときは、端子の汚れやゆるみが関係していることもあります。拭いてから挿し直し、それでも続くようならケーブルを替えて確かめてみてください。ケーブルのしまい方はマイクケーブルの巻き方にまとめています。
スプレー・水分で避けたいこと
Shureは公式のお手入れの案内で、製品に使わないものとして次を挙げています。
- 漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)
- 過酸化水素水(オキシドール)
- 手指用の除菌商品
- 研磨剤(スクラブ入りのもの、研磨パッドなど)
あわせて、液体に浸けないこと、透明なプラスチック部品はアルコールで拭かないことも挙げられています。
消毒・除菌について
マイクを消毒したいという声は多いのですが、Shureは公式サイトで、ウイルスの感染防止に有効な除菌方法については助言できないとし、疾病管理の専門家に問い合わせるよう案内しています。また、掲載しているのは一般的なお手入れの情報で、製品に傷みが出ないと約束するものではないとしています。
この記事でも、消毒や除菌がどこまで役に立つかは扱いません。除菌用の製品を使いたい場合は、その製品をマイクに使ってよいかを、マイクのメーカーの案内で確かめてからにしてください。複数の人で同じマイクを使う場面では、自分用のスポンジを持っていくなど、マイクに直接触れる部分を分ける方法もあります。
ヘッドホンの拭き方
録音や歌枠で長く着けるヘッドホンも、汗や皮脂で汚れます。ソニーの公式のお手入れページでは、ヘッドホンの耳に当たる部分(イヤーパッド)について次のように案内されています。
- 乾いた柔らかい布で汚れを拭き取る
- 拭いたあとは、常温で十分に乾かす
- シンナー・ベンジン・アルコール(アルコール入りのウェットティッシュを含む)は使わない。表面の傷みや劣化の原因になる
- 強くこすったり、爪などではがそうとしたりしない(変形のおそれ)
- プラグが汚れると雑音や音とびの原因になることがあるので、ときどき乾いた柔らかい布で拭く
オーディオテクニカの取扱説明書にも、イヤーパッドやヘッドバンドは乾いた布で拭くこと、汗や水が付くと色落ちする場合があるので、乾いた布で拭き取って陰干しするとよいことが書かれています。
パッドの表面がはがれてきた、へたって耳が当たる、といった場合は、掃除ではなく交換を考える段階です。交換の目安はヘッドホンのイヤーパッド交換で解説しています。
歌ってみたを録っている期間に掃除するときの段取り
1曲を何日かに分けて録る、あとから一部だけ録り直す、という進め方をしていると、掃除のタイミングで困ることがあります。たとえば、2日目の録音の前にスポンジを洗って外したまま録ったら、1日目のテイクと声の質感が少し違って聞こえ、つなぎ目が気になる。洗ったばかりのグリルを付けたら、前日より音が小さく感じる。どちらも、録っている途中でマイクまわりの状態が変わったことで起きやすい場面です。
スポンジやポップガードの有無・距離によって、声の聞こえ方は少し変わることがあります。同じ曲のテイクは、できるだけ同じ状態で録りそろえるのが基本です。
| 時期 | してよい手入れ | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 1曲を録っている途中 | 乾いた布で外側を拭く程度 | スポンジやグリルを洗う・外す、ポップガードの位置を変える |
| 1曲を録り終えたあと | スポンジやグリルを洗い、時間をかけて乾かす | 乾ききる前に次の曲の録音を始める |
| 歌枠や録音の前日まで | 洗う手入れはここまでに済ませる | 当日の直前に洗って、湿ったまま使う |
録り直しが入りそうな曲では、録音を始める前に、マイクとポップガードの位置をスマホで撮っておくと、日をまたいでも同じ距離に戻しやすくなります。掃除で外した部品を戻したときも、その写真と見比べてから録り始めると安心です。
まとめ:説明書を確かめて、乾かしてから戻す
マイクまわりの掃除で押さえておきたいことを振り返ります。
- 始める前に、自分の機種の取扱説明書でお手入れの方法を確かめる(メーカーによって使ってよいものが違う)
- 本体の外側は乾いた柔らかい布で拭く。スプレーは本体に直接かけない
- 外せるグリルは外して洗い、完全に乾かしてから戻す。マイクユニットには触れない
- 外せないグリルは、ほこりを払う程度にとどめる
- スポンジは洗剤を使わずぬるま湯で。ケーブルとプラグは汗をすぐに拭く
- ヘッドホンはアルコールを使わず、乾いた布で拭いて常温で乾かす
歌い終わったあとに1分だけ拭く習慣をつけておくと、大がかりな掃除をする回数も減らせます。迷ったときは無理をせず、購入店やメーカーの窓口に相談してください。



















