この前、読者の方に
こんな質問をいただきました。
「ボイトレのひとつとして、
筋トレをする必要はありますか?」
ボイストレーナーの中には
筋トレをメニューに入れている人もいます。
一方、ボイトレと筋トレは
全く関係ないという人もいます。
真逆の意見があるため
どちらが正しいのか困惑している人も…。
そこで、今回は
ボイトレと筋トレの関係について考えましょう。
ボイトレと筋トレは関係あるの?
個人的には、
ボイトレと筋トレは関係があると思います。
少なくとも、
全く関係ないということはありません。
筋トレの2種類
アウターマッスルを鍛える
一言で筋トレと言っても、
何を鍛えるかで大きく変わります。
普通は筋トレというと、
腹筋や背筋が思い浮かぶでしょう。
こういう筋トレは
アウターマッスルを鍛えています。
喉まわりの筋肉を意識する
もうひとつは歌うために
重要な筋肉を鍛える筋トレです。
発声をするためには
たくさんの筋肉を使っています。
声帯まわりの筋肉など、
外から見えにくい筋肉を意識するトレーニングです。
筋トレをするメリット
体力がつく
アウターマッスルを鍛える意味が
全く関係ないというわけではありません。
歌はスポーツだというように
とても体力を使います。
ライブ映像を見ると、
みんな汗だくで歌っています。
また一曲を全力で歌うと
かなり疲れを感じるでしょう。
体力をつけることで、
長い曲でも崩れにくくなると感じる人もいます。
正しい姿勢をサポートしてくれる
上手く歌うためには
正しい姿勢をする必要があります。
ただやってみるとわかるのですが、
結構キツい姿勢です。
その姿勢を保つためには
それなりの筋肉が必要でしょう。
歌う時の正しい姿勢に関しては
下の記事をご覧ください。
歌が上手くなる
腹式呼吸をするためには
横隔膜という筋肉を使います。
また音程を調節するためには
輪状甲状筋という筋肉を使います。
発声の関わる筋肉を鍛えることで
歌の土台づくりにつながるとされています。
発声の基礎を意識しやすくなったり、
声の出し方をつかみやすくなったりするとされています。
一般的な筋トレ
背筋
猫背や姿勢が悪い人は
背筋が弱い傾向にあります。
背筋を鍛えることで
姿勢が良くなることがあります。
また背筋は
姿勢を保つ筋肉のひとつで、歌う姿勢づくりにかかわるとされています。
声が出しやすくなりたいという人は
一度やってみると良いでしょう。
スクワット
下半身が安定すると、
体を支えやすく感じる人もいます。
下半身は身体の中でも
土台と言える部分でしょう。
下半身がしっかりすることで
歌う姿勢を保ちやすくなります。
発声のための筋トレ
発声のための筋トレですが、
かなり難しいです。
見ることもできなければ、
意識することも難しいためです。
その中でわかりやすいものを
このサイトで紹介していきます。
ぜひ楽しみにしていてください。
よく言われる話を、一度整理してみる
体づくりと歌の関係は、語る人によって言うことが変わる分野です。断定的な言い方が多く飛び交うぶん、受け取る側が混乱しやすいところでもあります。ここではよく耳にする言い方を並べ、どこまでが確かめられることで、どこからが個人差の話なのかを整理してみます。
| よく言われる言い方 | 整理して考えると |
|---|---|
| 「腹筋を鍛えれば声量が上がる」 | 声の大きさは息の使い方や響かせ方など複数の要素が関わるとされます。特定の部位を鍛えたことだけで声量が決まる、という単純な対応関係では説明しにくい話です |
| 「筋トレをすると声が硬くなる」 | 力の入れ方の癖が歌に持ち込まれれば影響しうる、という言い方が実態に近いでしょう。運動そのものが原因だと決めつけると、確認すべき点を見落とします |
| 「歌にはとにかく体力が要る」 | 長時間の収録やライブなど、場面によっては体力が関係しやすいのは想像がつきます。ただし体力があれば歌が良くなるという順番ではありません |
| 「体づくりは歌には関係ない」 | 姿勢の保ちやすさなど、間接的に関わりうる部分はあります。完全に無関係と切り捨てるのも、また別の極端です |
結局のところ、体づくりは歌の練習の代わりにはならないが、歌う条件を整える側には関わりうる、という位置づけで考えるのが無理のないところです。どちらか一方を「必須」「不要」と断じる情報を見かけたら、その根拠がどこにあるのかを確認してから取り入れてください。
歌の話で名前が挙がる、お腹まわりの筋肉を整理する
歌と筋トレの話では、「体幹」「腹直筋」「腹斜筋」「横隔膜」といった名前がよく出てきます。ただ、名前だけが先に広まり、どこにあってどう働くとされる筋肉なのかが曖昧なまま「鍛えるべき」と語られることも少なくありません。まずは場所と、歌の話でどう語られているかを分けて整理してみます。
| 筋肉 | 場所 | 歌の話でよく語られること |
|---|---|---|
| 横隔膜 | 胸とお腹の境目 | 息を吸う動きの中心として語られる |
| 腹直筋 | お腹の前側を縦に走る | 「腹筋を鍛えると声量が上がる」という話で挙がる |
| 外腹斜筋・内腹斜筋 | お腹の側面(わき腹) | 息を吐く量の調整や、体幹の安定の話で挙がる |
| 腹横筋 | わき腹のさらに奥 | 「インナーマッスル」として挙がる |
大学の解剖学の講義資料では、横隔膜は呼吸にかかわる筋肉のなかで最も重要なものとされ、お腹の筋肉はまとめて、腹圧を高める、胸郭を引き下げて呼吸を助ける、体を曲げたりひねったりする、といった働きを持つと説明されています。つまり、お腹の筋肉は息を吐く側や体を支える側にかかわるとされる一方で、それを鍛えたことが歌の上達にどうつながるかは、筋肉の名前だけでは決まりません。息の支えとの関係は「息の支え」「声の支え」とは結局何なのかで扱っています。
筋トレ中に息を止めて踏ん張る癖に気をつける
プランクのように姿勢をキープする種目や、回数とセット数を決めて行う種目では、きつくなるほど息を止めて踏ん張りがちです。息を止めて踏ん張るときは、喉の奥で息をせき止めている状態になりやすいと言われます。この癖が身につくと、歌の中で苦しくなった場面でも同じように喉まわりを固めてしまう、と指摘されることがあります。歌のための体づくりとして取り入れるなら、次の点を目安にしてください。
| 種目の例 | 起きやすいこと | 歌のために意識したいこと |
|---|---|---|
| プランク(キープ系) | キープ中に息を止める | 細く長く息を吐き続けられる時間で切り上げる |
| 上体起こし系 | 起き上がるたびに首や顎に力が入る | 首で反動をつけず、顎を固めない |
| スクワット | 立ち上がる瞬間に息を止める | 動きに合わせて、吐く・吸うのタイミングを決めておく |
フォームが崩れるほど回数を増やすのは禁物です。回数やキープ時間の長さより、呼吸を止めずに同じフォームで続けられるかを基準にすると、力みの癖を歌に持ち込みにくくなります。声帯を閉じる側の筋肉については閉鎖筋の解説、息を吐きながら声にする基本は正しい腹式呼吸を身につけようも参考にしてください。
時間の配分をどう考えるか
練習に使える時間は限られています。その限られた枠の中で体づくりの時間を増やすと、当然ながら歌う時間は減ります。ここを意識せずに両方やろうとすると、体づくりのほうが「やった感」を得やすいぶん、いつのまにか歌の時間が削られている、ということが起こりがちです。
優先順位の考え方
- 歌そのものの練習を先に確保する。歌が上手くなるための時間は、歌う時間です。ここを削って別のことをしても、埋め合わせにはなりません。
- 体づくりは残った枠の中に置く。「歌の練習の一部」ではなく「歌う条件を整える別枠」として扱うと、判断がぶれにくくなります。
- 直前に激しく動かない。息が上がった状態では、歌の練習として成立しにくくなります。歌う予定がある日は、順番と間隔を考えて組んでください。
この配分をその場の気分で決めていると崩れやすいので、練習計画の中に最初から書き込んでおくのが確実です。計画の立て方そのものはワンランク上の歌を歌うための作戦の立て方で扱っているので、そちらで枠を作ってから配分を決めると整理しやすくなります。
体づくりが歌に効いているかを自分で確かめる
他人の体験談は参考にはなりますが、自分に当てはまるかどうかは自分で確かめるしかありません。ここでも役に立つのは録音です。感覚は日によって変わるので、感覚だけを頼りに判断すると、効いたのか効いていないのかがわからなくなります。
- 同じ曲の同じ一フレーズを、基準として録っておきます。歌う条件(部屋、マイク、時間帯)はできるだけ揃えます。
- 期間を決めて、確かめたい取り組みを続けます。
- 期間の終わりに、同じフレーズを同じ条件で録ります。
- 二つを並べて聴きます。判断するのは「良くなった気がするか」ではなく、「どこが、どう違って聞こえるか」です。
比べるときに見るところ
- フレーズの終わりまで、音の輪郭が保てているか
- 二回目、三回目のテイクでの落ち方が小さくなっているか
- 歌い終わったあとの息の乱れ方に違いがあるか
- 姿勢が崩れていないか(可能なら動画でも残しておくと確認しやすいです)
変える要素は一度に一つにしてください。体づくりの内容を変えると同時に発声の練習も変えてしまうと、どちらが効いたのかがわからなくなり、結局また人の意見を探すことになります。
やりがちな進め方と、その見直し
相談を受けやすいパターンをいくつか挙げておきます。当てはまるものがあれば、進め方のほうを先に見直してみてください。
体づくりが歌わない口実になっている
準備を整えることに熱心になり、肝心の歌う時間が後ろにずれていく、というパターンです。準備は進んでいる感覚があるので気づきにくいのですが、録音を残していれば歌のほうが動いていないことはすぐわかります。歌の記録を残しておくと、この種のずれに自分で気づけます。
目的を決めずに始めている
「歌に良さそうだから」だけで始めると、何が起きたら成功なのかがないため、続けるかどうかの判断ができません。「長い曲の後半で声の輪郭が保てるようにしたい」のように、歌の側の困りごとから出発すると、確かめる方法まで自然に決まります。
他人の体験談をそのまま自分に当てはめている
同じ取り組みでも、もともとの体格や生活、歌っている曲の傾向が違えば、出てくる変化も違います。うまくいった人の話は「試す候補」であって、「自分にも起こる結果」ではありません。試したうえで、自分の録音で判断してください。
なお、聴き手が受け取る印象には、歌そのもの以外の要素も混ざります。姿勢や佇まいが聞こえ方に影響するのではないか、という話に興味がある方は歌が上手いと感じるポイントは歌の上手さではない!?も併せて読んでみてください。歌い手としての全体の進め方を確認したい場合は歌い手の始め方ロードマップで工程を見渡せます。
























