突然ですが、
あなたにひとつ問題です。
歌が上手いというのは
どこで決まるのでしょうか?
音程の正答率でしょうか?
カラオケ採点の点数でしょうか?
聴いて感動するかどうかでしょうか?
ビブラートなどのテクニックでしょうか?
こう聞かれると、
意外と答えにくいと思います。
歌が上手いとはどういうことか
説明できる人はかなり少ないでしょう。
今回はメラビアンの法則から
歌が上手いとはどういうことか考えようと思います。
メラビアンの法則とは?
メラビアンの法則という法則を
あなたは聞いたことはありますか?
7-38-55の法則、3Vの法則とも
言われることがあります。
「人は見た目が9割」という本の
元になったと言われている法則です。
日本では、メラビアンの法則が
過大解釈されて述べられることが多いです。
俗流解釈の”メラビアンの法則”
人の第一印象は出会って3~5秒で決まり、
その情報のほとんどが視覚情報から得ている。
見た目や表情などの視覚情報が
全体の55%をしめている。
声のトーンや大きさなどの聴覚情報が
全体の38%をしめている。
一方、話の内容など言語情報は
全体の7%に過ぎないと言います。
この数字だけが独り歩きして、
見た目が一番重要だと言われるようになりました。
メラビアンの法則の誤解
メラビアンが行った実験には
ある条件がありました。
それは感情や態度(好き・嫌い)の伝わり方を扱い、
言葉と声の調子・表情が食い違う組み合わせを含むという条件でした。
ちょっとわかりにくいと思うので、
簡単な例を挙げます。
「楽しい」と言っているのに、
怒ったような顔をしている。
「楽しい」と言っているのに、
声が全然楽しそうじゃない。
このように矛盾した時に
人はどっちを信じるかという実験です。
楽しいという言葉を信じて、
そのように解釈するのか。
それとも顔が笑っていないから
嘘をついたと思うのか。
感情や態度の伝わり方を、食い違う組み合わせで調べた実験なので、
見た目が一番だという結論にはならないはず。
コミュニケーション全般において
この法則が適用されるわけではないでしょう。
王貞治の伝説
プロ野球のレジェントの
王貞治さんが現役で活躍していた頃。
王貞治さんがバッターで、
きわどい場所にボールが来ました。
ストライクでも、ボールでも
おかしくないような場所でした。
王貞治さんは少しも動かず、
ボールを見逃しました。
「王さんが見逃すならボールだろう。」
と審判が思ったという伝説もあります。
あくまで王伝説のひとつなので、
真偽はわかりません。
ただ堂々とした態度は
それだけで信じる価値があります。
この法則から言えること・言えないこと
本文で触れたとおり、メラビアンの法則のもとになった実験は、感情や態度(好き・嫌い)の伝わり方を扱い、「言葉と声の調子・表情が食い違う」組み合わせを含むものでした。この前提を外して数字だけを持ち出す使われ方は、一般に誤用として指摘されているものです。ここを踏まえると、この法則から引き出してよい話と、引き出してはいけない話がはっきりします。
引き出してはいけないこと
- 「視覚情報が55%なのだから、努力の55%を見た目に振り分ければよい」という配分の話。実験は労力の配分を示したものではありません。
- 「歌の中身は7%しか影響しないのだから、練習しなくてよい」という結論。前提が違う場面に数字を持ち込んだ議論です。
- 「見た目さえ整えれば上手く聴こえる」という置き換え。感情や態度について、食い違う情報が示されたときの受け取られ方の話であって、一般的な優劣を示したものではありません。
引き出してよいこと
- 受け手は、ひとつの情報だけを見て判断しているわけではない、ということ。
- 複数の情報が食い違っていると、受け手はそこに引っかかる、ということ。
- だから作品を出すときは、各要素が同じ方向を向いているかを確認しておく意味がある、ということ。
この「同じ方向を向いているか」という視点は、歌ってみたを投稿する場面ではかなり実用的です。数字を根拠にする必要はなく、要素が噛み合っているかどうかだけを見ればよいからです。
歌ってみたで「歌以外」が判断材料になる場面
投稿という形をとる以上、聴き手が最初に触れるのは歌声そのものではありません。一覧に並んだサムネイル、タイトル、再生開始からの数秒、そして音の質感。これらはすべて、聴き手が「この人はどうなのか」を判断する材料になります。
| 要素 | 聴き手が受け取りやすいもの | ちぐはぐになりやすい例 |
|---|---|---|
| サムネイル | 曲の雰囲気、その人の作風の方向性 | 静かなバラードなのに、にぎやかで派手な画面 |
| タイトル・表記 | ていねいさ、作品への向き合い方 | 曲名の表記が原曲と違う、表記ゆれが混ざっている |
| 冒頭の数秒 | 最後まで聴くかどうかの判断 | 無音が長い、音量が急に変わる、ノイズが乗っている |
| 音の質感 | 手間のかかり具合、聴きやすさ | 歌だけが浮いている、伴奏に埋もれている |
| 概要欄 | 誠実さ、関わった人への姿勢 | 使用音源のクレジットが抜けている |
ここで大事なのは、これらを「歌の代わり」として使わないことです。周辺の要素は、歌に向き合ってもらうための入り口であって、歌の弱さを埋めるものではありません。入り口が整っていないと聴いてもらえない、という順番の話として捉えてください。
手を入れる順番の考え方
限られた時間で全部を良くすることはできないので、順番を決めておくと迷いにくくなります。歌ってみたという形式では、次のような順で考えると噛み合いやすいです。
- 聴けるかどうか。音量が極端でないか、ノイズが乗っていないか、歌が伴奏に埋もれていないか。ここが崩れていると、他をどれだけ整えても最後まで聴かれにくくなります。処理の手順は歌ってみたMIXのやり方にまとめています。
- 見つけてもらえるかどうか。サムネイルとタイトルです。作り方は歌ってみたのサムネイルの作り方で扱っています。
- 方向が揃っているかどうか。曲の雰囲気、サムネイルの色や文字、タイトルの言葉づかいが同じ方向を指しているか。
- 情報が足りているかどうか。原曲や使用音源のクレジット、関わった人の記載など。書き方は歌ってみたの概要欄の書き方にあります。
この順番にしているのは、上のものほど、崩れていたときの影響が大きいからです。サムネイルに時間をかける前に、まず音が普通に聴ける状態になっているかを確認したほうが、結果的に労力が報われやすくなります。
「自信があるように聞こえる」を録音で作る
本文の最後に、堂々と歌っているほうが上手く聴こえる、という話がありました。これは対面で歌う場面の話に聞こえますが、録音した音源でも同じことが起きます。聴き手は音の中から迷いや自信を読み取っているからです。録音でそれを作るには、次のあたりが手がかりになります。
- 歌い出しをためらわない。入りが遅れたり音量が小さかったりすると、そこで印象が決まってしまうことがあります。歌い出しだけを何度か録り直すのは有効な手です。
- 語尾を放り出さない。フレーズの終わりを曖昧に消すと、自信のなさとして受け取られやすくなります。切るのか伸ばすのかを決めておきます。
- テイクを選ぶ基準を持つ。「ミスが少ないテイク」ではなく「勢いが途切れていないテイク」を選ぶ、という基準もあります。どちらを取るかは曲によります。
- 不要な音を残さない。歌う前の物音や、フレーズ間の余計な音が残っていると、それだけで作品全体の印象が下がることがあります。
いずれも、歌唱力そのものを短期間で変える話ではありません。今できている歌を、そのまま届く形にするための調整です。見た目や周辺要素の話を扱うときは、この「歌を邪魔しない」という基準に立ち返ると、数字に振り回されずに判断できます。歌そのものを計画的に仕上げていく側の話はワンランク上の歌を歌うための作戦の立て方で扱っているので、併せて読んでみてください。
まとめ
メラビアンの法則を根拠にして、
見た目が一番大切だとは言えないでしょう。
ただ一方で、見た目も大切だというのは
体感的に理解できると思います。
すごい緊張している雰囲気で
オドオドして歌う人。
自信に満ちていて、
リラックスして歌っている人。
歌の上手さが同じレベルでも
後者の方が上手く聴こえるでしょう。
たとえ歌に自信がなくても、
歌が上手そうに振る舞ってみましょう。
「こんなに自信をもって歌っているから、
きっと上手いのだろう。」
と聴いている人に思わせたら勝ちです。























