「ボカロ曲を歌ってみたいけれど、どれが定番なのかわからない」——ボカロは2007年から積み上げられてきた歴史の長いジャンルです。曲数が膨大なうえに世代ごとの流行もあるため、後から入った人ほど「まず押さえるべき曲」が見えにくくなっています。
歌ってみたを投稿するうえで、定番曲を知っておく価値は小さくありません。曲名を見ただけで内容が伝わる曲は、それだけで動画を開いてもらいやすくなります。参考にできる先行の投稿が多く、オフボーカル音源や譜面といった情報も集まりやすいという実務的な利点もあります。
この記事では、選定の基準を先に示したうえで、2007年の黎明期から近年の代表曲まで15曲を年代順に紹介します。それぞれ「どんな曲調か」と「歌ってみたで扱うときのポイント」をあわせてまとめました。
この記事の選定基準
「定番」は主観で決めやすい言葉なので、この記事では次の3点をすべて満たす曲を選びました。順位づけはしておらず、年代順に並べています。
- 知名度:ボカロを深く追っていない層にも曲名が知られており、カラオケや各種メディアで取り上げられてきた曲
- 歌ってみたでの実績:発表から現在に至るまで、多数のカバー投稿が継続して行われている曲
- 年代の分散:特定の時期に偏らないよう、黎明期・全盛期・近年から幅広く選出
なお、再生回数や順位は時期によって変動するため、この記事では数値そのものを比較の根拠にはしていません。年の表記は原曲が発表された年で、2026年9月時点で確認できた情報に基づいています。
定番ボカロ曲おすすめ15選 早見表
| 曲名 | ボカロP | 年 | 歌ってみた視点でのポイント |
|---|---|---|---|
| みくみくにしてあげる♪ | ika_mo(鶴田加茂) | 2007 | テンポは軽快。音域は狭めで通しやすい |
| メルト | ryo(supercell) | 2007 | サビが高め。キー調整の判断が必要 |
| 初音ミクの消失 | cosMo@暴走P | 2008 | 超高速の早口。難易度はかなり高い |
| ワールドイズマイン | ryo(supercell) | 2008 | 表情の切り替えが要。音域は広め |
| Just Be Friends | Dixie Flatline | 2009 | 低音から高音まで使う。音域の幅が広い |
| ロミオとシンデレラ | doriko | 2009 | 跳ねたリズム。抑揚のつけ方が肝 |
| magnet | minato | 2009 | デュエット定番。コラボ企画に向く |
| ローリンガール | wowaka | 2010 | 高速かつ言葉数が多い。息継ぎ設計が必須 |
| マトリョシカ | ハチ | 2010 | 変則的な譜割り。リズム把握に時間がかかる |
| 千本桜 | 黒うさP | 2011 | 速いが譜割りは規則的。パターンを覚えれば通る |
| 六兆年と一夜物語 | kemu | 2012 | 高速ロック。高音の連続で体力を使う |
| 夜咄ディセイブ | じん(自然の敵P) | 2013 | 早口とラップ的な処理が混在 |
| シャルル | バルーン | 2016 | ミドルテンポ。カバー数が非常に多い |
| 砂の惑星 | ハチ | 2017 | 言葉の詰め方が独特。リズム重視 |
| メズマライザー | サツキ | 2024 | 高速・高音域。近年を代表するカバー多発曲 |
黎明期の定番曲(2007〜2009年)
初音ミクの発売直後から、ボカロが一般層にも知られるようになるまでの時期です。この頃の曲は現在でもカラオケで歌われ続けており、世代を問わず通じる強みがあります。
みくみくにしてあげる♪【してやんよ】/ika_mo(鶴田加茂)
2007年発表。初音ミク発売からまもない時期に投稿され、ボカロというジャンルそのものを広く知らせるきっかけになった1曲です。ミク自身をモチーフにした、明るくテンポの良いポップスとして知られています。
歌ってみたのポイントは、音域が狭めでキーを合わせやすいこと。難所は少ない反面、曲の軽さを保ったまま歌う必要があるため、力を抜いた発声のほうが原曲の雰囲気に近づきます。
メルト/ryo(supercell)
2007年発表。ボカロが「キャラクターの曲」から「歌モノ」として受け止められる流れを作った楽曲とされ、当時の反響は「メルトショック」という呼び方で語られています。歌ってみた文化そのものを押し広げた1曲でもあります。
サビの音域が高めに設定されているため、原曲キーで通せるかを事前に確認するのが現実的です。キーを下げても曲の良さは損なわれにくいので、無理に張り上げずに調整する判断をおすすめします。
初音ミクの消失/cosMo@暴走P
2008年に現在広く知られるロングバージョンが発表されました(これより前の2007年に、アレンジの異なるショート版が公開されています)。人間が歌うことを前提としない速度の早口が特徴で、ボカロの技術的な限界を押し広げた作品として位置づけられています。
歌ってみたとしては難易度が非常に高く、初心者向けではありません。挑戦する場合は全曲をいきなり通そうとせず、区間を分けて練習する方法が現実的です。同系統の難曲は歌いごたえのある難しいボカロ曲でも扱っています。
ワールドイズマイン/ryo(supercell)
2008年発表。強い個性を前面に出したキャラクターソングとして、ミク曲の代表格に長く挙げられ続けています。
難所は、可愛らしい部分と強く出る部分の落差です。声色を切り替えようとして音程が不安定になりやすいので、まずは一定の発声で通してから表情を足していくと組み立てやすくなります。
Just Be Friends/Dixie Flatline
2009年発表。別れをテーマにしたミドルテンポのダンスポップで、巡音ルカ曲の代表作として知られています。歌ってみたのカバー数も非常に多い1曲です。
低い語りのようなパートから高いサビまで、使う音域の幅が広いのが特徴です。キーを下げると低音が沈み、上げるとサビが苦しくなるため、両端を確認したうえでキーを決める必要があります。曲の音域の調べ方を使うと判断しやすくなります。
ロミオとシンデレラ/doriko
2009年発表。童話をモチーフにした跳ねたリズムのポップスで、カラオケでも定番として定着しています。
歌ってみたのポイントは、リズムの跳ね方を崩さないこと。音を平坦に置くと曲の魅力が薄れるため、休符を意識して短く切る箇所を作ると、原曲の軽快さが出やすくなります。
全盛期の定番曲(2010〜2013年)
ボカロ曲の投稿数と歌ってみた文化が同時に拡大した時期です。速い曲・言葉数の多い曲が主流になり、現在の「ボカロは難しい」というイメージの多くはこの世代の曲から来ています。
magnet/minato
2009年発表ですが、デュエット曲の定番としてこの後の時代まで歌い継がれてきた楽曲のため、この区分で紹介します。2つのボーカルが絡み合う構成で、コラボ企画の題材として選ばれることの多い楽曲です。
1人で歌う場合は、両パートを録って重ねる形が一般的です。パートごとに声質を変えすぎると不自然になりやすいので、音量と定位で差をつけるほうがまとまります。
ローリンガール/wowaka
2010年発表。高速かつ言葉数の多い、いわゆる「wowaka系」の代表曲です。この曲以降、速い曲がボカロの主流の一つになったとされています。
難所は息継ぎです。譜面上の休符が短いため、どこで吸うかを事前に決めておかないと途中で息が尽きます。歌詞を書き出してブレス位置に印をつける準備が有効です。
マトリョシカ/ハチ
2010年発表。独特のリズムとコード進行で強い印象を残した楽曲で、ハチさん(米津玄師さん)の代表作の一つに挙げられます。
譜割りが変則的で、耳コピだけでリズムを把握するのは時間がかかります。原曲を細かく区切って繰り返し確認するか、譜面を参照する進め方が確実です。
千本桜/黒うさP
2011年発表。和のモチーフと疾走感を組み合わせた楽曲で、ボカロを知らない層にまで広く届いた曲として知られています。テレビやイベントで取り上げられる機会も多く、広く知られている曲です。
テンポは速いものの、譜割りのパターンは比較的規則的です。1つのパターンを覚えると同じ形が繰り返されるため、練習量に対して手応えを得やすい曲といえます。
六兆年と一夜物語/kemu
2012年発表。高速のロックサウンドに物語性のある構成を組み合わせた楽曲で、kemuさんの代表作として挙げられます。
高めの音が連続するため、体力を使う曲です。原曲キーにこだわらず、サビを最後まで保てる高さに調整するほうが、通して聴いたときの完成度は上がります。
夜咄ディセイブ/じん(自然の敵P)
2013年発表。カゲロウプロジェクトの楽曲として、シリーズ全体の人気とともに広く知られるようになりました。
早口のパートと、語るように処理するパートが混在しているのが特徴です。すべてをメロディとして歌おうとせず、リズムに乗せて言葉を置く箇所を切り分けると扱いやすくなります。
近年の新しい定番曲(2016年〜)
ニコニコ動画中心だった時代から、YouTubeやTikTok、音楽ゲームを入り口とする層へと広がった時期の曲です。新しい世代にとっては、こちらが「最初に知ったボカロ曲」であることも珍しくありません。
シャルル/バルーン
2016年発表。v flowerによる原曲が投稿されたのち、同じ年にバルーンさん本人の歌唱によるセルフカバーも公開されました(のちに須田景凪さん名義でも活動されています)。歌ってみたでもよく取り上げられている楽曲です。
ミドルテンポで極端な早口はありませんが、サビで高い音が続くためキーの設定が重要です。カバーが多いぶん比較されやすい曲でもあるので、原曲の再現より自分の声に合う表現を優先するほうが結果的に聴きやすくなります。
砂の惑星/ハチ
2017年発表。初音ミク10周年に合わせて公開された楽曲で、ボカロシーンそのものを題材にした内容が話題になりました。
言葉の詰め方が独特で、メロディよりリズムの再現が難易度を左右します。テンポに対して言葉が前後する箇所があるため、伴奏に対してどこに置くかを意識しながら練習すると精度が上がります。
メズマライザー/サツキ
2024年発表。カバーや二次創作が大きく広がった1曲で、歌ってみたはもちろん踊ってみたやイラストなど多方面に展開しました。ポップな曲調と、少し不穏さのある世界観の対比が特徴です。
高速かつ高音域寄りで、歌唱としての難易度は高めです。2つのボーカルが掛け合う構成のため、1人で歌うか2人でパートを分けるかを最初に決めておくと、録音の設計がしやすくなります。
定番曲を歌ってみたで扱うときの注意点
知名度の高い曲は再生されやすい一方で、投稿数も多くなります。埋もれないための考え方と、実務面の確認事項を整理しておきます。
- 比較されることを前提に組み立てる:定番曲は聴き手の中に基準があります。原曲や有名なカバーの完全再現を狙うより、キーやアレンジを自分に合わせて調整するほうが、聴きやすさで評価されやすくなります。
- キーは声に合わせて決める:定番曲ほど原曲キーで歌わなければという意識が働きがちですが、苦しそうな歌唱は最後まで聴かれにくくなります。自分に合うキーの見つけ方を参考に、無理のない高さを選んでください。
- 音源と権利の確認を先に済ませる:オフボーカル音源の配布状況や利用条件は曲ごとに異なります。投稿サイトのルールとあわせて、歌ってみたと著作権の基礎知識で全体像を確認しておくと安心です。
15曲の原曲ボーカルと公開日(VocaDBで照合)
早見表ではボカロPと発表年を紹介しましたが、原曲をどのボーカロイドが歌っているかも、歌ってみたの準備では手がかりになります。1人の声で作られた曲か、2人の声で作られた曲かで、録音やコラボの組み立てが変わるためです。ボーカロイド楽曲のデータベース「VocaDB」の登録情報で照合した結果をまとめました。
| 曲名 | 原曲のボーカル | VocaDBの公開日 |
|---|---|---|
| みくみくにしてあげる♪ | 初音ミク | 2007年9月 |
| メルト | 初音ミク | 2007年12月 |
| 初音ミクの消失 | 初音ミク | 2007年11月(ショート版)/2008年4月(-DEAD END-) |
| ワールドイズマイン | 初音ミク | 2008年5月 |
| Just Be Friends | 巡音ルカ | 2009年7月 |
| ロミオとシンデレラ | 初音ミク | 2009年4月 |
| magnet | 初音ミク・巡音ルカ | 2009年5月 |
| ローリンガール | 初音ミク(GUMIがサポートとして登録) | 2010年2月 |
| マトリョシカ | 初音ミク・GUMI | 2010年8月 |
| 千本桜 | 初音ミク | 2011年9月 |
| 六兆年と一夜物語 | IA | 2012年4月 |
| 夜咄ディセイブ | IA | 2013年2月 |
| シャルル | v flower | 2016年10月 |
| 砂の惑星 | 初音ミク | 2017年7月 |
| メズマライザー | 初音ミク・重音テトSV | 2024年4月 |
2人の声で作られているのは、magnet・マトリョシカ・メズマライザーの3曲です。magnetとメズマライザーは本文でパートの分け方に触れましたが、マトリョシカも原曲は初音ミクとGUMIの2人の声なので、2人で歌う企画の候補になります。組み方はコラボできるボカロ曲でも紹介しています。また、この15曲では、2012年ごろからIA、2016年にv flower、2024年に重音テトSVと、初音ミク以外の声の曲も定番に加わっています。年代ごとの曲をもっと知りたい人は2010年代のボカロ名曲もどうぞ。
本家のクレジットで迷いやすい表記
定番曲は発表から年数がたっているため、作詞・作曲者の名義が複数あったり、同じ曲名で複数のバージョンがあったりします。歌ってみたの概要欄に本家を書くときに迷いやすい点を、VocaDBの登録情報をもとに整理しました。
| 曲名 | 迷いやすい点 | VocaDBの登録 |
|---|---|---|
| みくみくにしてあげる♪ | 正式な曲名 | 「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」。作者はika_mo(別名に鶴田加茂) |
| 初音ミクの消失 | ショート版とロングバージョン | 2007年のショート版と、2008年の「初音ミクの消失 -DEAD END-」が別々に登録 |
| magnet | 作者名の表記 | 湊貴大(別名にminato・流星P) |
| 夜咄ディセイブ | 作者名の表記 | じん(別名に自然の敵P) |
| メルト、ワールドイズマイン | 作者名の表記 | ryo(本文ではsupercellを併記) |
どの名義を書くかは、原曲の投稿ページや作者の公式の表記に合わせると迷いにくくなります。使ったバージョン(ショート版か-DEAD END-か)も書いておくと、聴いた人が原曲をたどりやすくなります。役割ごとの書き方は歌ってみたのクレジット表記の書き方にまとめています。
定番を押さえたら、テーマを絞って探す
有名どころをひととおり知ったあとは、曲の方向性を決めて探すと選びやすくなります。季節に合わせるのか、歌詞の内容で選ぶのか、聴いたときの印象で選ぶのか。入り口を一つ決めるだけで、候補はかなり絞れます。
それぞれ歌い方のアドバイスつきでまとめてあります。
まとめ:年代を横断して押さえると選曲の幅が広がる
- 定番曲は「知名度」「歌ってみたでの実績」「年代の分散」で選ぶと、偏りのないリストになります
- 黎明期の曲は音域が比較的まとまっており、全盛期以降は速さと言葉数が難易度を上げる傾向があります
- 投稿数が多い曲ほど比較されます。再現度より、自分の声に合うキーと表現を優先するほうが聴きやすい仕上がりになります
- 定番曲を数曲持っておくと、歌枠やコラボ企画でも対応しやすくなります
声の高さから曲を探したい方は女性が歌いやすいボカロ曲と男性が歌いやすいボカロ曲もあわせてご覧ください。
ジャンル別に探したい方はバンド・ロック系のボカロ曲15選、バラード・スローテンポのボカロ曲15選もあわせてどうぞ。



















