「歌ってみたを録ってみたけど、なんだか声がスカスカで頼りない」「サビで伸ばすと声がかすれて、風が抜けるみたいな音になっちゃう」——マイクに向かうたび、頭の中で鳴っている理想の声と、実際に出てくる声のギャップに落ち込む。そんなモヤモヤを抱えている人は、とても多いです。
でも安心してください。息もれ・かすれ声は、あなたの声が弱いわけでも、才能がないわけでもありません。多くの場合それは「声の出し方のクセ」で、練習でだんだん変えていける部分です。この記事では、なぜ声に息が混じってスカスカになるのかをやさしく解きほぐしたうえで、芯のある声に近づくためのコツを順番に紹介します。特別な機材やお金はほとんど必要ありません。スマホと少しの時間、そして「続けてみようかな」という気持ちがあれば大丈夫。顔出しなし・家でこっそりできる練習ばかりなので、気軽に読み進めてみてください。
※この記事は発声のコツをまとめたもので、医療的なアドバイスではありません。かすれや痛みが長く続く・急に声が出なくなったなどの場合は、無理をせず耳鼻咽喉科など専門の医療機関に相談してくださいね。
そもそも「息もれ・かすれ声」はなぜ起きる?
声は、のどの奥にある「声帯(せいたい)」という2枚のヒダが左右からピタッと合わさり、そこを空気が通るときの振動で生まれます。太鼓の皮がほどよく張っているから音が鳴るのと少し似ていて、声帯もしっかり閉じて振動できていると、まっすぐで芯のある響きになります。
ところが声帯の閉じ方が弱いと、閉じきらない隙間から空気が「スー」と漏れてしまいます。この使われずに逃げていく息こそが、あの独特のスカスカ感・かすれの正体になりやすいんです。ホースの先を軽くつまむと水が勢いよく飛ぶのと同じで、「弁」がゆるいと空気が広がって弱々しくなってしまう、というイメージですね。もう少し仕組みを知りたい人は、声帯閉鎖の解説もあわせて読むと、このあとの練習がグッと腑に落ちやすくなります。
息もれ声になりやすい主な原因
| 原因 | どういう状態? | 起こりやすい人 |
|---|---|---|
| 声帯の閉じが弱い | 2枚のヒダが合わさりきらず空気が漏れる | ふだんから声が小さい・地声が弱い人 |
| 息を使いすぎている | 「大きい声=たくさん息」と強く吐きすぎている | 「大きく歌おう」と力んでしまう人 |
| 喉に力が入りすぎ | 首やあごが固まり声帯がうまく働かない | 緊張しやすい・高音で頑張りすぎる人 |
| 喉の乾燥・疲れ | うるおい不足で声帯が振動しにくい | 寝不足・水分不足・歌いすぎの人 |
どれもクセや状態の問題なので、逆に言えば「新しいクセ」を上書きしていけば、芯のある声に近づいていけるということ。焦らずいきましょう。
「息もれ」と「あえての息づかい」は別物、という前提
ひとつ大事な話を。息が混じった声は、いつでも悪者というわけではありません。バラードのAメロで、あえて息をたっぷり混ぜて切なさを出す——プロもよく使う立派な表現テクニックです。
問題なのは「芯のある声を出したいのに、出せない」状態のほう。つまり本当のゴールは、息を完全に消すことではなく、息もれ声と芯のある声を、自分で選べるようになることです。スイッチを両方持っておいて、曲の場面ごとに切り替えられたら最強ですよね。その第一歩として、まずは「閉じる感覚」をつかんでいきましょう。
芯のある声のカギは「声帯閉鎖」の感覚
息もれを減らす一番のポイントが、声を出すときに声帯をきちんと閉じて空気のムダ漏れを減らす、という感覚です。むずかしそうな言葉ですが、やっていること自体はシンプル。この感覚がつかめてくると、こんな変化を感じやすくなります。
- 同じ息の量でも声が前に飛ぶようになる
- 声がまっすぐ伸びて、途中でかすれにくくなる
- 少ない息で歌えるので、フレーズの途中で息切れしにくくなる
- 高音でも喉だけに頼らず出しやすくなる
とはいえ「閉じろと言われても感覚がわからない」というのが正直なところ。そこで役立つのが、このあと紹介するエッジボイスと、土台を整える練習メニューです。
息もれを減らす練習メニュー【順番が大事】
いきなり本気で声帯を閉じようとすると、喉を締めて逆効果になりがちです。負担の軽い順に並べたので、上から取り組んでみてください。全部で15分ほど、続けるのが苦手な人は1日5分ずつでも十分です。
| ステップ | 練習 | ねらい | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 腹式呼吸 | 息を安定させる | 2〜3分 |
| 2 | リップロール/ハミング | 喉の力みを抜き響きを前に集める | 3〜5分 |
| 3 | エッジボイス | 声帯を閉じる感覚をつかむ | 1〜2分 |
| 4 | ロングトーン | 芯を保ったまま伸ばす | 3〜5分 |
ステップ1:腹式呼吸で「息の安定」をつくる
息もれの一因は、息を一気に吐きすぎていること。まずは腹式呼吸で、細く長く息を送り続ける感覚を身につけましょう。お腹に手を当てて、吸うときにふくらみ、吐くときにへこむのを確認します。「たくさん吐く」より「必要な分だけ、まっすぐ当てる」。この意識だけでも、声のまとまりは変わってきます。
ステップ2:リップロールとハミングで喉をゆるめる
喉が力んでいると声帯はうまく閉じません。唇を「ブルルル」と震わせるリップロールで、喉とくちびるの余計な力を抜いておきましょう。音程をつけず、一定の息で震わせるだけでOKです。
続いて口を閉じて「ンーーー」と鼻に響かせるハミングへ。鼻の奥や口の前あたりがムズムズ・ビリビリ震える感じを探してみてください。その「響きが前に集まる感覚」が、芯のある声のベースになります。響きを感じられたら、位置をキープしたまま口を開けて「マー」に変えてみると、息の抜けにくいまとまった声に近づきやすくなります。
ステップ3:エッジボイスで「閉じる感覚」をつかむ
ここが今回の山場です。エッジボイスは、「あ゛ー」と低く、ドアがきしむような「ブツブツ」した音を出す発声のこと。ホラー映画の低い声や、朝いちばんの寝起きの声をイメージすると近いかもしれません。この音が出ているとき、声帯はしっかり閉じてゆっくり振動しています。だから、閉じる感覚をつかむ入り口として最適なんです。
- リラックスして、ため息をつくように「あー」と低く声を出す
- その声をどんどん低く、弱くしていく
- 「あ゛…あ゛…」とブツブツ途切れる音になったら、それがエッジボイス
- そのブツブツを、細く長くキープしてみる
出せるようになったら、エッジの状態から少しずつ息を足して、普通の「あー」につなげてみましょう。閉じたまま母音を伸ばせるようになると、芯のある声に近づきやすくなります。最初は変な音でも大丈夫。1回10〜20秒を1日数回でOKです。力任せに鳴らすものではなく「軽く・そっと」がコツ。喉に痛みを感じたら、すぐ休みましょう。
ステップ4:ロングトーンで「まっすぐ伸ばす」
閉じる感覚がつかめてきたら、いよいよそれを歌で使える形にしていきます。ここで効くのが、一つの音をまっすぐ長く伸ばすロングトーンです。ハミングでつかんだ「前に集まる響き」と、エッジで覚えた「閉じる感覚」を意識しながら、「アーーー」を一定の太さでキープしてみましょう。
ポイントは、伸ばしている最中に声がだんだん息っぽく崩れていかないこと。最初は5秒でも構いません。息を強く吐きすぎず、少ない息で長く鳴らすつもりでいると、スカスカ感が減っていきやすいです。スマホの録音アプリで自分の声を録って聴き返すと、どこでかすれ始めるかがよく分かりますよ。
この15分メニューは、毎日できれば理想ですが、続けるのが苦手な人は歌う前のウォームアップの流れに組み込んでしまうのがおすすめ。冷えた状態でいきなり負荷をかけないことは、喉を守るコツでもあります。
やりがちなNGと、意識したいポイント
頑張っているのに息もれが減らない…というときは、次のような「力の入れどころのズレ」が起きていることが多いです。
- 大声=芯のある声だと思っている:声量と芯は別物。まず閉じる感覚が先で、声を張り上げるのはそのあとです。
- 息をたくさん吐けば声が出ると思っている:むしろ逆。息が多いほど漏れやすくなります。「少ない息で鳴らす」意識に。
- 喉を締めて閉じようとする:声帯を閉じるのと喉を締めるのは違います。芯の強さは「力」ではなく「閉じと響きの効率」で作るもの。締めるとかすれや疲れの原因になります。
- 毎日ムリに長時間やる:声帯も筋肉のようなもの。疲れたら休むことも練習のうちです。
芯のある声が出せるようになると、声量を上げることや、喉に頼りすぎない高音の出し方にも応用が効きます。まずは「息のムダ漏れを減らす」土台づくりだと思って取り組んでみてください。
喉のコンディションも「かすれ」に直結する
発声のクセだけでなく、喉そのものの状態もかすれ声に大きく関わります。うるおいが足りず乾いた声帯は振動しにくく、息もれ・かすれが出やすくなります。長く歌い続けるために、喉はあなたの一番の相棒。大切に付き合っていきましょう。
- こまめに常温の水を飲み、喉をうるおす
- 寝不足・大声の出しすぎのあとは声を休める
- 長時間ぶっ通しでやらず、短い時間をこまめに
日々のケアについては喉ケアのまとめが参考になります。ライブや長時間の練習で声を酷使しがちな人は、声枯れの予防もあわせてチェックしておくと安心です。技術とコンディション、その両輪がそろうと、きれいな声の出し方にぐっと近づきやすくなります。
よくある質問
Q. どれくらい練習すれば息もれは減りますか?
A. 個人差が大きく、「◯日で必ず」と言えるものではありません。感覚をつかむまでに数週間、声として安定するまでにはもう少しかかることが多いです。ただ、閉じる感覚は一度つかむと再現しやすくなるので、短時間でも続けるのが結果的に近道です。録音して1〜2週間ごとに聴き比べると、小さな変化に気づきやすくなりますよ。
Q. エッジボイスがどうしても出せません。声帯が弱いんでしょうか?
A. いいえ、弱いからではなく、まだ「閉じる感覚」に慣れていないだけのことが多いです。力んで大きく出そうとするほど遠のきやすいので、寝起きのだるい「あ゛ー…」くらい弱く低く出すのがコツ。軽く・短くやる分には練習として使われますが、大きな音で鳴らし続けると喉に負担がかかりやすいので、「そっと・数十秒」を守り、痛みや違和感があればすぐ中止してください。
Q. 地声が弱くて息もれっぽいのですが、高音も同じ練習でいいですか?
A. 土台となる声帯閉鎖の感覚は共通なので、まずはこの記事の練習で問題ありません。閉じる感覚があるほうが高音もコントロールしやすくなります。そのうえで高音特有のコツを知りたくなったら、ミックスボイスの解説ものぞいてみてください。
Q. 話し声もかすれます。歌の練習で変わりますか?
A. 声帯の使い方は歌でも会話でも共通する部分が多いため、発声の土台が整うと話し声にも良い影響が出やすくなります。ただし、かすれが長く続く・痛みを伴う場合は発声のクセ以外の原因も考えられます。その場合は自己判断せず、医療機関に相談してくださいね。
まとめ
息もれ・かすれ声は、才能の問題ではなく「声帯の閉じ方のクセ」で説明できることが多く、練習で少しずつ変えていける部分です。今日のポイントを振り返っておきましょう。
- スカスカ感の正体は、閉じきらない声帯から抜ける「使われない息」であることが多い
- 息は「多く」より「少なく安定」。腹式呼吸で量をコントロールする
- リップロールとハミングで力みを抜き、響きを前に集める
- エッジボイスで「声帯を閉じる感覚」をつかみ、ロングトーンで閉じたまま伸ばす持久力を育てる
- 喉を締めて押し出さず、コンディションも大切にケアする
いきなり完璧を目指さなくて大丈夫です。まずは今夜、寝る前の数分でエッジボイスの「ブツブツ」を探すところから始めてみませんか。発声全体をもう一度基礎から見直したい人は、歌が上手くなる練習方法もあわせてどうぞ。小さな一歩の積み重ねが、あなたの「なりたい声」へまっすぐ届く近道になります。焦らず、楽しみながら一緒にコツコツいきましょう。



















