



人には誰しもが「心地良い」と感じるゆらぎが存在しており、
良い声と言われる人はそのゆらぎが多い人ということになります。
これを「1/fゆらぎ」と表現しますが、
自分の声が1/fゆらぎが多いのかどうか知ることは難しいです。
しかし、あるフリーソフトを使えば、
無料で簡単に自分の声の1/fゆらぎを調べることができます。
そこで今回は、1/fゆらぎの効果と無料ソフトをご紹介いたします。
f/1(f分の1)ゆらぎとは?
まず、ゆらぎについて説明します。
簡単に言うと、ゆらぎとは不規則な動きのことです。
世の中には規則的なものと不規則的なものがあります。
あまりにも不規則的なものが多すぎると不安を感じますが、
心地よいものもあります。
例えば、ろうそくの炎や雨音、波音なども
心地よいゆらぎを持っています。
いずれも一定のようで、不規則的なゆらぎを持っており、
ピンクノイズと呼ばれることもあります。
このピンクノイズは1/fゆらぎを持っており、
人間の生体リズムと共鳴するので、心地良さを感じるのです。
例えば、癒やし効果のあるヒーリングミュージックには
この1/fゆらぎが使われています。
物理学的に説明すると、下記のようになります。
1/fゆらぎとは、パワー(スペクトル密度)が周波数fに反比例するゆらぎのこと。ただしfは0より大きい、有限な範囲をとるものとする。
(出典:Wikipedia)
歌手をはじめ声優やナレーターなど声を仕事に活かす職業の方は、
この1/fゆらぎを意識しており、多くのファンを声で魅了しています。
しかし、1/fゆらぎは意図的に出すことがとても難しく、
生まれ持った要素も大きく関係します。
人間の声はもともと1/fゆらぎが存在しており、程度が違うだけで
あなたも1/fゆらぎが出せているということになります。
この「程度」が個性になるので、
自分がどの程度の1/fゆらぎを持つのか把握して、
個性を追求することで魅力的な声を磨くことができます。
1/fゆらぎを調べてみよう
Windows用フリーソフト「音のゆらぎ解析君」は、
1/fゆらぎを簡単に解析することができる無料ソフトです。
http://www.asahi-net.or.jp/~hb9t-ktd/music/Japan/Soft/Yuragi.html
音のゆらぎ解析君をダウンロードして、ソフトウェアを起動させ、
解析したい歌声をパソコンからソフトへ読み込ませて
「解析」ボタンを押すだけで解析することができます。
自分の声を録音したデータを読み込ませれば、
簡単に自分がどの程度の1/fゆらぎなのか確認することができます。
1/fゆらぎの声を持つ有名な歌手
宇多田ヒカル
美空ひばり
MISIA
徳永英明
MsOOJA
1/fゆらぎは「足す」ものではなく「消さない」もの
1/fゆらぎという言葉を知ると、つい「自分の声に足せないか」と考えたくなります。ただ、歌の実務としては、意図的に作り出すより、もともと声に含まれている自然な揺れを消してしまわないことのほうが現実的です。
そもそも1/fゆらぎと心地よさの関係については諸説あり、どこまでが計測できる話で、どこからが聴き手の印象の話なのかは、はっきり線を引けない部分が残ります。歌の解説で語られる内容も、一般に言われている範囲を超えないよう受け止めておくのが安全です。「この揺れがあれば良い声になる」といった単純な話ではない、という前提を持っておくと、練習の方向を見誤りにくくなります。
| 考え方 | やろうとすること | 起きやすいこと |
|---|---|---|
| 足そうとする | わざと声を揺らす、不規則に震わせる | 不安定に聞こえ、音程が定まらない印象になりやすい |
| 消さないようにする | 自然に出ている揺れを、力みや処理で潰さない | もともとの声の個性が残りやすい |
「ゆらぎ」として耳に届く4つの成分
歌声の揺れとひとことで言っても、揺れている対象は一つではありません。分解して考えると、自分の歌のどこを触ればいいのかが見えてきます。
| 揺れている対象 | 聴こえ方 | 歌の中で現れる場所 |
|---|---|---|
| 音の高さ | ビブラートや、伸ばした音のわずかな上下 | ロングトーン、フレーズの終わり |
| 音量 | 膨らんだり引いたりする強弱 | フレーズの立ち上がりと収め方 |
| 音色 | 息の混ざり方や明るさが途中で変わる | 同じ音を伸ばしている最中 |
| タイミング | 拍にぴったりではない、わずかな前後 | 歌い出し、言葉の詰め方 |
4つに分けてみると、ふだん「揺らぎ」として語られているものの多くが、実は音の高さ以外の要素だったと気づくことがあります。たとえば「同じ音を伸ばしているのに退屈しない歌」は、高さが動いているというより、音量と音色が少しずつ変わり続けていることが多いものです。この視点を持つだけでも、聴き方が具体的になります。
この4つのうち、意識して扱いやすいのは音量と音色です。音の高さの揺れは技術として練習する対象になりますし、タイミングは録音した後に整えすぎると失われやすい部分です。伸ばす音の中で何が起きているかを確認したいときはロングトーンを綺麗に響かせる練習法とコツが入口になります。
自分の歌声で意識できること
「1/fゆらぎを増やす練習」というものがあるわけではありません。できるのは、自然な揺れが出る余地を作っておくことです。具体的には次のような点になります。
- 伸ばす音を、最初から最後まで同じ強さで押し切らない。膨らませてから収める、収めてから膨らませる、といった形を試し、録音して聴き比べます
- 語尾を機械的に切らない。切るのか、余韻を残すのかを言葉ごとに決めると、フレーズの表情が変わります
- 力みを抜く。喉や肩に力が入っていると、声が一本調子になりやすいと言われます。楽に出せるキーで歌うだけでも変わることがあります
- 変えるのは一度に一つ。音量だけ、語尾だけ、と絞って録り比べないと、何が効いたのか分かりません
力みが取れない、または一本調子から抜けられないという場合、原因が声の使い方そのものにあることもあります。声帯閉鎖の感覚・鍛えるためのトレーニングや、楽に歌える高さを探す自分に合うキーの見つけ方もあわせて確認してみてください。
「ゆらぎ」と「不安定」を切り分ける
ここが実務でいちばん重要なところです。魅力として受け取られる揺れと、単に安定していない状態は、聴き手にとってまったく別のものとして届きます。録音を聴き返すときの判断材料を整理しました。
| 症状 | たぶんこちら | 次にやること |
|---|---|---|
| 伸ばした音が、狙った高さの周りで規則的に動く | 表現としての揺れ | そのまま。深さと速さを曲に合わせて調整する |
| 音の出だしが毎回ずれて、目標の音に届くまで時間がかかる | 不安定 | 音の頭を狙って当てる練習に切り替える |
| 伸ばしている途中で高さがだんだん下がっていく | 不安定 | 息の配分を見直し、短いロングトーンから安定させる |
| フレーズごとに音量が大きく変わり、聴き取れない箇所がある | 不安定 | 一番小さい部分を基準に、全体の音量設計を見直す |
| 同じ場所で毎回、同じように揺れる | 表現としての揺れ | 意図した場所かどうかを確認し、不要なら減らす |
見分け方の軸はひとつで、再現できるかどうかです。同じ場所で同じように起こせるなら、それはコントロールできている揺れです。毎回違う場所で違う形で起きるなら、まだ表現として扱える段階ではありません。
MIXで「ゆらぎ」を消してしまわないために
録音した歌をMIXする段階で、自然な揺れが失われてしまうことがあります。特に自動処理を強くかけると、声の個性として残しておきたい部分まで平らになりがちです。
ピッチ補正のかけすぎ
音程を整える処理を強くかけると、伸ばした音の中の細かな上下まで直されてしまうことがあります。外れている場所だけを狙って直し、全体には浅くかける、といった使い分けが一般的です。
音量をそろえすぎる
音量差を圧縮する処理も、強くかけると強弱の表情が消えます。聴きやすさと表情は、ある程度トレードオフの関係にあると考えて、曲に合う落としどころを探すことになります。
どの処理が何をしているのかを押さえたい方は歌ってみたMIXのやり方・手順完全版を、自動処理をどこまで任せるかを検討したい方はAIでMIXはどこまでできる?歌ってみたのAI活用入門を参考にしてみてください。処理の強さを決めるときは、かけた後の音だけを聴かず、かける前と切り替えて比べるのが確実です。
「揺れを残す」と「粗さを残す」は違う
ここで気をつけたいのが、直すべき問題まで個性として残してしまうことです。明らかに外れている音程や、耳につくノイズは、残しても味にはなりません。判断の順番としては、まず問題を取り除き、その後で「どこまで整えるか」を決めると迷いにくくなります。
そして最終的な判断は、数値でも解析結果でもなく、通しで聴いたときの印象で決めることになります。1/fゆらぎという言葉は、自分の歌のどこを聴けばいいかを考えるきっかけとして使うのがちょうどよく、それ以上の意味を求めすぎないほうが、実際の歌づくりは前に進みやすいはずです。
「1/fゆらぎの声」という言葉が指す範囲
物理現象としての1/fゆらぎは、パワースペクトル密度が周波数fに反比例するゆらぎを指します(出典:Wikipedia「1/fゆらぎ」)。これは信号の性質についての定義であって、「この声は1/fゆらぎである」と判定するための公的な基準が決まっているわけではありません。解析ソフトで得られる傾きも、録音環境や切り出す区間で変わります。
実際の使われ方を見ると、この言葉は歌手だけでなく、声優やナレーター、話し声が落ち着いて聞こえる人にも広く当てはめられています。つまり現状では、「聴いていて心地よく感じた声」をまとめて呼ぶ愛称に近いという前提で読むのが安全です。
出回っている数字や効果の説明とは距離を取る
この話題を検索すると、「1/fゆらぎの声を持つ人は1万人に1人」といった数字や、健康面への効果を断定する説明が出てきます。前者は出どころがはっきりしないまま広まった数字で、母集団も測定方法も示されていないことがほとんどです。後者についても、声を聴くことで体調が良くなるといった断定は書けません。歌の練習という文脈では、「そう感じる人が多いと言われている」という程度に受け止めておけば十分です。
練習で扱えるのは、効果ではなく「どう聞こえるか」です。心地よさを狙うのではなく、不自然に聞こえる要素を減らす、という順番で考えるほうが手が動きます。
自然の音にも同じ性質があると言われている
1/fゆらぎの例としてよく挙げられるのは、波の音、雨音、小川のせせらぎ、焚き火の炎の揺れ、そよ風、木目の模様などです。これらに共通するのは、完全に規則的でもなく、完全にでたらめでもないという点です。周期がぴったり揃っていると機械的に聞こえ、まったく揃っていないと不安定に聞こえます。歌声で意識するときも、この「間」の感覚が目安になります。
歌の技術に置き換えると何にあたるか
抽象的なまま終わらせず、自分が普段練習している技術と結びつけておくと扱いやすくなります。おおまかには次のように対応します。
| ゆらぎの成分 | 歌の中での現れ方 |
|---|---|
| 音の高さ | ビブラート、しゃくり、フォール |
| 音の大きさ | ロングトーンの中での強弱、語尾の減衰 |
| 音色 | 息の混ざり方、母音ごとの響きの差 |
| タイミング | 入りの前後、こぶしのような細かい動き |
とくにビブラートは種類によって印象が変わります。細かく速い揺れは緊張して聞こえやすく、ゆったりした揺れは落ち着いて聞こえやすい、という差です。違いはちりめんビブラートとは何か・ビブラートの4種類と3種類のビブラートの使い分けと出し方で整理しています。まっすぐ伸ばせない状態のまま揺らすと不安定に聞こえるので、先にロングトーンの揺れを止めてまっすぐ伸ばすコツで土台を作るほうが早道です。
解析ツールは一つに絞らない
記事の前半で紹介した「音のゆらぎ解析君」のほかにも、音声を周波数成分に分けて見られるソフトはいくつかあります。無料の音声編集ソフトであるAudacityにはスペクトル表示機能があり、WaveSpectraのようなスペクトラムアナライザーも古くから使われています。
ただし、どのツールを使っても「合格・不合格」が出るわけではありません。伴奏やリバーブが混ざった音源を入れれば結果はそちらに引っ張られますし、同じ人の声でも日によって数値は動きます。使い方としては、判定に使うのではなく、自分の歌を二種類(揺らした版・まっすぐ伸ばした版)録って見比べ、狙った違いが波形や周波数表示に出ているかを確認するという使い方が現実的です。
まとめ
1/fゆらぎは誰しもが持っていますが、
その程度は個人差があります。
1/fゆらぎが多い声の人は、「心地良い声」と思われて、
ファンを獲得しやすくなります。
今回ご紹介した「音のゆらぎ解析君」を使用すれば、
簡単に自分の声の1/fゆらぎを解析することができるので、
ぜひ試してみてください。























