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「マイクプリアンプを買えば音が良くなるらしい」と聞いて、購入を検討している方は多いのではないでしょうか。歌ってみたの機材をそろえていくと、必ず一度は名前を目にするアイテムです。
先に結論をお伝えすると、オーディオインターフェースを持っているなら、ほとんどの人にマイクプリアンプは不要です。ただし、SM7Bのようなゲインの低いダイナミックマイクを使う場合など、明確に必要になるケースが2つあります。
この記事では、プリアンプが不要な理由と必要になる2つのケース、そして必要な人向けの選び方とおすすめ5選を解説します。
まずは結論の早見表からどうぞ。
| あなたの状況 | マイクプリアンプは? |
|---|---|
| コンデンサーマイク+オーディオインターフェース | 不要(内蔵プリで十分) |
| SM58などのダイナミックマイクで、音量は足りている | 基本的に不要 |
| SM7B・PodMicなど低出力のダイナミックマイク | 必要(インラインプリが定石) |
| ゲインつまみを8割以上に上げてもまだ足りない・ノイズが乗る | 検討の価値あり |
| 音の質感(カラー)を追求したい中上級者 | 単体ラック型を検討(優先度は低め) |
結論: 多くの宅録ユーザーにマイクプリアンプは不要
オーディオインターフェースにはプリアンプが内蔵されている
マイクプリアンプとは、マイクの微弱な信号を録音に使えるレベルまで増幅する機材のことです。実は、皆さんが使っているオーディオインターフェースには、このプリアンプが最初から内蔵されています。マイクをつないで歌声が録れているなら、すでにプリアンプを使っているということです。
2026年のインターフェース内蔵プリは1万円台でも実用十分
ひと昔前は「内蔵プリは音が悪いから単体プリを足そう」と言われることもありました。しかし2026年現在、AG03MK2やScarlett 4th Gen、MOTU M2といった定番機はもちろん、1万円台のインターフェースでもゲイン量・ノイズ性能とも実用上十分な水準になっています。まだインターフェースを持っていない方は、プリアンプより先にオーディオインターフェースの選び方を読んでみてください。
プリアンプより先に見直すべきこと
「録った声が細い・ノイズが気になる」という悩みは、機材を足す前に次の3つを見直すと改善しやすいです。
- マイクとの距離: コンデンサーで15〜20cm、ダイナミックで5〜10cmが目安
- 部屋の環境: 反響やエアコンの音は、プリアンプでは解決できません
- ゲイン設定: 適正な録音レベルになっているかを確認
マイクプリアンプが必要になる2つのケース
ケース1: SM7Bなどゲインの低いダイナミックマイクを使う
SHURE SM7BやRODE PodMicといった配信・宅録で人気のダイナミックマイクは、出力がとても小さいのが特徴です。インターフェースのゲインを最大近くまで上げる必要があり、そうすると「サー」というホワイトノイズが目立ちやすくなります。ここで+25〜28dBを稼げるインラインプリアンプを挟む方法がよく使われています。ダイナミックマイク自体の選び方はダイナミックマイクのおすすめで解説しています。
ケース2: 安価なインターフェースやミキサーでゲインが足りない
格安インターフェースや小型ミキサーでは、ゲインつまみを8割以上に上げて常用している方もいるはずです。この状態はノイズが増えやすいので、インラインプリで20dB台の余裕を作ると、つまみを下げてクリーンに録りやすくなります。
注意: コンデンサーマイクにインラインプリは使えない
FetHeadなどのインラインプリアンプはダイナミックマイク用で、コンデンサーマイクには使えません。インラインプリはファンタム電源(48V)を自分の動作に使うため、コンデンサーマイクに必要な電源が届かなくなるからです(FetHead Phantomなど一部の専用品を除く)。コンデンサーマイクを使っている方は、そもそも追加プリが不要なケースがほとんどです。マイク選びから見直したい方はコンデンサーマイクのおすすめもどうぞ。
インラインプリアンプ(マイクブースター)の選び方
ゲイン量は+25〜28dBが目安
主要製品のゲインは+25dB(Cloudlifter CL-1)、+27dB(FetHead)、+28dB(DM1 DYNAMITE)と大差ありません。SM7B対策ならどれを選んでも必要量は確保しやすいので、あとは形状と価格で選んで問題ありません。
接続方式: マイク直挿し型かケーブル中継型か
FetHeadやDM1はマイクのお尻に直接挿すタイプで、ケーブルを追加せずに使えます。一方Cloudlifter型は机やスタンド周りに置く中継タイプで、マイクケーブルがもう1本必要になります。ケーブルを買い足す場合はマイクケーブルの選び方を参考にしてください。
ファンタム電源(48V)が必要
インラインプリは電池ではなく、インターフェースのファンタム電源で動きます。「ダイナミックマイクなのに48VをON」という普段と逆の操作になるので覚えておきましょう(プリを挟んでいればマイク側には48Vは届かず、一般的な使い方では問題ないとされています)。
おすすめのマイクプリアンプ5選【2026年版】
ここでは「歌ってみた宅録での定番度」「ゲイン量」「価格」「入手性(2026年9月時点でAmazon.co.jpの在庫を確認済み)」を基準に5製品を選びました。
TRITON AUDIO FetHead — 迷ったらこれ。直挿しで省スペース
+27dBのゲインを稼げる定番インラインプリです。マイクに直接挿すだけでケーブルの追加が不要なので、初めての1本に選びやすい構成です。実売12,000円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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sE Electronics DM1 DYNAMITE — +28dBでゲイン量は5選中最大
今回紹介する中で最大の+28dBを稼げる直挿し型です。特性がフラットで、マイク本来の音を変えずに音量だけ底上げしたい方に向いています。実売11,500円前後(2026年9月時点・変動あり)。在庫が変動しやすいため、価格と在庫はリンク先で確認してください。
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Cloud Microphones Cloudlifter CL-1 — SM7Bの定番相棒
インラインプリの元祖として知られるモデルです。ゲインは+25dBと控えめですが、金属筐体で堅牢、海外の配信者・スタジオでの採用例が多い王道機です。中継型なのでマイクケーブルが1本追加で必要です。実売23,500円前後(2026年9月時点・変動あり)。
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Klark Teknik Mic Booster CM-1 — Cloudlifter型の対抗馬
Cloudlifterと同じ+25dBの中継型を、より手頃な価格で狙えるモデルです。実売12,300円前後(2026年9月時点・変動あり)で、中継型の使い勝手を安く試したい方の候補になります。
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audio-technica AT-MA2 — 「音量が足りない」への手頃な答え
電源アダプタ式の小型マイクアンプで、実売5,200円前後(2026年9月時点・変動あり)。プラグインパワーにも対応しており、「とにかく音量が足りない」を安く解決したい入門用です。音質向上を目的とした機材ではない点は理解した上で選びましょう。
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単体ラック型プリアンプはどんな人向け?
Focusrite ISA Oneのような数万円〜十数万円の単体プリアンプは、ゲイン不足の解決というより「音のカラー(質感)」を求める中上級者向けの機材です。歌ってみたの宅録では、マイク・部屋・MIXに投資した後に検討すれば十分で、優先度は低めと考えてよいでしょう。
プラグインやDAWの音量アップで代わりにならない?
「プリアンプの音はプラグインで再現できる」「録ったあとに音量を上げれば同じ」という話を目にすることがあります。どちらも一部は当たっていますが、プリアンプに何を求めるかで答えが変わります。
| 方法 | 働く場所 | できること | できないこと |
|---|---|---|---|
| インラインプリ・単体プリ | 録音する前のアナログ信号 | インターフェースに届く前に音量を足し、ゲインつまみに余裕を作る | 反響や空調音を消すこと |
| DAWでの音量アップ(ノーマライズなど) | 録音したあとのデジタルデータ | 小さく録れた音を聴きやすい大きさにする | 声だけを上げること(録音時に入ったノイズも同じ割合で大きくなる) |
| プリアンプを模したプラグイン | 録音したあとのデジタルデータ | 特定の機材を思わせる質感を後から加える | 録音時のゲイン不足を補うこと |
整理すると、ゲイン不足とノイズの悩みは録る前に解決するもの、音の質感は録った後でも試せるものです。SM7Bなどで「つまみを上げきってもまだ小さい」という状態は、プラグインでは解決しません。反対に「音色を変えてみたい」という目的なら、単体プリを検討する前に、無料のプラグインで方向性を試してみる方法もあります。歌ってみたMIXで使えるプラグインは無料プラグインのおすすめで、小さく録った音を後から上げたときの影響は録音レベル(ゲイン)の設定で解説しています。
インラインプリを買う前に、今の機材との組み合わせを確かめる
インラインプリは「マイクとインターフェースのあいだに挟む」機材なので、手持ちの機材との相性によっては使えないことがあります。購入前に次の4点を確認しておくと安心です。
| 今の構成 | 確認すること | 注意点 |
|---|---|---|
| USBマイクを使っている | マイクにXLR出力があるか | USB接続だけのマイクには挟む場所がないため使えません |
| 小型ミキサーや配信用機材につないでいる | その入力で48Vのファンタム電源を出せるか | ファンタム電源で動くタイプは、48Vを供給できない入力では動作しません |
| 2本のマイクを同時に使う | マイクの本数分が必要か | 多くの製品は1台で1チャンネル分です。複数チャンネルに対応した製品もあるため、仕様は公式サイトで確認してください |
| 48Vのスイッチが入力共通の機種 | もう一方の入力に何をつないでいるか | 1つのスイッチで複数の入力に48Vがかかる機種があります。反対側の入力の機材が48Vに対応しているか、取扱説明書で確かめてください |
USBマイクの特徴や、XLR接続のマイクとの違いはUSBマイクのおすすめで扱っています。
単体プリのカタログで見かける「回路」の言葉
単体ラック型を調べ始めると、製品説明に回路の種類を表す言葉が多く出てきます。下の表は、よく見かける説明を目安としてまとめたものです。
| 言葉 | 意味 | 説明されやすい傾向 |
|---|---|---|
| 真空管(チューブ) | 増幅に真空管を使う回路 | 「暖かい」「太い」と形容されることが多い |
| トランス | 入力や出力にトランス(変圧器)を使う設計 | 倍音が加わり、質感が出ると説明されることが多い |
| トランスレス | トランスを使わない設計 | 色付けが少なく、素直な方向と説明されることが多い |
| ディスクリート | トランジスタなどの部品を個別に組んだ回路 | 設計上のこだわりとして挙げられることが多い |
| IC(オペアンプ) | 増幅部分に集積回路を使う回路 | 多くの機材で使われている一般的な方式 |
こうした言葉は主に単体ラック型の説明で使われるもので、この記事で紹介したインラインプリは音量を足すことが主な役割です。質感の違いで選ぶ段階に進んだら、単体マイクプリアンプの比較記事で「色付け系」と「クリーン系」の考え方を確認してみてください。
仕様表の「インピーダンス」はどう読む?
マイクやプリアンプの仕様表を見比べていると、ゲイン(dB)と並んで「インピーダンス(Ω)」という項目が出てきます。インピーダンスは電気の流れにくさを表す数字で、マイク側には出力インピーダンス、プリアンプやオーディオインターフェース側には入力インピーダンスが書かれています。インラインプリや単体プリを調べるときに出てくる項目を、下の表に目安としてまとめました。
| 項目 | どこに書いてあるか | 読み方の目安 |
|---|---|---|
| マイクの出力インピーダンス | マイクの仕様表(「定格インピーダンス」と書かれることもあります) | XLRでつなぐマイクは、低い値の「ローインピーダンス」のものが多いです |
| マイク入力の入力インピーダンス | プリアンプやインターフェースの仕様表の「マイク入力」「Mic Input」の欄 | つなぐマイクの出力インピーダンスより、十分に高い値になっているのが一般的です |
| 楽器入力(Hi-Z) | 「Hi-Z」「INST」と書かれた入力 | ギターなどをつなぐための、入力インピーダンスの高い端子です。マイクはこちらではなくマイク入力につなぎます |
| インピーダンスの切り替え | 一部の単体ラック型プリアンプ | たとえばFocusrite ISA Oneは、4種類のマイク入力インピーダンスから選べると公式サイトで説明されています(2026年10月時点) |
音響機器では、送る側(マイク)のインピーダンスを低く、受ける側(プリアンプ)を高くする「ロー出し・ハイ受け」という組み合わせが一般的です。市販のマイクとインターフェースを普通につないでいれば、この関係はほぼ保たれているので、宅録で数字を細かく合わせる必要はまずありません。単体プリの切り替えスイッチは、同じマイクとの組み合わせ方を変えて質感の違いを試すための機能で、ゲイン不足を補うものとは目的が違います。質感で選ぶ段階の考え方は単体マイクプリアンプの比較記事で扱っています。
「ブースト」「ブースター」と書かれていても役割は同じ
インラインプリは製品によって「マイクブースター」などと呼ばれ、説明文でも「ゲインをブーストする」という言い方がよく使われます。呼び名が違っても、マイクとインターフェースのあいだで音量を足すという役割は同じです。見比べるときは名前よりも、ゲイン量(dB)・電源の取り方(48Vか電源アダプタか)・接続方式の3点を仕様表で確かめてください。
なお、ヘッドホンの仕様表にもインピーダンスの項目がありますが、こちらはヘッドホンをつなぐ出力側の話で、マイクプリアンプの要否とは別に考えます。ヘッドホンの音が小さいときの目安はヘッドホンのインピーダンスとはを、内蔵プリの性能から機材を選び直したい場合はオーディオインターフェースの選び方を参考にしてください。
よくある質問
FetHeadとCloudlifter、どっちがいい?
ゲイン量はFetHeadが+27dB、Cloudlifterが+25dBとわずかにFetHead有利で、価格も約半分です。省スペースかつケーブル追加不要な点でも、初めての1本にはFetHeadを選びやすいです。Cloudlifterは堅牢さと実績を重視する方向きです。
SM7dB(プリ内蔵版SM7B)を買えばプリアンプは不要?
SHUREからプリアンプ内蔵版のSM7dBが発売されており、これから買うなら「SM7B+インラインプリ」の代わりに最初からSM7dBを選ぶという判断もあります。すでにSM7Bを持っている方は、インラインプリを足すほうが安く済みます。
プリアンプを足せば音は良くなる?
インラインプリの主な目的は「ゲインの余裕を作ってノイズを減らすこと」で、音質が劇的に変わる機材ではありません。ノイズに悩んでいない方が導入しても、変化を感じにくいとされています。
ファンタム電源が必要なマイクの見分け方や、電源を入れる順番、つけっぱなしにしてよいかについては、ファンタム電源とはで詳しくまとめています。
まとめ: まずは今の機材でゲインが足りているかを確認しよう
マイクプリアンプは「全員に必要な機材」ではなく、SM7Bなど低出力マイクのゲイン不足を解決するための機材です。ゲインつまみに余裕があるなら買い足す必要はなく、足りていないならFetHeadなどのインラインプリが定石、という整理で判断してみてください。
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