「ボカロ曲を歌ってみたいけれど、自分が知っているのは少し前の曲ばかりかもしれない」——そう感じている方は少なくありません。ボカロシーンは2020年前後から大きく動いていて、投稿の場もニコニコ動画からYouTubeやTikTok、リズムゲームへと広がりました。使われるボーカル音源も、初音ミクをはじめとするVOCALOIDだけでなく、重音テトや可不、歌愛ユキといった多様な合成音声に広がっています。
この記事では、2020年以降に発表され、歌ってみたでも実際にカバーされている15曲を年代順に紹介します。それぞれ「どんな曲調か」と「歌ってみたで扱うときのポイント」をあわせてまとめました。新しい曲は情報が定まりきっていないものもあるため、曲名・作者名・発表年は複数の資料で確認できたものだけを載せています。
なお、この記事では現在の一般的な使われ方にあわせて、VOCALOID以外の音声合成ソフトを使った楽曲も広い意味での「ボカロ曲」として扱っています。
この記事の選び方の基準
「2020年代の曲」といっても該当する楽曲は膨大にあります。順位づけはしていません。次の3つの条件をすべて満たすものを、発表年の順に並べました。
- 2020年以降に発表されている:原曲(オリジナル)の公開が2020年1月以降の楽曲に限定しています。過去曲のリメイクや別バージョンは対象外です
- 歌ってみたのカバーが継続して投稿されている:公開直後に話題になっただけでなく、その後もカバーが続いている曲を優先しました
- 年の分散:2020年から2025年まで、特定の年に偏らないよう配慮しています
再生回数やランキング順位は時期によって変わるため、この記事では数値そのものを比較の根拠にしていません。年の表記は原曲が公開された年で、2026年9月時点で確認できた情報に基づいています。
2020年代のボカロ曲おすすめ15選 早見表
| 曲名 | ボカロP | 年 | 歌ってみた視点でのポイント |
|---|---|---|---|
| ヴィラン | てにをは | 2020 | ミドルテンポ。抑えた歌い出しと開けるサビの落差 |
| グッバイ宣言 | Chinozo | 2020 | 言葉数が多い。子音を立てるとリズムが前に出る |
| ラグトレイン | 稲葉曇 | 2020 | 淡々とした譜割り。音量差より息の量で表情を作る |
| KING | Kanaria | 2020 | 跳ねたリズムと跳躍。テンポキープが難所 |
| ヴァンパイア | DECO*27 | 2021 | 語尾の処理が肝。ノリを崩さず言葉を置く |
| フォニイ | ツミキ | 2021 | 高速かつ音の動きが大きい。上級者向け |
| マーシャル・マキシマイザー | 柊マグネタイト | 2021 | 詰まった譜割り。息継ぎを先に設計する |
| 酔いどれ知らず | Kanaria | 2022 | 独特のグルーヴ。リズムの再現が難易度を左右 |
| バグ | かいりきベア | 2022 | 疾走感のあるロック。サビで高音が続く |
| 強風オールバック | ゆこぴ | 2023 | 短尺で軽快。歌枠やショート動画で扱いやすい |
| ラビットホール | DECO*27 | 2023 | 変則的なリズム。伴奏との位置関係を意識 |
| オーバーライド | 吉田夜世 | 2023 | 速い展開。区間ごとに切って練習すると進む |
| イガク | 原口沙輔 | 2024 | 音の切り貼り感が強い。譜割りの把握に時間が必要 |
| テトリス | 柊マグネタイト | 2024 | 高速で音数が多い。テンポ感の維持が課題 |
| いますぐ輪廻 | なきそ | 2025 | 抑揚の幅が広い。静と動の差をつけやすい |
2020〜2021年:ネット発ヒットが一気に広がった時期
この時期は、YouTubeやTikTokからボカロ曲に触れる人が増え、投稿から短期間で再生数が伸びる流れが定着しました。ボーカル音源の選択肢も広がり、初音ミク以外の声を使った曲も多く聴かれるようになりました。
ヴィラン/てにをは
2020年発表、v flowerを使用した楽曲です。ミドルテンポで、抑えた歌い出しからサビで一気に開ける構成になっています。派手な早口はありませんが、そのぶん一音ずつの精度が出やすい曲です。
歌ってみたのポイントは、静かなパートを丁寧に作れるかどうか。最初から声を張ると後半の伸びしろがなくなるため、前半は抑えて録るほうが全体のまとまりが良くなります。
グッバイ宣言/Chinozo
2020年発表、flowerを使用した楽曲です。テンポが速く、言葉が細かく並ぶタイプの曲で、カバー投稿の多い1曲として知られています。
難所は、言葉数の多いパートでリズムが後ろに流れやすいこと。母音を伸ばすより、言葉の頭の子音をはっきり出すほうが推進力が保たれます。メトロノームに合わせて歌詞を音読する練習を先に入れておくと、録音時のずれを減らせます。
ラグトレイン/稲葉曇
2020年発表、歌愛ユキを使用した楽曲です。淡々とした譜割りと落ち着いたテンポが特徴で、音を詰め込むタイプの曲ではありません。
ただし、平坦に歌うと単調になりやすい曲でもあります。声量の上げ下げで差をつけようとすると音程が不安定になりやすいため、息の量とマイクとの距離で表情を作るほうが安定します。静かな曲なので、環境ノイズの処理も仕上がりに影響します。
KING/Kanaria
2020年発表、GUMIを使用した楽曲です。跳ねたリズムと大きな音の跳躍を組み合わせた曲調で、Kanariaさんの名前を広く知らせた1曲とされています。
気をつけたいのは、跳躍の前で構えすぎないことです。次の音を取りにいこうとしてテンポが遅れやすいので、リズムを優先して先に進み、音程はあとから合わせていく練習順のほうが早く形になります。
ヴァンパイア/DECO*27
2021年発表の初音ミク曲です。ポップな曲調で、2020年代のボカロ曲のなかでもカバーの裾野が広い1曲に挙げられます。極端な高音や早口はなく、比較的取り組みやすい部類です。
難所は語尾の処理です。すべての語尾を丁寧に伸ばすと重くなるため、短く切る箇所と残す箇所を先に決めておくと、原曲の軽さに近づきます。
フォニイ/ツミキ
2021年発表、音楽的同位体「可不」を使用した楽曲です。速いテンポに加えて音の動きが大きく、歌唱としての難易度は高い部類に入ります。
いきなり通そうとすると、どこでつまずいているのか分からなくなりがちです。8小節ずつなど区間を決めて録り、通せるようになった区間をつなげる進め方が現実的です。同じ系統の難曲は歌いごたえのある難しいボカロ曲でも扱っています。
マーシャル・マキシマイザー/柊マグネタイト
2021年発表、可不を使用した楽曲です。譜割りが細かく詰まっており、休符の少ない構成になっています。
いちばんの課題は息継ぎです。歌詞を紙に書き出し、どこで吸うかを先に決めてから練習に入ると、途中で息が尽きる事故を防げます。ブレスの位置は原曲と同じである必要はなく、自分の肺活量に合わせて設計して問題ありません。
2022〜2023年:リズムゲームと二次創作から広がった曲
この時期は、リズムゲームへの収録や、音MADをはじめとする二次創作を入り口に曲を知る人が増えました。曲の長さや構成も多様になり、短尺の曲がカバーされる流れも生まれています。
酔いどれ知らず/Kanaria
2022年発表、GUMIを使用した楽曲です。前掲のKINGと同じくリズムに強い特徴があり、独特のグルーヴを持った曲調になっています。
カバーで差が出るのは、音程よりもリズムの再現です。伴奏に対して言葉をどの位置に置くかで印象が大きく変わるため、原曲を細かく区切って聴き込む時間を確保すると精度が上がります。
バグ/かいりきベア
2022年発表の初音ミク曲です。疾走感のあるロックサウンドで、サビでは高めの音が続きます。
課題になるのは体力配分です。サビの音域が高い曲は、1回目のサビで出し切ると最後まで保ちません。最終サビを先に歌ってみて最高音の位置を確認し、そこまで声が保てる高さでキーを決めておくと安全です。
強風オールバック/ゆこぴ
2023年発表、歌愛ユキを使用した楽曲です。短めの尺と軽快な曲調が特徴で、ショート動画や歌枠でも扱われることの多い1曲です。
技術的な難所は少なめですが、短い曲ほど1か所のミスが目立ちます。テンポの軽さを保つために、力を入れて歌い込むよりも、話し声に近い距離感で録るほうが原曲の空気に近づきます。
ラビットホール/DECO*27
2023年発表の初音ミク曲です。国内外で広く聴かれた楽曲で、リズムに変則的な要素が含まれています。
意識したいのは、伴奏との位置関係です。メロディだけを追うとリズムが曖昧になりやすいので、伴奏のどの音に対して言葉を置くのかを意識しながら練習すると、輪郭がはっきりします。
オーバーライド/吉田夜世
2023年発表、重音テト(Synthesizer V)を使用した楽曲です。展開が速く、二次創作を通じて広く知られるようになりました。
通しで練習するより、パートごとに区切って積み上げるほうが進みやすい曲です。録音は必ず数テイクに分けて、うまくいった区間を残していく方法をおすすめします。
2024〜2025年:重音テトSVと最新の潮流
2024年以降は、Synthesizer Vなどの新しい音声合成技術を使った楽曲が目立つようになりました。曲の構造も、従来のAメロ・Bメロ・サビという形にとらわれないものが増えています。
イガク/原口沙輔
2024年発表、重音テトを使用した楽曲です。音を細かく切り貼りしたような質感が特徴で、耳で聴いた印象と譜面上の構造がずれやすいタイプの曲です。
難所は譜割りの把握そのものです。速度を落として聴ける環境を用意し、どこにアクセントがあるのかを確認してから歌い始めると、迷う時間を減らせます。
テトリス/柊マグネタイト
2024年発表、重音テト(Synthesizer V)を使用した楽曲です。高速で音数が多く、前掲のマーシャル・マキシマイザーと同じく息継ぎの設計が要になります。
テンポを保ったまま言葉を並べられるかが課題です。原曲より遅いテンポで練習し、正確に歌える速度を確認してから少しずつ上げていく進め方が確実です。
いますぐ輪廻/なきそ
2025年発表の初音ミク曲です。抑えたパートと大きく盛り上がるパートの幅が広く、静と動の対比がはっきりした構成になっています。
コツは、盛り上がる箇所で力任せに張らないことです。抑えたパートをどれだけ小さく歌えるかで対比が生まれるため、静かな部分の作り込みに時間をかけるほうが結果的に映えます。
2020年代の曲を歌ってみたで扱うときの注意点
新しい曲は情報が整っていないことも多く、古い曲とは違った準備が必要になります。
- オフボーカル音源の有無を先に確認する:発表から間もない曲は、カラオケ音源が未公開だったり、配布条件が後から変わったりすることがあります。配布の有無と利用条件は必ず作者の指定を確認してください。詳しくはオフボーカル音源の探し方と扱い方にまとめています
- キーは最高音ではなく「最後まで保てる高さ」で決める:2020年代の曲は音域が広めのものが多く、原曲キーで1コーラス歌えても最後まで保てないことがあります。自分に合うキーの見つけ方を参考に、通し録りを前提に判断してください
- 投稿サイトのルールを選曲の段階で見ておく:権利表記や使用素材の扱いは動画サイトごとに定められています。歌ってみたと著作権の基礎知識で全体像をつかんでおくと、投稿直前で慌てずに済みます
まとめ:新しい曲は「情報の確認」も準備のうち
- 2020年代のボカロ曲は、使われるボーカル音源も曲の構造も多様化しています。従来の型に当てはめず、曲ごとに構成を確認するところから始めるのが近道です
- 速い曲・言葉数の多い曲は、息継ぎの位置を先に設計しておくと事故を防げます
- 音域が広い曲は、1コーラスではなく通しで保てる高さを基準にキーを決めてください
- 発表から間もない曲は、オフボーカル音源や利用条件が変わることがあります。選曲の段階で確認しておきましょう
年代を横断して押さえておきたい曲は定番・有名なボカロ曲おすすめ15選に、まず1曲を完成させたい方向けの選曲は歌ってみた初心者でも歌いやすいボカロ曲おすすめ15選にまとめています。あわせてご覧ください。



















