あなたは声立てという言葉を
聞いたことがありますか?
ほとんどの人が
聞いたことのない言葉でしょう。
しかし、ボイストレーニングにおいて
声立てという考えはとても大切です。
悲しい声、怒った声、
意志の強い声、叫んでいるような声。
歌の世界観を表現するためには
色々な声色を出せるようになりたいでしょう。
たくさんの声を使えるようになるカギが
声立てなのです。
声立てをマスターできれば、
七色の声を操ることができます。
今回は「声立て」について
わかりやすく解説しようと思います。
声立てとは?
声立てを理解するためには
発声の仕組みを知る必要があります。
肺に溜められていた息が
気管支を通って外に出ていきます。
息が声帯の間を通る時に
声帯がブルブルと振動します。
これが声の原型です。
つまり、声帯をコントロールして
息を声に変換しているのです。
声立てとは、
息を声にしている割合のことを言います。
声立てが強いと言うと、
効率よく息を声にしているということです。
なぜ声立ては大切なのか?
声量が大きくなる
「歌声が小さくて、全然聴こえない…。」
「声量がなくて、苦しくなってしまう…。」
声量が足りないと悩んでいる人は
少なくないです。
しかし、実際のところ
声量が足りない人はほとんどいません。
上手く息を声に変えられてない人の方が
圧倒的に多いのです。
声立てが弱いということです。
たとえ少ない息でも、
効率よく声に変えることができれば
大きな声を出すことができます。
喉や声帯を壊しにくくなる
少ない息の量で大きな声を出すには
無茶をしなければなりません。
逆に多い息で声を小さくするのも
声帯に負荷をかけます。
息の量と声だての強さが釣り合ってないと、
声帯を壊す原因になります。
声立てという考えを知ることで、
無理やり声を出すことはなくなるでしょう。
その結果、
喉や声帯を壊しにくくなります。
様々な声色を出せるようになる
声立てを変えられるようになると
色々な声色を出せるようになります。
歌に合った声を出せるので、
表現力がグーンと上がります。
良い声立てとは?
初めて声立てという言葉を聞いた人は
強ければ強いほど良いと勘違いしがちです。
効率という言い方が勘違いしやすいのか、
そう思ってしまうようです。
声立てが弱いと
息が漏れたような声になります。
逆に声立てが強いと
芯のあるような声になります。
しかし声立てが強すぎると、
苦しそうな歌声になってしまいます。
良い歌声を出すポイントは
息の量と声立ての強さのバランスです。
息の量が多ければ、声立ても強くする。
息の量が少なければ、声立ても弱くする。
出したい声色によって変わりますが、
基本はバランスを取ることを意識しましょう。
声立ての4タイプ
息が弱くて、声立てが弱い
息の漏れた弱々しい歌声になります。
声のイメージを言葉にすると
弱々しい、悲しい、暗いという感じです。
失恋ソングを歌う時に
最適の声色と言えるでしょう。
息が弱くて、声立てが強い
声が小さいけれども、
芯のある歌声になります。
声のイメージを言葉にすると
逆境、芯があるという感じです。
静かめの曲だけど、
強いメッセージがある曲にピッタリです。
息が強くて、声立てが弱い
4つのタイプの中で
正直使う機会がないと思うものです。
声は大きいけれども、
息の漏れた歌声になります。
ランニングで走りながら
歌っているようなイメージです。
息が強くて、声立てが強い
激しい歌にピッタリの歌い方です。
叫んでいるような、
強いメッセージのある歌声になります。
今の自分の声立てがどちら寄りかを確かめる
4つのタイプを読んで「自分はどれだろう」と思ったら、次は録音で確かめるのがいちばん早い方法です。声立ては出している本人の感覚と外に出ている音がずれやすいところなので、耳だけで判断すると当たりを付けにくくなります。同じフレーズを条件を変えずに録り、次の観点で聴いてみてください。
| 聴くところ | 声立てが弱め寄りのとき | 声立てが強め寄りのとき |
|---|---|---|
| 音の出だし | 「はっ」と息が先に出て、音が遅れて立ち上がる | 出だしから音が付いていて、輪郭がはっきりしている |
| 伸ばした音の終わり | 息だけが残って、音がふっと消える | 最後まで音が保たれる、あるいは切れ際が硬い |
| 音量を下げたとき | 小さくすると輪郭ごと消えてしまう | 小さくしても芯が残る |
| 伴奏に混ぜたとき | 音量を上げても埋もれやすい | 音量が控えめでも位置が分かる |
| 1曲歌ったあとの体感 | 息が先に足りなくなる | 喉のあたりに疲れが出やすい |
録音を聴くときの観点は決めておくほうが判断が安定します。聴き返しの手順は録音でセルフ添削するやり方にまとめられています。なお「どちら寄りか」を知るのが目的であって、優劣を付けるためではありません。弱め寄りの声が合う曲もあります。
行きすぎのサインと、まず戻す場所
記事本文にあるとおり、声立ては強ければ良いというものではありません。実際の練習では「強くしようとして力んだ」「弱くしようとして息だけになった」という行きすぎが起こりがちです。次の表を、いま自分がどちらへ振れているかの目安として使ってみてください。
| 出ているサイン | 考えられること | まず試したいこと |
|---|---|---|
| 歌ったあとに喉が張る感じが残る | 息の量に対して声立てを強くしすぎている | 音量を落とし、息の量から先に決め直す |
| サビの手前で息が足りなくなる | 息が声に変わりきらず、そのまま逃げている | 「息の支え」とは結局、何なのか?で支え側から見直す |
| 音の出だしだけが硬く聞こえる | 立ち上がりで一気に閉じにいっている | 出だしを息から入り、途中で音を足す形に変える |
| ずっと同じ雰囲気に聞こえる | 1曲を通して声立てが固定されている | Aメロとサビで意図的に変える(次の章) |
| 小さい音で歌うと音程が不安定になる | 声を支える働きが弱いまま音量だけ下げている | 声帯閉鎖の感覚・鍛えるためのトレーニングを先に確認する |
迷ったときは音量を落として、そのまま出せる範囲を探すのが安全な戻り方です。大きな声で調整しようとすると、力みなのかバランスなのかが分からなくなります。喉に痛みや引っかかりを感じた日は、その日の練習は止めて休んでください。
1曲の中で声立てを動かす
声立てを知る利点は、曲の中で意図的に変えられるようになることにあります。最初から最後まで同じ強さで歌うと、それだけで単調な印象になりやすいものです。段階を分けると扱いやすくなります。
- 1曲を、声立てを変えずに通しで録る(比較のための基準)
- Aメロだけを息多め・声立て弱めで録り直す
- サビだけを息強め・声立て強めで録り直す
- 3つを並べて聴き、曲の内容に合っているほうを採用する
ここで判断の基準になるのは「強く出せたかどうか」ではなく、歌詞の内容と声の質感が合っているかどうかです。声の質感そのものを切り替える具体的なやり方は声色の使い分け方で、Aメロ・サビ・落ちサビという単位で整理されています。強弱の付け方全般は歌の抑揚のつけ方もあわせて読んでみてください。
自分の判断が合っているか分からなくなったとき
声立ては、数値で測れるものではなく、良し悪しの基準も曲によって動きます。そのため「変わったのは分かるが、良くなったのかは分からない」という状態で止まりやすいテーマでもあります。ここで手を止めないための方法をいくつか挙げておきます。
- 録音を日付でそろえて残し、1か月前と聴き比べる。1回ごとの差は小さくても、まとまった期間で見ると変化が分かりやすくなります
- 自分の声を聴くのが苦手な場合は、良し悪しを判断しようとせず、まず「息が多いか少ないか」だけを聴く回を作ってみる
- 人に聴いてもらうときは「上手いか」ではなく「息っぽく聞こえるか、硬く聞こえるか」のように、答えやすい聞き方にする
それでも判断がつかないときは、自分以外の耳を1つ足すのが現実的です。息の量と声立てのバランスは、聴いている側からのほうが差を指摘しやすい部分でもあります。身近に頼める相手がいない場合は、歌い手向けボイトレ教室10校の比較で体験レッスンのある教室を見ておくのも、第三者に聴いてもらう方法のひとつです。自己判断だけで長く続けるより、途中で一度外から聴いてもらったほうが、練習の方向を決めやすくなることがあります。























