ボイストレーニングの勉強をしていると、
閉鎖筋という言葉をよく目にします。
実際に、この閉鎖筋を鍛えることは
歌上達の第一歩になります。
閉鎖筋を使いこなせなければ、
歌を上手く歌うことは不可能です。
なぜそこまで言えるのか?
そもそも閉鎖筋とは何なのか?
ひとつずつ説明してきますので、
最後までしっかりと読んでください。
閉鎖筋とは?
閉鎖筋の説明をする前に
声が出る仕組みをおさらいしましょう。
喉の奥には声帯と呼ばれる
2枚のひだがあります。
この2枚のひだの間を
空気が通ります。
2枚のひだが離れていると、
そのまま空気が通り、息ができます。
2枚のひだがくっついていると、
空気を通る時にひだが振動します。
この2枚のひだの振動音が
声の正体でした。
声を出すためには、
2枚のひだをくっつける必要があります。
声帯を閉じる、声帯閉鎖という
言い方もされます。
この声帯を閉じるための筋肉を
閉鎖筋と言います。
閉鎖筋の3つの種類
つまり、閉鎖筋は
声帯閉鎖に関わる筋肉の総称です。
閉鎖筋には
主に3つの筋肉が挙げられます。
側筋
側筋は声帯の後ろについている披裂軟骨を
外側に回転させる役割をします。
披裂軟骨が外側に回転することで、
2枚のひだが少し近づきます。
両手に1本ずつひもを持っている姿を
イメージしてみてください。
柱にひもを結びつけて、
もう片方を少し張るように持ちます。
側筋の役割は
手首をひねるようなイメージです。
手首をひねることで、
ひもが引っ張られ、近づきます。
ただ、側筋だけでは
声帯が少し近づくだけです。
まだ声帯は閉じきれていないので、
息の漏れた声になります。
横筋
横筋は披裂軟骨の後ろに
ついている筋肉です。
披裂軟骨を動かして、
声帯を近づける役割をします。
先ほどのひもの例で言うと、
横筋は手を近づけるイメージです。
ひもを持っている手を近づけることで、
ひもはくっつきます。
側筋のよりも横筋の方が
声帯をしっかり閉じることができます。
側筋と横筋を使うと、
話し声のような声になります。
交錯筋
交錯筋は2枚のひだの横にある
X字状の筋肉のことです。
交錯筋は声帯を押すことで、
声帯を閉じることができます。
先ほどのひもの例で言うと、
ひもを押してくっつけるイメージです。
交錯筋まで使うと、
声帯を完全に閉じることができます。
閉鎖筋が大切な理由
声帯を閉じるための筋肉の総称を
閉鎖筋と呼ぶと説明しました。
では、なぜ閉鎖筋は
歌上達の第一歩なのでしょうか?
それは声帯を閉じることが
声を出すことの原点だからです。
声帯閉鎖については
こちらに記事で詳しく解説しています。
声帯閉鎖を詳しく知りたい方は
ぜひ読んでください。
閉鎖筋のストレッチ法・鍛え方
閉鎖筋を鍛えるには
エッジボイスがオススメです。
声帯閉鎖を集中して行うので、
閉鎖筋を鍛えるにはもってこいです。
エッジボイスについては
こちらの記事で詳しく説明しています。
「閉じすぎ」と「足りない」——どちら側に寄っているかを見分ける
閉鎖にまつわる練習でつまずきやすいのは、方向を間違えたまま量を増やしてしまうことです。息が漏れている人と、力んで詰まっている人では、やるべきことが逆になります。まずは自分がどちら寄りかに当たりをつけましょう。
| 聴こえ方・感じ方 | 寄りやすい側 | 近づけたい方向 |
|---|---|---|
| 言葉の頭に「フッ」と息が先に出る | ゆるい側 | 小さい音量で、言葉の頭を揃える練習から |
| 伸ばした音が途中で細く消える | ゆるい側 | 短く切った音を、同じ質で並べてみる |
| 声は出るが硬く、詰まって聞こえる | 強い側 | 息を先に流してから声を乗せる |
| 数フレーズで喉まわりが張ってくる | 強い側 | その日は切り上げ、音量を落として組み直す |
| 音量を下げると急にささやき声になる | 強い側に依存 | 小さい音量で成立する出し方を探す |
迷ったときの基準としておすすめなのが、ごく小さい音量で同じことができるかを試すことです。大きい音量は力でごまかせてしまいますが、小さい音量では成立しているかどうかがはっきり出ます。録音して聴き比べると、より判断しやすくなります。録音での確かめ方はチェストボイスとは?の側で詳しく扱っています。
練習の量と休みを設計する
声を扱う練習は、負荷をかけた時間だけでなく、その後に休めているかどうかで調子が変わると言われます。とくに閉鎖まわりの練習は、感覚を掴もうとして長時間続けてしまいがちなので、あらかじめ枠を決めておくと安全です。
1回の練習を組み立てる
- 身体をほぐし、小さい音量から声を出しはじめる
- ラクな高さで、言葉の頭が揃うかを確認する
- 狙いのある練習は短い時間だけ行い、間に休みを挟む
- 普通に話す声に戻して、違和感が残っていないか確かめる
- 曲の1フレーズで、掴んだ感覚が使えるか試す
4番目を飛ばさないでください。練習の直後に話し声が出しにくくなっているなら、その日はやりすぎのサインと考えるのが無難です。次の日に持ち越さないよう、その時点で終わりにしましょう。声がかすれる・痛みがある状態が続く場合は、練習で解決しようとせず、専門の医療機関に相談してください。
やめどきを決めておく
- 喉に痛みや強い違和感が出たとき
- 同じことを繰り返しても、さっきよりできなくなってきたとき
- 声が枯れはじめたとき
- 録音を聴いて、力んだ音のほうが増えてきたとき
特に2番目は見落とされがちです。うまくいかないと「もっとやらないと」と考えてしまいますが、疲れた状態で繰り返すと、その状態の出し方が反復されることになります。いったん離れて翌日に試したほうが、結果的に早いことがよくあります。
記録をつけて、感覚の再現性を上げる
閉鎖まわりの感覚は言葉にしづらく、「昨日はできたのに今日は思い出せない」という状態になりやすい領域です。ここを埋めるのが記録です。数字を測る必要はありません。
| 記録する項目 | 書き方の例 | 後で役に立つ場面 |
|---|---|---|
| その日の体調 | 睡眠時間、鼻の通り、疲れ具合 | 調子の良い条件を見つけるとき |
| うまくいった感覚 | 自分の言葉で1行だけ(比喩でよい) | 翌日に感覚を呼び戻すとき |
| 時間帯と長さ | 朝/夜、何分やったか | やりすぎの傾向を見つけるとき |
| 音源ファイル名 | 日付を先頭に入れておく | 1か月前と聴き比べるとき |
音源を残すときは、毎回同じフレーズを同じ距離で録るのがコツです。条件がそろっていないと比較になりません。距離やマイクの位置が日によって変わってしまう場合は、録音環境そのものを固定するところから見直すと安定します。ファイルが増えてきたら、録音データの管理方法のやり方で月ごとにフォルダを分けておくと探しやすくなります。
感覚のメモは、他人に伝わる言葉である必要はありません。「お腹から糸を引くような」「声が前に置かれる感じ」といった自分だけの比喩でも、翌日の自分には十分な手がかりになります。むしろ正確に書こうとして書けずに終わるより、雑でも毎回残すほうが役に立ちます。数週間ぶん溜まると、調子の良い日に共通する条件が見えてくることがあります。
よくある勘違いの整理
強く閉じるほど良い声になる、ではない
「閉鎖」という言葉の印象から、強くするほど良いと受け取られがちですが、実際には硬い声・詰まった声も同じ方向のやりすぎとして現れます。ちょうどよい範囲を探す作業だと捉えたほうが、練習の方向を見失いにくくなります。
短期間で仕上げるものではない
数日で劇的に変わるという話は、期待を持たせてくれますが、実際には日ごとの差のほうが大きく見えることがあります。週単位・月単位で録音を並べて判断するほうが、変化を正しく捉えられます。
用語を覚えることが目的ではない
筋肉の名前を正確に覚えても、それだけで歌が変わるわけではありません。用語は、自分の状態を説明するための道具として使うと役に立ちます。他の用語もまとめて確認したい場合は歌い手用語辞典が便利です。実際の曲でどう活かすかは高い声が出せるようになる練習法の側で扱っています。
























